都合の悪い音声は削除…MLBの方針とファンが見たいシーンにズレ

Jason Foster

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目新しい光景ではなかった。投手が打者の背後に投球し、退場を命じられ、監督が怒って審判に向かっていく。

一方で、音声は非常に興味深いものだった。2016年のロサンゼルス・ドジャース戦で、ニューヨーク・メッツのノア・シンダーガードがチェイス・アトリーの背後に投球し、前年のプレイオフでの激しいタックルに対する報復とみなした審判に退場を宣告されたとき、テリー・コリンズ監督は最も汚い言葉で審判を非難した。

コリンズの怒鳴り声もトム・ハリオン審判の反論も、すべてがリアルであり、下品だった。同時に、有益で面白く、ワクワクさせるものでもあった。まさにMLBが必要としているものだ。音声がリークされ、MLBがYouTubeからそれを削除しても、動画への反響がすべてを物語っている。野球ファンのメッセージはほぼ一貫して「もっとこれがほしい」だった。

NFLでは「Hard Knocks」や「All or Nothing」といった番組が成功している。だがMLBは、フィールドの内外を問わず人の心を最もつかんで離さないような物語を見せる点で遠く及ばない。だが、コリンズの動画への反響が示すように、野球ファンは間違いなく舞台裏を望んでいるのだ。たとえそれが不快な舞台裏であっても。

しかし、MLBの試合音声に関するガイドラインは、リーグとファンの希望との間に残念な断絶があることを示している。

MLBは現地時間6月14日、『SN』に対する声明で「ガイドラインでは、放送中にオンエアされない審判マイクの音声はすべて、試合直後に削除されることになっている」とコメント。コリンズの音声がなぜ漏れたのか、調査しているという。

使われなかった音声を即座に削除?それは不要なまでに厳格に思われる。そしておそらく、MLBが少し真剣にとらえすぎていることの表れだ。審判との労使協定の結果ではあるが、その厳しさは次の交渉で再考すべきだろう。

リーグはファンの興味をかきたて、ファンを取り込み、新たなファンを引きつけるための道を考えているのだから、カーテンを外すことは大きく実を結ぶかもしれない。ファンは成績や日常的な音声を超えた審判、監督、さらには審判のことを知りたいと望んでいるのだ。人としての彼らを知りたいのである。個性を見たいのだ。そして理解したいのだ。MLBは全般的にこれらすべてに苦戦している。リーグが最高の選手たちを適切に売り出せていないと言われて久しい。これもその延長に過ぎない。

ファンだけではない。選手たちもこれらのことを考えている。

確かにPR動画やMLB Networkの特集も時折あるが、それらは常に非の打ち所がなく、本当に反響を呼んだり、面白くなるようことがない形でつくられている。選手や監督にマイクがつけられても、漏れ聞こえてきたものこそ面白く楽しくて気分が良くなるものだ。それは何も間違えていない。

だから、MLBは、普段アクセスを制限しているものを許しても良いはずだ。良いものも、悪いものも、醜いものも、全体の画を示すためのより良い仕事をすべきだろう。それらすべてが人を引き付けるものなのだから。 1982年シーズンに製作されたアトランタ・ブレーブスのドキュメンタリー「It's a Long Way to October」を思い出す。エミー賞も受賞した画期的なドキュメンタリーだ。シーズンを通じ、カメラクルーが内部に入れたのである。ジョー・トーリ監督たちはマイクをつけていた。それらのカメラやマイクは、優れた態度や気さくで楽しい会話よりもずっと多くをとらえた。

当時は時代の先を行くドキュメンタリーだが、過去のものであるにもかかわらず、MLBは再びこういったものを作ることができていない。伝えるべき面白いエピソードやその瞬間のドラマ、ニュアンスはたくさんあるのだ。ほかでは見ることができない感覚を視聴者に与えてくれるだろう。

公正を期して言うならば、MLBは以前、これらの路線を進めていた。Showtimeと協力し、2011年のサンフランシスコ・ジャイアンツ2012年のマイアミ・マーリンズの舞台裏をフィーチャーしている。だが、それが最後に放送されたのは6年前のことだ。このスポーツの健全財政と、ファンをもっと取り込みたいという意欲を考えれば、このコンセプトを復活させるのは当然のことと思われる。

「Hard Knocks」のスプリングトレーニングバージョンがあれば、私は見るだろう。シーズンを通じたドキュメンタリーや映画がまたできたら、私はそれも見るはずだ。「Sounds of the Week」が口論や冗談などリーグの人間的な側面のハイライトを流してくれれば、私はすべてのエピソードをチェックする。大勢の野球ファンも同じだろう。

MLBはストライクゾーンや幸せになる物語に関して議論すると、“人的要素”を取り込むのが好きだ。だが、このスポーツではもっと愛すべき“人的要素”がたくさんある。MLBはそれらも取り込むべきなのである。

ファンを保ち、引きつけるのに、試合のテンポに関する発案やノスタルジーだけに頼ってはいけない。あらゆる美における作品を示すべきだ。たとえその美が、少し醜いものであっても。

原文:Terry Collins tirade video shows why MLB should showcase 'human element'(抄訳)
翻訳:Hiroaki Nakamura

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Jason Foster joined The Sporting News in 2015 after stops at various news outlets where he held a variety of reporting and editing roles and covered just about every topic imaginable. He is a member of the Baseball Writers’ Association of America and a 1998 graduate of Appalachian State University.