シカゴ発。長くせわしない野球のシーズンを表現するのに最もよく使われる言葉の一つが「消耗戦(Grind)」だ。選手たちは何カ月もの間毎日プレーし続ける。ファンや解説者や記者たちは、そんな消耗戦の中に感嘆や喜びに値する試合など一試合もないことを頭では理解している。しかし、感情は依然として激しい浮き沈みを繰り返すのだ。
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選手たちは、これとは違う見方をする。彼らは皆一様に数カ月もの長くつらい仕事を耐え抜くためにルーティーンと安定性を維持することに努める。だが、プレーオフへの進出経験のある選手にとっては、シーズンの捉え方もまた変わってくる。
つまり、選手によって“順位”の捉え方が違うのだ。確かに、4月から6月の試合はシーズンの最終的な結果に影響する。しかし、少なくとも現時点までの順位がこのまま最終的な結果になることはない。NBAでは、1年の中で今ぐらいの時期から、試合に対して違ったアプローチを取り始める傾向がある。
「オールスターブレイクが明けるまでは、試合結果は問題にはならないと感じているよ。シーズンの核心部分に本腰を入れて取り掛かるのはそれからだ。だから、その時期に“そろそろマズイ”ボタンを押すのか、そのままを維持すればいいのかを決める必要があると思う」シカゴ・カブスの左腕ジョン・レスターはスポーティングニュースにそう語った。
ワールドシリーズ優勝のチャンピオンリングを3つ有し、ポストシーズンで合計25試合に登板したレスター。彼は異なる3つのチームでプレーオフに進出した経験を持つ。彼が参加していないプレーオフを見つけるには、2012年まで遡らなくてはならないほどだ。彼はこれまで、楽々とプレーオフに進出したチームと、レギュラーシーズンの最後の最後でプレーオフ進出を決めたチームに所属してきた。そのどちらのチームも、その時々の順位をまるっきり無視するという大胆な発想ではなく、より一般的に捉えて戦略を練る傾向があった。
だが、それが常に上手くいくわけではない。クリーブランド・インディアンスのリリーフ投手アンドリュー・ミラーは、フェンウェイ・パークでは特に油断ならないと語った(フェンウェイ・パークはボストン・レッドソックスの本拠地、ミラーは2011年から2014年までレッドソックスでプレーした)。フェンウェイ・パークでは、左翼のフェンスに順位表が表示されるのだ。順位表は日々更新されるので、そこでプレーする選手たちは、特有の難題を抱えることになる。
そのせいもあり、シーズンは肉体のみならず精神の消耗戦でもあるのだ。
「野球には、アイスホッケーやアメリカンフットボールはおろか、バスケットボールのような接触もないけれど、それほど多くない人員で180日間162試合を戦い抜くんだ」ミラーはそう語った。
今がちょうど肉体的にも精神的にも両面から難しくなる時期だ。後半戦が始まれば、ギアを一段上げることになる。レスター曰く、運動量はこれまでと変わらないが、精神面が異なってくるのだという。特にシーズンの途中では、肉体的に大きな変化を加えることは難しいのだ。
「当てるべき焦点が少しだけ明確になった」レスターはそう語る。「精神面が明確になれば、調子も上がる。物事も少しだけはかどるようになるよ」。
レスターが言うには、各球団は7月辺りに潜在能力を最大限に発揮していないことに気付き、それを発揮できるようになることが多いという。ちょうど昨シーズンも、オールスターブレイクに突入するまでのカブスはミルウォーキー・ブリュワーズに数ゲーム差をつけられていた。しかし、ブレイクが明けると8連勝を記録し、その後ナ・リーグ中地区首位の座を手放すことはなかった。
この頃が、順位を上げることがよりやりがいのあることだと気付かせてくれる時期となる。5連敗は我々をチキン・リトルに、5連勝はロッキー・バルボアに変えてみせるのだ。
クレイトン・カーショウは、ロサンゼルス・ドジャースにて2013年以降毎年ポストシーズンを経験している。エース左腕の彼は1年中順位を気にしているが、今ぐらいの時期からは、同地区のチームの勝敗に細心の注意を払うようになる傾向があるという。
「みんなが勝ち負けによって自チームを区別するようになってきた。僕たちは同地区のチームが負けた時には気に留めているよ。少なくとも僕はね。現状もしっかり把握している」スポーティングニュースに対してカーショウはそう語った。「試合内容に影響を与えることはないけど、もしダイヤモンドバックが負けたり、スロッキーズが負けたり、ジャイアンツが負けたりと、そうなったら僕たちは嬉しいよ」。
インディアンスの遊撃手フランシスコ・リンドーアのようなポストシーズン進出経験を数回しか持たない選手や、ワールドシリーズで2度の登板経験があるシカゴ・ホワイトソックスの右腕ジェームス・シールズなどは、シーズン終盤まで順位表は見ないという。リンドーアは9月手前まで見ないと言い、シールズはワイルドカードの制度が新しくなったことによってこれまで以上に多くのケースが想定されると語った。
「シーズンの最後の最後でプレーオフ進出を決めるチームもある。例えば、2010年(実際には2011年)、僕たち(レイズ)は9月に入る時点で首位から11ゲーム差もあったけれど、レギュラーシーズン最終戦の162試合目でプレーオフへの進出を決めた」とシールズは語った。
シーズンの消耗戦は、肉体に大きな負担を強いる。これには全選手が同意するだろう。そしてダメージを和らげるためには、少しばかり手を抜く必要がある。
リンドーアは、テリー・フランコーナ監督の指示さえあれば、試合に出ないことも快く受け入れるようになるだろうと話した。また、体力を温存するための小さな機会を逃さないと言う。
「6回に打席に立ったときは、1塁まで全力疾走する必要はないんだ」。リンドーアはそう話した。
MLBのシーズンはしばしばマラソンと比較される。リンドーアのような選手は少しばかり手を抜く方法を心得ているが、それは彼が自分自身でペース配分をしているのであって、怠けているわけではないのだ。インディアンスの外野手ラジェイ・デービスはレギュラーシーズン、特に7月周辺の試合を“忍耐の時”と呼んでいる。彼もチームメイトのリンドーアと同じように、消耗戦を耐え抜くということは、言い換えれば「いつガス抜きをすればいいのかを把握すること」だと理解している。
「時には少しだけ体力を温存したり、本領を発揮しなかったりする。それは、レギュラーシーズンを突破する必要があることと、明日も、その次の日も、そのまた次の日も同じことをしなくてはならないことを知っているからだ」デービスはそう語った。「一度の出場で本領の全てを発揮しない方が良い。でも、調子の浮き沈みに関係なく、一貫した活躍は必要だ」。
カーショウはこれとは少し違った見方をしている。これにはおそらく、昨年8月26日から9月11日までの間に1勝しか挙げることができなかった、ドジャースの恐ろしい敗戦が影響しているのだろう。彼は、一切の緩みもなくプレーすることが最善だと考えている。
「これは議論を呼ぶね。プレーオフのためだけにプレーして選手たちを休ませるのか、はたまた、ひたすら前に向かって全力で進むのか。僕は少し前に常に全力で進む方が良いと学んだよ」カーショウはそう語った。「選手たちにはただプレーさせればいい。必要とあれば休暇を与えるのもいい。だが、大部分においては、選手たちにプレーをさせ、継続させる。先発投手も早めに交代させるのではなく、引き続き投げさせる。ただ最後まで走るんだ」。
カーショウは、シーズン中にチームが余裕のリードを奪っている状況でのわずかな遅刻といった緩みですらも、チームを春季キャンプのような雰囲気に変えてしまうと感じていると語った。そして、いざプレーオフが始まった時にその雰囲気から抜け出すのは難しいという。
今シーズン、彼らは数カ月間それを実行してきた。そして残りの期間もあと数カ月だ。
たった1試合ではチームを非難したり妥当性を確認したりする材料にはなり得ない。ありがたいことに、実際に試合を行う男たちはそのことを理解している。
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原文:Time to scoreboard-watch? Not yet, MLB players say
翻訳:日本映像翻訳アカデミー