115敗でも明るいニュースを集めたMLB球団の企画力とは

Ryo Shinkawa

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スポーツの世界は結果が全てを分ける。勝ち続けるチームには常に明るい話題がついて回り、負けが込めば、次のシーズンに向け誰をクビにするか、といったようなネガティブなニュースが湧き出てくる。結果は、チームの人気に影響し、ひいては収益や将来性にまで差し響くのは必然だ。

 

ところが、MLBのボルチモア・オリオールズは例外だった。彼らは47勝115敗という散々な成績を残しながらも、ユニークな取り組みを行い、ポジティブな話題を呼んだのだった。オリオールズは歴史的に不調なシーズンを送る中、どのように明るいニュースをもたらしたのか。それは、スポーツ界で初となる“点字ユニフォーム”の着用にあった。

 

オリオールズの地元には、全米盲人連盟ボルチモア支部という長らく盲目の人たちを支援してきた団体がある。40周年を迎えたこの団体が記念として企画したのは、オリオールズのホーム戦で開催した“ブラインド・ナイト(Blind Night)”だった。

 

連盟の歴史を称えるこの日、オリオールズの選手とコーチはロゴと名前が点字で書かれたユニフォームを着用し、試合に臨んだ。各選手のサインが入ったユニフォームはその後、チャリティーオークションにかけられた。

特に、中心選手のアダム・ジョーンズのユニフォームには32の入札があり、結果的には1550ドル(約17万6千円)で落札。売り上げの全てが全米盲人連盟ボルチモア支部に寄付された。試合の前には、盲目ピアニスト兼歌手であるカルロス・イーバイ氏が国歌斉唱を務め、先着1万5千人の来場者には点字でアルファベットが記載されたカードが配布された。

 

この取り組みは、ビジネス雑誌のフォーブスの媒体で取り上げられるなどスポーツメディア以外でも多く取り上げられた。

 

また、メジャーリーグの舞台だけではなく、こういった活動はマイナーリーグの試合でも見られる。今年8月にはシカゴ・カブスの傘下シングルA球団のマートルビーチ・ペリカンズが「デフ・アウェアネス・ナイト(Deaf Awareness Night)」を開催した。

 

聴覚障害に対する認知を高める取り組みで、選手達のユニフォームには手話のサインでチーム名が記載されていた。国歌斉唱も手話で披露され、試合前には聴覚障害を持ちながらもMLBで11年のキャリアを歩んだカーティス・プライド氏によるベースボールクリニックも開催。手話を学ぶ講義がボールパークで行われた。

 

さらに、今シーズンの米野球シーンは観客動員の低迷が目立ったが、地元密着の企画によって4年連続で観客動員数が8000人以上を超えたチームがある。北米独立リーグのアメリカンアソシエーションに所属するセントポール・セインツだ。

 

地元セントポールが誇るアートを大切にし、試合当日のボールパークでも地元画家がギャラリーを開催するなど、野球以外の取り組みで球場にファンを呼び寄せている。「アート・イン・ザ・パーク」と題して子供から大人までボールパークでアートを楽しむことができる仕掛けだ。

 

こうした野球と他分野の掛け合わせによって、球団はボールパークを1つのプラットフォームとして色んなメッセージを発信することができる。チームとしても勝敗に左右されない話題作りが可能となるわけだ。

 

日本でも成績に関係なく、試合会場でさまざまなエンタメでファンを盛り上げている。地域密着を大切にした地元名産を販売したりなどの取り組みも多く見られるようになった。どちらかといえばセインツのようにエンタメを利用した取り組みを行うチームが増えてきている。

 

だが、東京パラリンピックを2年後に控えているからこそ、オリオールズやペリカンズが行ったスポーツとチャリティーの融合のような“新たな掛け合わせ”により、お互いにとっての世界を広げる取り組みを期待したい。


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Ryo Shinkawa