米野球記者が行く 東海岸から西海岸へ、ワールドシリーズの旅【後編】

Ryan Fagan

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3082マイル北東にあるケープの海岸で、私は厚着をし、手袋をつけ、軽いスキーキャップをかぶっていた。木々は赤と黄色に美しく染まっていた。サンタモニカ・ピアでは、私は短パン、Tシャツ姿だった。海は青く美しかった。

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フィッシング・デッキでクウェントンに出会う前、私はドジャースタジアムから17.3マイル離れた賑やかな埠頭(もし10時頃に行くと、車で1時間以上かかる)、そしてサンタモニカのビーチを歩き回っていた。正直に言うと、ドジャースの記念品はあまり見かけなかったし、ドジャースのユニフォームやTシャツを着た人も多くなかった。私はヴェニス・ビーチのボードウォークにも行ったが、同様だった。

私は埠頭で、クレイトン・カーショーのユニフォームを着たひとりの男性に、ドジャースがワールドシリーズで0勝2敗から逆転できると思うかを訪ねた。「願わくばね」と彼は言った。その声には、自信よりも失望が色濃く滲んでいた。

クウェントンと私は、ドジャースについて話し始めた。

「ドジャースはボストンでダメダメだったけど、これから快適なホームでの試合だし、今日は勝ちます」彼は自信満々で言った。「ドジャースはいつも、出だしが悪いけど、最後には勝つのです。見ていて下さい。ドジャースは今日勝って、それからここで、もう一試合負けるでしょう。その後は、勝ちます。信じて下さい。私はドジャースを知っています」。

彼は惜しかった。ドジャースは第3戦を、延長18回の長期戦の末に勝利し、次の試合を落とした。彼が予想した通り。私はクウェントンのことを預言者なのではないかと思い始めていたが、レッドソックスが第5戦を制し、シリーズは終わった。

残念。

「私はよくゴスペルのコンサートを見ます。ドジャースは、私の最もお気に入りのチームのひとつです。ご存知の通り、私たちはこの街で今、フットボールファンでもあるのです」クウェントンは言った。そこで彼は、急に止まり、フィッシング・ロッドを引っ張った。「オー、引っかかったぞ!」

ロッドはしかし、すぐに振動が止まってしまった。

「いや、大したことなかった」彼は言った。

海中には、ひれ足の動物もいた。それはアシカで、クウェントンはサミーと呼んでいた。彼はケープのグレイシールよりも遥かに社交的だった。サミーは大昔に、自ら魚を捕獲するよりも、観光客に向かって吠えた方が容易に食べ物にありつけると気付いたのだ。彼は首周りに傷跡があり、左目を失っていた。

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観光客に食べ物をおねだりするサミー(撮影:ライアン・ファガン)

サミーには、ルーティーンがあった。彼はケガをしているフリをして、ゆっくりと泳ぐ。釣り人が大声を出して、リールを巻き上げるまで。すると、サミーは急に俊敏な動きをして、釣り上げられた魚を奪おうとする。私がクウェントンと話しているとき、隣の男が声を上げて、小さなスパニッシュ・マカレルを釣り上げた。サミーはそれを奪おうとしたが、釣り人が争奪戦に勝利した。

その小さな魚には、サミーの歯による大きな傷跡があった。クウェントンはその魚をエサとして使うことを提案し、埠頭にいる人々に配り始めた。シェアの精神で成り立っているコミュニティなのだ。

クウェントンは10分ほどで戻ってきた。

「今日の試合は何時に始まるんですか? チケットがあったらなあ」彼は言った。数百フィートほど離れたところで、イルカたちが泳いでいるのを見つめながら。そして彼の注意は、水の中へと向かった。「潮が高すぎる。もう岩が見えないよ」

そして彼は笑った。「オー、来たぞ」

◆◆◆

私は第3戦を見るためドジャースタジアムに行かねばならなかったので、クウェントンが何匹のスパニッシュ・マカレルを釣り上げるか、数え続けることはできなかった。

そしてホット・ストーブ・サロンは、オフシーズンの渋滞がない時期で、あるいは私が聞いた限り、シーズン中の災害がない時期でも、フェンウェイパークから1時間半の場所にあった。だから、私は翌日もホット・ストーブ・サロンに再び車を走らせて、ゲイブや新しい友人たちと、ブライス・ハーパーやマニー・マチャドの移籍先について、あるいはレッドソックスが今オフに画策しそうなトレードについて議論することはできなかった。

しかし、そういうことが起きていた、と知ることができて良かった。プレーオフ期間中の球場だけでなく、国中で野球の話がされていることを知れたのは、良かった。

そして、野球と生涯つながりを持ち続ける人々との会話に参加することは、いつだって素晴らしい。

(完)

原文:World Series shows baseball love runs deep, from Cape Cod to Santa Monica Pier

翻訳:Muneharu Uchino


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Ryan Fagan, the national MLB writer for The Sporting News, has been a Baseball Hall of Fame voter since 2016. He also dabbles in college hoops and other sports. And, yeah, he has way too many junk wax baseball cards.