2023年シーズン後にフリーエージェントとなる大谷翔平の契約額は600億円に届くか

Ryan Fagan

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大谷翔平は、今日のMLBのフリーエージェント時代において、最も期待され、魅力的で、熱望されるFA選手になるだろう。

2022-23年のFA市場も活況にあり、2024年も高騰が続く傾向が見えてくるなか、大谷のFA市場価値はどうなるのか? 本誌名物記者ライアン・フェイガン(Ryan Fagan)が分析する。

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MLB機構と選手会の間で締結された新たな包括的労使協定が発効してから最初のオフシーズンは、少なくとも今までのところは順調である。

労使間に少なくとも数シーズンの安定が保証されているせいか、このところ毎週のように巨額の複数年契約締結のニュースが飛び込んでくる。アーロン・ジャッジがニューヨーク・ヤンキースと3億6000万ドル(1ドル/133.66円レートで約481億円、以下同)の契約を結んだ。遊撃手のトレア・ターナー、ザンダー・ボガーツ、カルロス・コレアは、全員が最低でも11年以上の長期契約を勝ち取った。コレアに至っては身体(メディカル)検査の結果、サンフランシスコ・ジャイアンツとの契約が破談となったあとに再び大型契約交渉が報じられた(ニューヨーク・メッツとの今後の交渉経緯は見ものだ)。

しかし、野球界にはまだ大きな疑問が未回答のまま残っている。もしロサンゼルス・エンゼルスが現在から2023年シーズン終了までの間に大谷翔平との契約延長を締結できない場合、来オフシーズン(2024年期)にはフリーエージェントとなる大谷の契約はどうなるのか、である。

「率直に言って、大谷は野球の歴史で最もユニークなフリーエージェント選手です。つまり私たちは未知の領域に足を踏み入れているのです」― コロラド・ロッキーズで15年間GM職を務め、現在はMLBネットワークのアナリストであるダン・オダウド氏は電話インタビューでそう答えた。

まさにその通りである。野球界でフリーエージェント(以下FA)の時代が始まって以来、大谷ほど期待され、魅力的で、そして熱望される選手は他に類を見ないと言っても過言ではない。

2022年も驚異的な記録を残した大谷翔平の価値

大谷は2021年シーズンに二刀流選手として歴史的なパフォーマンスを発揮して、アメリカン・リーグ最優秀選手賞(MVP)を受賞した。2022年もやはり歴史的な活躍をしたアーロン・ジャッジの存在がなければ、大谷が連続受賞していたに違いない。実際のところ、大谷は2022年に前年度より少しだけだが成績を伸ばしているのだ。2022年のbWAR数値は9.6(野手として3.4、投手として6.2)であり、2021年のそれは9.0(野手として4.9、投手として4.1)だったのだから。サイヤング賞投票でもアメリカン・リーグ4位に入った。

まさに驚異的としか言いようがない。大谷の素晴らしさについて語り始めるとキリがない。ここではただひとつの疑問だけに集中しよう。2024年にFA選手となる大谷は一体どうなるのか。

まず、今年の7月で29歳になるスーパースターには巨額の契約が待っていることだけは間違いない。

「ふたつのポジションをひとつの契約で確保することになります。もし大谷が投手、打者、そして走者として故障したとしても、まだ優れた外野手になれると思います。大谷はただただユニークなのです。野球というスポーツのどのような意味合いにおいてもユニコーンなのです。大谷の契約については、これまでに存在したどの選手とも同じレベルで語るべきではありません」とオダウド氏は評した。

最初に投手としての大谷を見ていこう。

カルロス・ロドンは大谷より1歳半ほど年上だ。ふたりとも2020年に故障し、そして次の2年間に素晴らしい成績を残した。両者の2シーズンを合わせた成績は以下の通りだ。

ロドン:10.5 bWAR/11.1 fWAR、防御率2.67、FIP 2.42、9イニング平均奪三振 12.2、登板イニング 310回 2/3
大谷:10.3 bWAR/8.6 fWAR、防御率2.70、FIP 2.98、 9イニング平均奪三振 11.4 、登板イニング 296回 1/3

ほぼ似たような数字だ。ロドンの方がやや優っているが、さほどの大差はない。もし大谷が「ただの」先発投手だったとすれば、ロドンがヤンキースと結んだ6年総額1億6200万ドル(約216億円)と同等かそれ以上の契約に落ち着くだろう。ジャスティン・バーランダーとジェイコブ・デグロムも今オフシーズンに巨大契約を勝ち取ったが、バーランダーの年齢とデグロムの健康面から大谷との比較対象にはなりづらい。しかし、有力チームが奪三振率の高い先発投手をどう評価するかの参考にはなるだろう。

打者としての大谷はどうだろうか。大谷は指名打者なので、今年のオフシーズンで契約を勝ち取った遊撃手たちと比較することはできない。彼らは守備の要となるポジションを守り、そこでも優秀なのだから。ここでは大谷の打撃成績がどのようにランクされるかのみ見ていこう。

直近2シーズンの大谷は、本塁打数(80本)でメジャーリーグ全体2位、三塁打数(14本)で2位、長打率(.554)で7位、総塁打数(622)で7位、そしてOPS+(152)で8位である。さらに、盗塁数(37)でも18位なのである。どの分野においてもトップクラスだ。どのチームもこのような数字を残す打者をFA市場で欲しがるだろう。とくに守備シフトが禁止される来年からは、左打者はさらに貴重となる。

気になる契約総額はどうなるだろうか。

MLBの「ユニコーン」大谷、FA市場価値は600億円に到達?

ジャッジの3億6000万ドル(約480億円)はFA選手としては過去最大だ。マイク・トラウト(4億2650万ドル、約570億円)とムーキー・ベッツ(3億6500万ドル、約488億円)の契約はそれより大きいが、これらはオープンな市場ではなく、契約延長によるものだ。もし大谷が故障なしで健康状態を保ち、過去の数シーズンに近い成績を挙げれば、ジャッジを越えるだろう。

そうなると、契約総額はどこまで伸びるだろうか。3億7500万ドル(約500億円)か、ひょっとしたら4億ドル(約534億円)か。大谷がトラウトの4億2650万ドル(約570億円)を越えることも考えられる。現在のように契約金額が急騰していけば、一体どこが天井になるのだろうか。4億5000万ドル(約600億円)か、それ以上か。

そう述べるには理由がある。大谷はただフィールド上のユニコーンであるだけではない。野球界で最も市場価値が高いスーパースターなのだ。真に世界的なレベルで、ほかの選手とは比較にならない。しかも、大谷はまだ(米球界に)登場したばかりである。だからこそ、エンゼルスはいまだに大谷をトレードできないのだ。野球というゲーム面だけに目を向けるなら、大谷と引き換えに得ることができる多くの戦力を獲得した方が球団の再建には役立つだろう。しかし、大谷が今後の10年から12年で球団にもたらすだろう価値は計り知れない。収益、人気、どれをとっても、である。

オダウド氏には想定する数字があるかどうかを訊ねてみた。

「まだ私には予測がつきません。繰り返しになりますが、大谷はとてもとてもユニークな存在なのです。ですから、ほかのどんな選手のケースも参考にはなりません。とてもとても特別な選手なのです」とオダウド氏は答えた。

そこで最後の質問である。大谷は一体どうなるのか。

勝利を渇望する大谷の移籍先候補とは

その質問に答える前に、エンゼルスについて述べなくてはならない。このチームは大谷をずっとアナハイムに引き留めるために全力を注ぐだろう。どうやら大谷をトレードする気はないようだ(野球面ではそれが理にかなっているとしても)。ただ、大谷がエンゼルスとの契約延長を望むこともなさそうだ。チームが負け続け、そしてプレーオフ進出を逃し続けていることへの不満を明らかにしているからだ。エンゼルスがこのオフシーズンは補強に活発な動きを見せているのはそのためだ。ワイルドカード争いに絡むことで大谷の気を変えさせるための最後の努力なのだろう。しかし、多分それは起こらないだろう。不可能ではない。しかし可能性は低い。

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大谷は勝利を求めている。エンゼルスは、大谷が在籍した5年間で一度も勝率5割にすら届いていない。2022年シーズンはアメリカン・リーグ西地区首位から33ゲーム差をつけられ、ワイルドカード枠3位からも13ゲーム差だったのだ。たとえ2023年のポストシーズンに進出できたとしても、それはこの球団組織が抱える大きな問題を解決することにはならない。大谷はそれを知っている。オーナーのアルテ・モレノ氏が球団を売却しようとしているのはそのためではないのか。

ゆえに、大谷がFAになることを予想してよいだろう。

そうなると、どのチームが大谷を獲得しようとするだろうか。もちろん、すべてのチームが大谷を欲しがるだろうし、多くのオーナーたちにはそれが可能なだけの経済力がある。しかし、もっと良い質問とはこうなるはずだ。大谷がプレイしたいのはどのチームなのか、ということだ。どのチームとでも記録的な契約を望めるのだから、場所も金額も選択権はむしろ大谷にある。

「たぶん大谷は、自身のFA市場での価値、勝利の可能性、将来性といったことに具体的な条件を掲示するでしょう。エンゼルスでの経験があるので、大谷はとても具体的になると思います。その要求レベルに応えることができる経済力を持つ球団組織はそれほど多くはないはずです」とオダウド氏は言った。

メッツはそのひとつに数えられる。オーナーのスティーブ・コーエン氏は『ぜいたく税』を歯牙にもかけないはずだ。「スティーブ・コーエン税」あるいは「コーエン・大谷税」と名前を変えるかもしれない。このチームで最も年俸が高い選手はマックス・シャーザーとジャスティン・バーランダーであるが、ふたりとも2024年シーズンで契約が切れる。つまり、重複するのは1年だけなのだ。

ロサンゼルス・ドジャースは、ずっと大谷獲得を切望してきた。ヤンキースも同様であるが、ジャッジとロドンと結んだ長期契約が大谷獲得をより困難にするだろう。ジャイアンツは、このオフシーズンでジャッジとコレアの獲得を諦めた経緯から、余った資金面では問題がない。2022年よりもっと強いチームになることを求めるはずだ。野球殿堂入りが確実視されるイチローがかつて所属したシアトル・マリナーズで、フリオ・ロドリゲスとチームメイトになるというアイデアは球団側にも選手にも魅力的に映るかもしれない。

大型契約の多くは西海岸または東海岸のチームが結んできた。しかし、大谷なら内陸部のチームにとっても魅力的なはずである。シカゴ・カブスがすぐに頭に浮かぶが、シカゴ・ホワイトソックスがようやく大型契約に絡んでくる可能性も少ないながらあるだろう。そしてセントルイス・カージナルスも忘れてはならない。ここまでフリーエージェント市場ではあまり成果を挙げていないが、大谷は元チームメイトのアルバート・プホルスが昨シーズンこのチームで大活躍した姿を見たはずである。常にプレーオフを狙える位置にあることにも大きな意味がある。

2023年は幕を開けた。エンゼルスにとっても大谷にとっても、残された時間は多くはない。

原文: Will Shohei Ohtani, a free agent next offseason, command a $450 million contract?
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本版編集部

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Ryan Fagan

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Ryan Fagan, the national MLB writer for The Sporting News, has been a Baseball Hall of Fame voter since 2016. He also dabbles in college hoops and other sports. And, yeah, he has way too many junk wax baseball cards.