ジョー・マグレーンについて、少しばかり話をさせて欲しい。
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いや、わかっている。あなたが今、私が2018年ナショナル・リーグのサイヤング賞投票で上位5人をどのように選んだのか知りたいのだということは、わかっている。私もその話をするのが待ちきれない。
でも、まずはジョー・マグレーンだ。
1980年代後半、私が野球以上に愛していたものはそう多くなかった。友達の家の裏にあった小川を開拓することくらいだっただろうか。あるいは、釣りとか。
でも、私は大方、野球を愛していた。小遣いがある限り野球カードを買い、カードの裏に書かれているスタッツを覚えた。ラジオで試合の実況を聴き、テレビで試合を観た。新聞のボックススコアと個人成績を毎日、チェックした。
1988年の夏、私は12歳だった。そしてジョー・マグレーンは、私のホームタウン、セントルイス・カージナルスでプレーする2年目の先発投手だった。長身のサウスポーが体を広げて、足を大きく蹴り出し、ホームプレートに向かって体を投げ出す姿を見て、私はサウスポーになりたいと願った。彼は三振を大量に奪うわけではなかったが、彼から良い打球を打てる選手は誰もいないかのように見えた。大きく曲がるカーブは、美しかった。
マグレーンはその夏、私にとっては特に意味のないように思われるスタッツを出した。私は20勝投手の哲学を信じていた。物心がついて最初の数年間でカージナルスの先発投手、ウォーキーン・アンドゥハーとジョン・テューダーが20勝するのを見て、その哲学は私の中で育てられた。そして地元の図書館で野球の本を読んで、その哲学は強化された。
マグレーンはその年、ナショナル・リーグでトップの防御率2.18を記録した。1989年のTOPPS野球カードで私はその事実を確認し、その数字がイタリック体で記されていることも確かめた。しかし彼は、たった5勝しかしなかった。5勝だ。彼は5勝9敗だった。先述した通り、その数字は私にとって意味を持たなかった。良い投手は多くの勝利を挙げるのだ。マグレーンは良い投手だったが、1988年は5勝9敗だった。
何かが間違っていた。私は「W」の文字が持つ力を疑い始めた。そして私は理解し始めた。試合の結果に影響を与える選手は、おそらく投手だけではないことを。そして「勝者だ!」とか「敗者だ!」とかいう単純なジャッジに基づいてひとりの選手に賞を与えることは、おそらく馬鹿げていることを。
ビル・ジェームズのことを知っていたら、と思う。野球の統計分析におけるパイオニアであり、スポーティングニュースの誌面でも自身の著作を紹介していたが、私は知らなかった。私は新聞、そして野球カードが伝えることだけを知っており、それ以外のことは自分で探し出さねばならなかった。
というわけで、今年のナ・リーグのサイヤング賞を選ぶ投票者30名のひとりが私であったことに、私は個人的に喜んでいる。それは、投手を評価する上で勝利数と敗戦数は全く関係ない、ということを証明する場である。
タイムマシンに乗って12歳のライアンにこう言ってやりたい。「おい坊主、見たか? お前は間違ってなかったぞ」。ジェイコブ・デグロームは今季10勝しかしなかったにも関わらず、リーグ最高の投手に選出された。
おそらくあなたの予想通りだが、私はデグロームに1位票を投じた。ニューヨーク・メッツの右腕は2018年、ただ素晴らしかった。自身の能力を遺憾なく発揮したアーティストだった。3度のサイヤング賞受賞者であるマックス・シャーザーも自身最高クラスのシーズンを送ったが、デグロームを1位とするのは私にとって極めて簡単だった。
彼の1.70という凄まじい防御率、そして9イニング当たりの奪三振数11.2という数字については知っているはずだ。今年32度の先発登板のうち22度、彼は自責点ゼロもしくは1だった。得点圏に走者を背負った場面、計150打席で、彼は相手打者をOPS.404に抑え込んだ。彼はFIP1.99を記録した。2000年以降にFIP2.00を下回った投手は、他に将来の殿堂入り投手クレイトン・カーショーだけだ。カーショーは2度、記録している。
From start to finish, @JdeGrom19 left no doubt. #NLCyYoung pic.twitter.com/hMa7uYDYM6
— New York Mets (@Mets) 2018年11月15日
最初から最後まで、デグロームは文句なしの活躍だった。
シャーザーに2位票を投じるのも、私にとっては簡単だった。今年でなければ、彼はおそらくサイヤング賞に選ばれていただろう。彼が成し遂げたことを見てみよう。9イニング当たりの奪三振数は12.2で、自身初のシーズン300奪三振に到達した。キャリア最高のFIP2.65、そして防御率2.53も素晴らしい。四球当たりの奪三振数は5.88で、9イニング当たりの被安打数6.1とほぼ同じだ。ただただ素晴らしい成績だった。
アーロン・ノラに3位票、そしてパトリック・コービンに4位票を投じた。5位票はカイル・フリーランドかマイルズ・マイコラスかで迷ったが、フリーランドに投票した。
何とかして、私は5位票の欄に「マグレーン」とタイプしたい衝動を抑えたのだった。
原文:On Jacob deGrom, Joe Magrane and one voter's NL Cy Young award ballot
翻訳:Muneharu Uchino
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