相手投手は他のどの選手よりもロビンソンに対して、身体の近くを厳しく攻めた。それはよく、猛攻撃の引き金となった。シカゴ・カブスのポール・エリクソンがそのようにしてイニングを始めたとき、ドジャースは7点を奪った。ジャッキーのバントは、素晴らしい投手たちから得点する突破口を開く。ブルックリンで先日、ロビンソンはジョニー・セインに対してバントをし、悪送球の間に三塁まで走った。セインはリードを失い、降板し、ドジャースが5点を奪う前にはもう、彼はシャワーを浴びていた。
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特筆すべきは、ロビンソンは決して一匹狼ではないということだ。彼の走塁は、ドジャースにとって助けになっている。もうひとりの俊足選手ライザーと共に、彼は今年のドジャースで最も印象的なシーンを数多く演出している。ジャーナリストのビル・ローダーはこう書いている。「ドジャースは短く打ち、長く走る」と。18カ月も前からロビンソンを見出していたリッキー会長でさえ、1947年シーズンにロビンソンがチームに居場所を見つけられるかわからなかった。
プレッシャーや批判もあった故、最初は自信を持てなかったのは当然だった。ドジャースが最初にシンシナティに行ったとき、ロビンソンの打率は.250以下だった。あるメディアは、もしロビンソンが白人だったら数週間前にベンチに送られていただろう、と書いた。
生まれ持った適応能力
多くのメジャーリーガーは初め、この二グロリーグ出身の選手を軽視していた。「彼は成功しないだろう。メジャーリーグでやるには実力が足りない」と。ロビンソンはチームメイトたちに避けられ、フィールドではスパイクに狙われ、打席では威嚇されるという、真偽のほどはわからない話もあった。これでは普通、若い選手はショックを受け、自分の殻に閉じこもってしまうだろう。
リッキーはロビンソンに、リスクを取るよう伝え続けた。「いつもひとつ先の塁を狙うんだ。相手選手に君を目掛けて投げさせるんだ。彼らを焦らせるんだ。もちろん君はアウトになるが、投げさせる度に相手は焦り、やがて悪送球をする。君は先の塁に辿り着けるようになる」
ロビンソンはそれを実践し、目覚ましい成功を収めた。
リッキーが考える“重要な資産”のひとつは、何にでも適応する生まれ持った才能だ。ロビンソンは優れたバスケットボール選手として、陸上選手として、ゴルファーとして、テニス選手として、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のフットボール選手として、明らかに幅広い能力を備えていた。二グロリーグで遊撃手だった彼は昨年、モントリオールで二塁手になるよう求められた。メジャー昇格後のまだ寒い4月、彼はファーストミットを持っていた。無茶な要求過ぎるようにも思われたが、そんなことはなかった。今や彼は上手にバント処理を行い、三塁や二塁への送球で何度かチームを救っている。リーグにいる他の一塁手の何人かより、広い守備範囲を誇っている。彼がまだ苦戦しているのは、どの打球を他の選手に任せどの打球を取りに行くかという判断だが、それも上達している。
9月9日時点で、ロビンソンは42のバントを成功させている。うち14のバントはヒットになり、28のバントは犠牲バントとなった。彼はたった4回しかバント失敗していない。多くの監督が失敗は仕方ないと考えている今日、ロビンソンは自らを犠牲にしながら完璧であることを提示している。
ロビンソンは塁上の悪魔であり、リーグ2番手の選手に倍近くの差をつけてぶっちぎりの盗塁王だ。現時点で彼は二盗を19回、三盗を3回、本盗(ホームスチール)を3回成功させている。盗塁失敗は9回だけ。リーグの全チームを相手に盗塁を決めている。
ロビンソンのスピードは、彼がより先の塁へと進む手助けもする。彼は29本の二塁打と5本の三塁打を放ち、ダブルプレーを記録したのは5回だけだ。
ロビンソンはまた、安定したスウィングと共にパワーも有している。ホームランは9本。シーズン序盤には苦戦した投手たちの攻略法も学んでいる。彼はシーズンを通してヒット数ランキングの上位で、最初のシーズンにして200安打に近付いている。
ロビンソンのプレーは安定している。9月7日、彼は今季初めて欠場した。その日まで全試合出場を続けてきた選手は、ドジャースで彼ひとりだ。彼は敵地で打率.290、ホームで打率.298を記録、トータルでは打率.295だ。4月は打率.225とスロースタートで、多くの人が早くもロビンソンを見限った。しかし5月に打率.284をマークすると、6月には21試合連続安打を記録。月間43安打で打率.377を記録した。7月は打率.253と落ち込んだが、8月は打率.311と持ち直した。
ジャッキー・ロビンソンはメジャーリーガー初年度にして、全てを成し遂げている。これ以上何を求められると言うのだ?
(完)
原文:SN Throwback Thursday: J.G. Taylor Spink pens column about Jackie Robinson, 1947 Rookie of the Year
翻訳:Muneharu Uchino
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