近年MLBでホームランが増加しているのはなぜ? 学者グループが調査報告

Marc Lancaster

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2017年夏、MLBは、物理学者、数学者、工学者、統計学者のグループに、近年ホームランが増加している真相の解明を委任した。

数カ月が経ち、10人から成るその委員会は結論を公表した。バットをよりうまく運ぶことにつながる何らかの違いがボールそのものにあるということは確かなのだが、なぜそうなるのかは定かではないという。

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科学者たちは、天候や、選手たちの行動の変化を含む多数の要因を研究したが、その研究の焦点はボール自体にあった。投手陣からは長い間、ボールに“ドーピング”が施されているのではという疑惑や、縫い目の違うボールが使用されているのでは、といった不平不満が出ていたのだが、今回の調査ではそれらに対するいかなる証拠も得ることができなかった。以下が説明である。

委員会は2015年シーズン以来続くホームランの増加は、少なくとも一部は野球ボールの空気力学的な性質の変化(つまり、打たれた状態の変化というよりは、打たれた時の空気抵抗の減少)が原因であると結論付けた。この結論は、科学者たちが開発した物理学ベースのモデルであるスタットキャストデータの分析と、本塁打率が上がる前と後の試合で使われたボールの臨床検査によって裏付けられている。委員会はホームランの増加を明らかにすると思われたボールの大きさや重さ、縫い目の高さ、ボールのCOR(反発係数)に何の違いも発見しなかった。2015年シーズンから何が空気抵抗の減少を引き起こしているのか正確な原因を決定的に証明することはできなかったが、2015年シーズン以来、野球ボールの中のゴム素材の芯がより中心に置かれており、そのシーズン以降のボールは、回転している間、以前より球形になっているかもしれないという仮説を提示した。

何よりも、意図的であってもなくても、材料や製造過程に変化がないことが、ホームラン量産の重要な役割を担っているのだとも委員会は結論付けた。

問題となっているホームランの急増は、直近の2シーズンの統計データにはっきりと表れている。2008年から2015年にかけては、打球の3.55パーセントがホームランになっていて、年ごとに見ると、どの年も3.2と3.8パーセントの間にある。しかし、2016年ではその数が4.4パーセントに急増していて、2017年では4.8パーセントであった。そのことが、試合における最も基本的な一つの道具であるボールについて、実質的な変化があったのかどうかを調査するきっかけとなった。

委員会は、MLBで使用するボールを製造し、新しいボールと試合で使用したボールの実験検査を行っている、コスタリカの施設を訪れた。しかし、そこでの実験ではボールの反発力が増加している証拠は見つからなかった。

委員会はまた、試合中の計測が当たり前となった昨今、スタットキャスト時代の打者たちが、打球の発射速度または発射角度において、より大きな効果を上げようと努力をする中で、彼らのスイングを変えたかどうかについても調査したが、「打者の動作がホームランの増加の一因であるという主張を支持する証拠がほとんどない」ということが分かっただけだった。

原因の分析について、委員会が「部分的な成功」に唯一達したのは、空気力学的側面だった。スタットキャストのデータの検査で「ホームランの急増が、発射条件の変化ではなく、主に、打球の発射条件(打球の発射速度、発射角度、発射方向)がもたらした“飛距離”の伸びによる」ということを示した。検査によって、飛距離の伸びはボールの抵抗が減少したことが原因であるという可能性が出てきたが、ボールの仕様自体が変わっていないのにそのような結果になった理由について、科学者たちは依然として答えが出せないでいる。

最終的な結論が出ないため、コミッショナーのロブ・マンフレッドは、MLBが今後もいくつかの方法で調査を続けることを発表した。それには、2019年のシーズンから、30球場すべてで、ボールのコンディションを一定にするための保湿箱を使用することを目指すことも含まれる。現在すでに保湿箱を使用しているのは、アリゾナ・ダイヤモンドバックスとコロラド・ロッキーズの球場だけである。

「委員会がこの重要な問題に多大な労力を費やしてくれていることに感謝している」とマンフレッドは報道機関に語った。「委員会の調査結果をふまえて、私は委員会の助言を直ちに受け入れるし、彼らがこの分野で引き続き方向を示してくれることを期待している」

委員会の84ページからなる報告書の全文はこちら

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原文:MLB study finds baseballs have changed since 2015, but isn't sure how

翻訳:日本映像翻訳アカデミー

Marc Lancaster

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Marc Lancaster joined The Sporting News in 2022 after working closely with TSN for five years as an editor for the company now known as Stats Perform. He previously worked as an editor at The Washington Times, AOL’s FanHouse.com and the old CNNSportsIllustrated.com, and as a beat writer covering the Tampa Bay Rays, Cincinnati Reds, and University of Georgia football and women’s basketball. A Georgia graduate, he has been a Baseball Hall of Fame voter since 2013.