通算194勝のヤンキースOB、ダルビッシュと大谷を絶賛

Michael McCarthy

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デビッド・コーンはヤンキース在籍中に4回もワールドシリーズ優勝を果たし、更にブルージェイズでも優勝してきた。そんな彼でも、2018年ほど大々的にメディアに取り上げられるヤンキースを見たことがないという。

昨季59本のホームランを打ってナショナル・リーグMVPを獲得した大砲ジャンカルロ・スタントンと契約し、ヤンキースの優勝への期待は高まっている。

立て直しを図るはずだった2017シーズン、最終的にはアストロズに席を譲ったものの、ヤンキースはアメリカン・リーグ地区優勝決定戦の第7戦まで粘った。

ルーキーのアーロン・ジャッジは52本のホームランを打ち、記録的な飛距離でスポーツファンを驚かせた。スタントンも加わることで、彼らは21世紀版のミッキー・マントルとロジャー・マリスになれるかもしれない。

今シーズンは全てが”デカイ”というYESのユーモラスな広告キャンペーンにコーンは出演した。デカイというのはYESの視聴率のことも差している。

春キャンプにおけるヤンキースのテレビ視聴率は昨年比で85%も上昇。YESの放送はNCAAトーナメントやPGAゴルフなどの国民的スポーツイベントにも打ち勝った。ヤンキースが運営するこのケーブル・ネットワークは春キャンプ史上、最高の視聴率を記録しようとしている。

カンザスシティ生まれのコーンは、ヤンキースに在籍していた1999年、MLB史上16回目の完全試合を達成。コーンはYESのメンバーになってからも、野球を統計学的見地から分析するセイバーメトリクスの重要性を論じ、時代を先取りしてきた。

Sporting News(以下、SN)はコーン(以下、DC)にスタントン-ジャッジのコンビ、ヤンキース、そしてコーン自身の運命を変えた1987年のトレードについてインタビューを行った。

DC:この話題でもちきりだ。(ホームラン記録が)何本いくか。(飛距離が)どこまでいくか。昨年と同じくらいの記録を出せるか。彼らの次に打つのはゲイリー・サンチェスだと言われている。ゲイリー・サンチェスは今年注目すべき選手の一人だと思う。たくさんの走者が塁に出ている状態で打席に立てるからだ。前の二人はフォアボールされることが多いだろう。アーロン・ジャッジの去年の出塁率を見れば明らかだ。アーロンは少なくとも年に100回は敬遠を受けるような男だ。その後に打順が回ってくるサンチェス、ディディ・グレゴリウスらにとっては既にランナーが出塁していることを意味する。

SN:昨季のヤンキースは”ベイビー・ボンバーズ”人気もあり、決して強くはないが愛すべきチームでした。(今年は)悪の帝国として立ち戻ってくるのでしょうか?

DC:一夜にして悪の帝国が再来したかのようだ。笑ってしまうくらい、あっという間だった。これはブライアン・キャッシュマンとハル・スタインブレナーの手柄だ。難しい決断を下してきたからだ。2年前にチームを解体し、素晴らしいトレードをして、時間をかけずに全てをリセットした。まるで一夜の出来事だったかのように。ブライアン・キャッシュマンは本当に評価されるべきだ。ヤンキースは莫大な資源と収入源を持っているものの、やはり難しい判断を迫られ、正しい選手を選ばなければならず、ブライアン・キャッシュマンはそこでミスをしなかった。

SN:2018年のヤンキースはメディアでの取り上げられ方が桁違いです。タンパの春季キャンプではどんな様子でしたか?

DC:(昨シーズンの)意外な出来栄えによるキャリーオーバー効果はあると思う。初日から大盛況だった。ピッチャーとキャッチャーがキャンプ地に到着しただけでも、練習を見るための行列ができていた。大物スラッガーたちも到着していないというのに!異例のキャンプだった。ラインナップを見て、このチームに何ができるか、凄まじい期待が寄せられている。

SN:ヤンキースの投手力は十分と言えますか?

DC:それは究極の質問だね。ミスが沢山あっても、それをカバーできるほど優秀なリリーフ陣を彼らは持っている。ローテーションの奥深さは、有望株と彼らの成長にかかっている。それがユストゥス・シェフィールドだろうと、オフシーズンに獲得したデビッド・ヘイルのような経験者だろうと。究極の質問、それは先発ローテーションにケガ人が出た時、順番待ちをしているのは誰かということだ。

SN:以前、二塁手タイラー・ウェイドには気をつけろとツイートしていましたね?これから彼はプレーする機会が沢山ありそうですが、彼にはどんな力があると見込んでいますか?

DC:マイナーリーグにおける彼の評判は一貫して良かった。私が話した人は皆、彼がいい選手になると言っていた。彼は沢山のことを得意とする選手だ。彼のスピードと守備力は優れている。問題は、メジャーリーグでも高い評価を得られるかどうかだ。マイナーリーグのレベルでは問題ないことを証明してきた。今度は、メジャーリーグのレベルで何ができるか試す時期だ。

SN:ヤンキースとアストロズ以外に注目すべきチームはいますか?

DC:ドジャースは常に注目すべきだろう。ローテーション1番手にはクレイトン・カーショウが万全の状態で立っている。私は今でも彼が最高のスターターだと思っている。クローザーにはケンリー・ジャンセン。彼もMLB最高のクローザーと言えるだろう。ドジャースは才能ある選手を大勢抱えている。ジャスティン・ターナーが骨折してしまったのは痛いが、ドジャースはいつも脅威的な存在だと感じている。気をつけないといけないチームは他にもいる。ダイヤモンドバックスはJ.D.マルティネスを失ってしまった。しかし、代わりにスティーブン・ソウザを手に入れた。去年のダイヤモンドバックスも興味深いチームだったが、去年と同じくらい、もしくはそれ以上の結果を残すのも彼らにとっては容易だろう。番狂わせを起こせるチームは沢山いる。しかし、強豪チームの顔ぶれは一定している。クリーブランドは絶対に外さない。若い才能が集まり、コーリー・クルーバーが投げているいるからだ。

SN:解説者としてYESにテレビ出演するのは好きですか?

DC:毎年、少しずつ好きになっている。タイミングについて、段々とわかってくる。いつ発言すべきか、いつ発言しないべきかだけでなく、視聴者が何を聞きたいか理解が深まってくる。私は数字に興味がある。数字は少し扱いにくいことがあるが、ポイントはオンエアに載せる際にいかに噛み砕けるかだ。私はバランスを保つことが大切だと思っている。新しい測定基準を紹介する時と、それを避けるべき時とね。

〈デビッド・コーン 公式ツイッター〉
言っておく。タイラー・ウェイドは侮れないぞ。

SN:時代を先取りして、セイバーメトリクスを用いるべきと提案していたのは本当ですか?

DC:統計や分析を扱わずにはいられないと思った。どこの会社でも必ず統計を扱うチームがいる。そうやってビジネスをして、様々な決断をしているからだ。統計や分析を全くしないということは、手抜きをしているとしか思えない。セイバーメトリクスの何が好きかというと、選手を総合的にとらえることに重点を置いていることだ。ピッチャーの本当の実力を見ることができる。援護率で稼げない選手は特にだ。人は勝敗数に騙されやすい。私自身の経験からも、そう言える。

守備や走塁に焦点を当てることもできる。長年これらは過小評価されてきた。簡単に見過ごすことができたからだ。私は野球選手をトータルで見ることが好きだ。チームが勝つためにあらゆる手段を取ることができる選手が好きだ。それが守備であっても、一塁からヒット一本でホームインできることであっても。そういうプレーはボックス・スコアには1得点としてしか表れない。そういう特性があっても、見落とされがちだ。

SN:今シーズンからアレックス・ロドリゲスがESPNの解説者を務めます。これまでスタジオ解説をしてきたAロッドは放送席でどのように活躍できると思いますか?

DC:アレックスは素晴らしい活躍をするだろう。さっき話したようなリズムとタイミングを理解するために、場数を踏むことが大切だ。彼はとてつもない実力の持ち主だ。知識も豊富。常に人一倍努力をする人間だ。野球中継を沢山見てきた。非常に人気がある。そんな彼は沢山のことに貢献できるだろう。テレビに出演する側の経験や勉強を重ねるだけだ。

SN:あなたは1試合で19人ものバッターから三振を奪いました。これはMLB歴代2位という記録です。2回もシーズン20勝を達成しています。ウィッフルボールかの如くボールを投げられるのはあなただけでした。”現代のデビッド・コーン”を例えるなら、誰だと思いますか?

DC:世代が違うから例えるのは難しいね。バッターも違えば、ストライクゾーンも違う。セイバーメトリクスが好きなもう一つの理由がそれだ…。ボールにうまくスピンをかけられる選手は何人かいる。スライダーを見る限り、ダルビッシュ有はその一人だ。映像を見ていると、大谷翔平もその一人だろう。変化球のバリエーションに富んでいること、スピンのかけ方を変えられること、色々なタイプのカーブを持っていることは、私を魅了する。リリーフ投手だったら、サイドスローを投げるダレン・オデイ。彼の変化球にかけられるスピン、そしてホームプレートの両側に投げられることは大きい。昔のピッチングコーチであれば、好ましくなかったかもしれない。変化球であれば、いかに下がり、いかに離れられるかが重要だった。プレートの両側に投げることは好まれなかった。右腕投手が右打者に対してインサイドを突くのも好まれなかった。それは私が常にやろうとしてきたことだった。だからピッチングコーチとはいつも喧嘩した。今は、多くのピッチャーがそういう手法を使っているのを目にする。とてもいいことだと思う。

SN:あなたは5つのチームでプレーしてきました。ヤンキース、メッツ、ブルージェイズ、ロイヤルズ、そしてレッドソックス。どのチームをあなたのチームだと捉えてますか?

DC:ワールドシリーズのタイトルを獲得すると、それも4回も、それがあなたのチームになる。ヤンキースでは4回も優勝パレードに参加することができた。忘れられない思い出だ。ロイヤルズにも愛着がある。私の生まれ故郷のチームでもあり、私が初めて所属したチームだ。メッツも大好きだ。成長し、ニューヨークへの愛情が芽生えた。メッツには6年間も所属していた。思い入れがあるのは、その2チームだ。それでも、ヤンキースでチャンピオンになれたことは、何よりも印象に残る出来事だった。

SN:あなたを見ているとマーク・メシエを思い出します。ニューヨークに来て、チャンピオンになり、その後ニューヨークを離れることはなかった。ニューヨークにはすっかり夢中になってしまいましたか?

DC:もう30年もマンハッタンに住んでいる…。カンザスシティで生まれ育った子供として、こうなるとは夢にも思わなかった。マイナーリーグや高校にいた頃は、西海岸に行き着くことは想像していたかもしれない。でも運命は私を東海岸に導いた。後戻りはしなかった。

SN:MLB史上、最も不均等なトレードの中心人物だったという意識はありましたか?

DC:それはどうかな。野球に分析論が用いられる、ずっと前のことだったから。今なら、6年契約の若い先発ピッチャーが控えのキャッチャーとトレードされることはありえないだろう。現代だったら絶対に見ないトレードだ。アメリカ野球殿堂入りのジョン・シャーホルツが当時ロイヤルズの監督を務めていた。彼は、キャリアの中で唯一失敗したトレードだったと認めている。しかも、生まれ故郷がキャンザスシティの若手選手だった。でもロイヤルズにはキャッチャーが必要だった。それがチームの問題を解決できると思っていたんだ。エド・ハーンも彼自身の問題を抱えていた。ケガを抱えていた。彼は運が悪かった。

〈ESPNのマイケル・ケイ公式ツイッター〉
YESのクルーはインタビューの準備万端です。

SN:ミレニアル世代選手があなたのことを選手としてよりも、解説者として認識していることについてどう思いますか?

DC:近頃よくあることだ。子供たちはGoogleで検索して、インターネットで調べないといけないくらいだ。でも、それが事実なのだろう。現場に行っても、しばらく正体がばれずにいることができる。CC・サバシアみたいなベテランと出会わなければね。若い選手に対してであれば、自己紹介してから話さないといけないこともある。そしたら、ハッと気づく人もいる。後で調べる人もいる。いい年になるに連れて、無名性を感じることも多くなってきた。

原文:The Empire Strikes Back: YES Network's David Cone talks hype around Yankees
翻訳:Go Watanabe

Michael McCarthy

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Michael McCarthy is an award-winning journalist who covers Sports Meda, Business and Marketing for Sporting News. McCarthy’s work has appeared in The New York Times, Sports Illustrated, The Wall Street Journal, CNBC.com, Newsday, USA TODAY and Adweek.