2020年のMLBについて知っておくべき9つのこと|トレード期限、コロナウイルス、地区優勝の目安勝利数、その他多くの不確定要素について

Joe Rivera

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MLBがついに始まるかもしれない。

数カ月の長さに渡ってMLB機構と選手会は給料の支払いやシーズンの長さなどについて交渉してきたが、それもようやく6月末に決着を見せ、あと数週間でシーズン開幕を迎えることになった。

ヒューストン・アストロズ、ナショナルリーグ中地区、そしてムーキー・ベッツの移籍は今でもホットな話題だし、夏の終わりには新たなドラマを演出してくれるだろう。

誰にも2020年MLBシーズンがどうなるかを100%の確信をもって知り尽くすことはできない。もしできる人がいれば、直接教えてほしいものだ。

野球とは予測不能なスポーツだ。そして60試合のシーズンとなると、それはもっともっと予測が難しくなる。すべてのゲーム、すべてのシリーズが大きな意味を持つことになる。残念なことに、2020年シーズンの話題の多くは野球以外の場所から生まれてくる。新型コロナウイルスがいまだに米国内で猛威を振るっているなか、今シーズンが異例なのは、なにもシーズンの長さや日程だけに限ったことではない。球団も選手たちも新型コロナウイルスの脅威に直面しながらシーズンを乗り切らないといけないのだ。

投手と捕手たちのバッテリー組が準備を進め始めるのは7月中旬になるが、現時点で私たちが今シーズンのMLBについて抱く9つの疑問を並べてみよう。

 

1.投手有利になるか、打者有利になるか?

通常であれば、シーズン開幕当初は投手がまだ本調子でないことが多い。現在“サマー・キャンプ”を行ってはいるが、投手たちがこの短い準備期間と短いシーズンにどう対応するかは、かなりの難題になるだろう。

一般的には、打者が本来のスイングを取り戻す方が、投手が投球メカニックをつかむよりは簡単である。ということは、理論的には強力な打線を擁するチームが早い時期には有利になるだろう。そしてその早い時期での有利はそのまま地区優勝と3位の違いまでを意味するかもしれない。

 

2.地区優勝には何勝が必要か?

短い期間に限れば、どんなチームでも勝ち越すか、負け越すかの可能性がある。今シーズンは仮に15勝5敗の期間があれば、それはシーズンの3分の1に相当する。それだけで地区優勝争いで優位な位置につけるのだ。

そうなると、地区優勝には何勝が必要だろうか。38勝か、40勝か。多分その辺りだろう。ナショナルリーグ中地区には強いチームが4つもあるので、シーズンを通して非常に厳しい戦いになるだろう。アメリカン・リーグ東地区は伝統的に力の差が大きく、2つのトップチームと3つの平均以下チームで構成される。

どのチームも今年は優勝のチャンスがあると信じてシーズンを迎えるだろう。だが最後には勝敗がすべてを決める。それでも、地区優勝までに何勝する必要があるかはまだよくわからない。

 

3.弱小チームにもチャンスはあるか?

通常のMLBシーズンであれば、5月末の米国独立記念日あたりがシーズンの勝ち組、負け組がはっきりとしてくる時期だ。60試合のシーズンでは、10勝2敗の時期があれば、それだけで優勝を狙える位置になる。逆に言えば、不調が2週間続くと、それだけでシーズンを諦めなくてはいけなくなるだろう。

と言うことは、この異例のシーズンでは思いもよらないチームが優勝することも大いにありえる。例えば昨シーズン96勝を挙げたタンパベイ・レイズやオークランド・アスレチックスのようなチームがワールドシリーズ優勝リングを手にするなんてことが起きるかもしれない。ちなみに、下は昨シーズンで60試合終了時点での勝敗記録とシーズン終了時の結果だ。

  • ワシントン・ナショナルズ: 27勝33敗、ワールドシリーズ優勝
  • サンディエゴ・パドレス: 31勝29敗、70勝92敗でシーズン終了
  • タンパベイ・レイズ: 37勝23敗、96勝66敗でシーズン終了(アメリカン・リーグ地区シリーズでアストロズに敗退)
  • オークランド・アスレチックス: 30勝30敗、97勝65敗でシーズン終了(ワイルドカード戦でレイズに敗退)

地区で優勝するにはチームの経済力は不可欠であるし、高給取りの選手を集めたチームは選手層が薄いチームよりはるかに有利だ。だが、60試合では何が起こっても不思議ではない。つまり、シンシナティ・レッズ、レイズ、シカゴ・ホワイトソックス、アスレチックスなどのようなチームにも平等にチャンスがあるということだ。

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4.トレード期限はどのようになる?

トレード期限は8月末までだ。各チームは非常に短い期間で今シーズンの決断を下さないといけない。今シーズンは各チームに選択肢はあまり多くない。短いシーズンでは早まったトレードは命取りにもなりかねないからだ。逆に言えば、短いシーズンではどのチームにも優勝のチャンスがあるわけだから、有望な選手を手っ取り早く金で手に入れて、チームを躍進させることもできるだろう。

大きな選手間の移動があるかもしれないが、誰にも予測することはできない。30チームには30通りの考え方があるだろうし、それは野球の哲学に属する分野で、むしろ大学の講座に相応しい。

新型コロナウイルス危機のさなかに引っ越しを余儀なくされる選手たちやその家族への影響も考慮されるべきだろう。それを無視することは非常に近視眼的で利己的でひどいことだ(選手たちは人々に娯楽を与えるために、危険を冒してプレイしていることを忘れてはならない。ツイートに批判コメントを書き込むまえに思い出してほしい)。

 

5.新人たちはどれだけの衝撃をもたらすか?

短いシーズンでは、各チームはかつてないほど多彩な選手層を必要とする。つまり、新人たちには大きなチャンスがある。

マイナーリーグが中止になり、各チームのロースター枠は60人に拡大される。多くの有望株選手たちがメジャーの舞台に送られるだろうし、ファンは将来のスター選手たちの活躍を目にすることができるだろう。新人や3Aレベルの選手たちにとってはメジャーのレベルで印象を残すチャンスが広がっているということだ。

多くのチームは通常の40人枠以外から経験豊かな選手たちを選ぶと思うかもしれない。だが、若い選手たちも地区優勝争いにはあなどれない存在になる。長いシーズンでは昨年のピート・アロンゾのような新人がチームに大きな変化をもたらすこともあるが、今年のメジャーリーグがそれを忍耐強く待つことができるかはまた別の問題だ。

 

6.新型コロナウイルスから回復した選手たちの扱いはどうなる?

悲観的にはなりたくないが、シーズン中にある段階で新型コロナウイルスに感染する選手が出るのは避けられないだろう。既にDJ・ルメイユ、チャーリー・ブラックモン、ジョーイ・ギャロ、フレディ・フリーマンら多くのMLB選手たちが検査で陽性と診断されたことを見ても、移動を伴った60試合のシーズン期間中、他に感染する選手が1人も出ないとは考えにくい。野球に限ったことではないが、それは2020年シーズンを再開するスポーツすべてが直面しなくてはいけない副次的結果であり真実だ。

そうなると、新型コロナウイルスから回復した選手たちはどうやって試合に復帰するのか。新型コロナウイルスの副作用は長く続くことがあるし、MLBが実施する検査には不正確な結果が含まれるかもしれない。新型コロナウイルスを克服して戻ってくる選手たちを見てみたいものではあるのだが。

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7.球団は監督の評価をどうするか?

ルイス・ロハス(ニューヨーク・メッツ)、ロン・レニキー(ボストン・レッドソックス)、デビッド・ロス(シカゴ・カブス)らのような1年目の監督にとっては、60試合のシーズンは采配が非常に難しいものになるだろう。春季キャンプが中断されたうえ、新型コロナウイルス危機のさなかに選手たちを精神的な集中力を維持させることは、『ミッション・インポッシブル』のような困難な使命だ。

そうなると、球団のフロントは監督たちをどのように評価するのだろうか。今シーズンを無駄だとか、無価値なものだと言うべきではない。それが情熱のためか金のためかはともかく、選手たちはとにかくプレイしようとしているのだから。新らたに就任したばかりか、あるいはクビがかかった監督たちの2020年シーズンを球団はどう評価するのだろうか。

このような状況に対処できる人物を求めるのは酷であるような気がする。だか、将来を任せるには心もとないとする監督を追いやる絶好の機会としてこの2020年シーズンを捉える球団もあるかもしれない。

 

8.選手たちはウイルス感染予防対策をどう守るか?

MLBの新型コロナウイルスへの安全と健康対策はそれが作られたときから厳しい批判の目にさらされてきた。不幸なことに、その内容はMLB機構と選手会の醜い争いのさなかにほとんど忘れ去られてしまった。

野球選手たちに唾を吐くなと言うのは、リック・フレアーにチョップをしてから「Wooooo!!」と叫ぶのをやめろと言うようなものだ。それができるとはとても思えない。さらに言うならば、選手たちは遠征もするわけであるし、その際には選手たちはいつも通りのことをしたがるだろう。試合後に食事に出かけたり、観光をしたり、その他もろもろのことだ(場所によって様々な制限はあるだろうが)。米国疾病予防管理センターが定めたガイドラインを選手たちが守って、ソーシャル・ディスタンスを保ち、マスクを着用し、とにかく愚かな真似をしないことを祈るばかりだ。

その望みがかなったとしても、何人かの選手が新型コロナウイルスに感染するのは時間の問題だろう。それが不運な出来事であろうと、ルールを無視した結果であろうとだ。すべての選手たちがこのルールをどう守るかは注目するに値する。

 

9.このシーズンは終了することができるか?

最悪の予想はMLBがシーズンをやり直すことかもしれない。今シーズンを終了するチャンスは本当にあるのだろうか。

米国内の新型コロナウイルスの感染者数は増え続けている。同一地域内であっても都市から都市へと移動を余儀なくされるMLB選手たちがシーズン中ウイルスに感染しないという考えは理解しがたい。

MLB選手たちの間で大規模な感染拡大でもなければ、シーズンが途中で中止になることはないかもしれない。だが、それは絶対に起こらないとはとても言えない。もしガイドラインを守らない選手や関係者が少しでもいれば、それは現実のことになるかもしれない。そこには奇跡のような幸運が必要とされている。だが、野球には予測もできない出来事が常につきものではないか。

(翻訳:角谷剛)

Joe Rivera