絶好調のG・コール、そのきっかけはアストロズの哲学にあり

Jared Wyllys

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ヒューストン・アストロズの右腕、ゲリット・コールは元々優れた投手だった。ドラフト1巡目で指名されたことが2回もあるほどだ。

2008年にはニューヨーク・ヤンキースが全体28位で指名。そして、2011年にはピッツバーグ・パイレーツが全体1位で彼を指名した。メジャーに昇格した2013年には、パイレーツはこの22歳のルーキーをナショナルリーグのプレーオフ地区シリーズで2回先発させた。ピッツバーグでの最初の5シーズン、コールは常にチーム最高の先発投手の1人だった。

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だが、彼は1月にアストロズにトレードされて以降、もっと優れた投手になる方法を見つけた。

今シーズンの4回の登板で、コールは4回ともクオリティースタート。28イニングを投げて、リーグトップの41奪三振をマークし、相手打者の打率は昨シーズンよりも低い。そして打者の空振り率も、昨年はもちろん、彼の最高のシーズンだった2015年よりも高い。

コールによると、この改善はチームの哲学のおかげに他ならないと言う。昨冬、トレードのニュースが出てから数時間以内に、コールは新たなチームメートのジャスティン・バーランダーとダラス・カイクルから連絡をもらい、3人はすぐに投球の技術について話した。

「僕たちは配球と攻め方について話したんだ」とコールはスポーティングニュースに言う。「僕たちの読みは似ていて、求めているものもわかっている。一球一球の意味を理解しているし、そこからどう攻めるかをそれぞれの視点で理解しているんだ」

コールは、バーランダーとカイクルからの情報は既に役に立っていると言う。“失投しても構わない”という共通のメッセージが根底にあり、セオリーに反する手法も容認するヒューストンの投球に対する考え方を彼は評価した。

コールは、外角低めにストレートを投げるつもりで、真ん中に行ってしまっても気にしなくていいことを学んだと言う。

「僕にとって大きなことだった。そこまでピンポイントで狙わなくてもいいということが、攻めの投球に専念させてくれたんだ」とコールは言う。

もちろん、ストレートを繰り返しストライクゾーン高めに投げれば、彼がここまで投げてきた7イニングのクオリティースタートではなく、短いイニングでの降板を助長することになる。しかし、彼は気持ちが解放されたことにより、更に優れた投手になった。彼は、失投を恐れるのではなく、自分のボールを信じることを学んでいると言う。

コールの4回の先発の内、捕手を3回務めたブライアン・マッキャンは、今のコールが投げる全てのボールは、いやらしくて、攻めることへの解放感が更に打ちづらくしていると言う。

「彼は打者の弱点に投げ込むあらゆる球種を持っている。そして、今の投球内容であれば、失投もない」とマッキャンは言う。

無理にピンポイントで狙わないことも功を奏している。マッキャンいわく、コールはゾーンのどこに対する投球にも自信を持っていると言い、結果的にコールの奪三振率は40パーセント弱にまで上昇している。精度を求める気持ちを追い払ったおかげで、ここまでの与四球率も5.8パーセントにまで下落している。これは彼がサイ・ヤング賞に匹敵する成績を残した2015年シーズンと同じくらい低い。

アストロズのA.J.ヒンチ監督は、コールはアメリカンリーグで過去最高の投手だと考えている。そして、その大きな理由は、彼とヒューストンの他の先発投手陣との関係にあるという。

この新しい先発投手について最も印象的だったところはどこかと聞かれたヒンチ監督は、「彼の、変化を受け入れる寛容さがその1つです」と説明した。「彼の安定感や投球に対する考え方、そして球種の使い方もそうですが、最終的に重要なのはパフォーマンスです。これまで彼よりも優れた選手がいたと主張するのは難しいですよ」

サイ・ヤング賞は4回の先発だけで決まるものではないが、コールはシーズン最初のひと月で候補に名乗りを上げようとしている。ここまでコールは、球種選択を多少修正しながら、打者を無力化している。これまでの年よりもスライダーを多く、ストレートを少なく投げているのだ。だが、彼は、それは意図的なものではないと言う。彼は球種の比率など追い求めていないのだ。コールは、バーランダーやカイクルと話したおかげで、スピードの変化や、変化球のお膳立てとして投げるストレートの高さなどについて、もっと考えるようになったと言う。

マッキャンは、先発投手陣には、お互いの投球を見て、フォームや配球の考え方を共有するルーティンができていると言う。彼らの間で絶え間なく情報が流れていて、それは彼らの親密さから生まれているものだと、この捕手は説明する。

コールは自分の能力は今までと変わっていないし、やっていることも全く変わっていないと思っている。手品ではないのだから、球の回転をより大きくしようと努力しているわけでもなく、投球を微調整しているわけでもない。彼の体調が良いのはトレーナーのおかげだと彼は言い、それが大きな違いを生み出しているとはいえ、コールはアストロズでの新しい考え方が変化の最大の要因だと強調した。

「この変化が、僕の能力の変化によるものに見えるかもしれないけど、考え方が変わったことが関係していると思う」

パイレーツがだめだったわけではない、とコールは必ず付け加える。しかし、2015年のサイ・ヤング賞投手で、その年のポストシーズンでは先発投手として4勝したカイクルと、サイ・ヤング賞の票を獲得したシーズンが8回あり、ポストシーズンで135イニングを投げたバーランダーの優れた投球能力は並外れていて、彼らのおかげだとコールは言う。

元々優れた投手であったコールは、今、さらに伸びようとしている。今までで最高のシーズンとするべく、彼は挑戦を続けている。

原文:The philosophy behind Gerrit Cole's hot start for Astros: 'It's OK to miss'

翻訳:日本映像翻訳アカデミー

Jared Wyllys