米野球記者が行く 東海岸から西海岸へ、ワールドシリーズの旅【中編】

Ryan Fagan

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エントランス近くのディスプレイケースには、スポーティングニュースの古い出版物が置かれていた。パーフェクトだ。それは「スポーティングニュース・ドープ・ブック」と呼ばれるもので、あなたが想像しているものとは違う。ヨギ・ベラが表紙を飾った、1952年に発行されたこの本において、「ドープ」とは「内部情報」を意味していた。

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私はコッド・タコスを注文し(他に選択肢はあるかい?)、サロンの中を歩き回り、壁に飾られた素晴らしい野球の記念品を写真に収めた。

ホット・ストーブ・サロンは、ゲイブ・レイドナーと彼の父、ロンがずっと開きたかったバーだった。

「私はここで生まれて、私の父は海岸の警備員でした。だから私は、人生最初の20年間をほぼ、この辺りで過ごしました」ゲイブは私に語った。「兵役を終えて、ケープに戻って来たとき、私は何かやることを探していました。そこで、私は父といつも、小さなバーを開く話をしていたのを思い出しました。それが、この店を始めた経緯です」。

ゲイブとロンは2005年春にホット・ストーブ・サロンをオープンした。レッドソックスファンならご存知の通り、それは彼らの愛するチームがようやく呪いを解き、ベーブ・ルースがヤンキースに放出されてから初めてワールドシリーズを制した瞬間から僅か数か月後のことだった。

私は、1960年代のスポーティングニュースが何冊か、壁にかかっているのを目にした。こうした古い号を見ると、私が幸運にも野球記者として生計を立てている事実を思い出すし、さらには米国の国民的娯楽に深く関わってきた会社のために働けていることを嬉しく思う。ゲイブによると、これらのコレクションのいくつかはイーベイで手に入れ、いくつかは地元の歴史関連施設から借りたもので、またいくつかは人々から寄付されたものだという。

insert 2ホット・ストーブ・サロンの壁に飾られた、ふたつの素晴らしい野球記念品(撮影:ライアン・ファガン)

「ここケープにいると、全米から観光客が集まって来ます」ゲイブは言った。「人々はここで、野球の歴史を目にすることを楽しんでくれます。贔屓チームのアイテムを探したり、あるいはただ物色したり」。

しかし、ここケープにおいて野球とは、単にレッドソックスの存在だけではない。この地域は、大学野球におけるトップ選手たちのショーケースとなるケープ・コッド・リーグを毎年、夏に開催しているのだ。それは大学生のリーグとしては数少ない木製バットを使用するリーグであり、プロを目指す選手たちの登竜門として評価を得ている。リーグの歴史は1885年に遡る。現在は6月半ばから8月半ばにかけて、10チームが各44試合を戦う。

「すごいことです」ゲイブは言った。「全て大学のチームなんです。このリーグに参加するのは特別なことです。木製バットを使用するリーグであることが、良いですね。多くのメジャーリーガーが、ケープ・リーグでプレーしました。ジャッキー・ブラッドリーのように、ケープ・リーグでプレーしたレッドソックスの現役選手もいます。クリス・セールもそうです。クールでしょう」。

そして、この場所でホット・ストーブ・サロンを運営することについて、もうひとつクールなことと言えば?

「毎日、野球の話ができます」ゲイブは言った。

◆◆◆

クウェントン・ウィリアムズは、自身の誕生日を、世界で最も好きな場所のひとつで過ごしていた。サンタモニカ・ピアのフィッシング・デッキ、その端っこだ。

彼はドジャーブルーのシャツを着ていたので、私は彼に、ドジャースファンですか、と尋ねた。彼は誇らしげに、今から53年前、ドジャースタジアムから数マイルしか離れていないロサンゼルス・カウンティー・ジェネラル・ホスピタルで生まれたことを語った。ワールドシリーズ第3戦がドジャースタジアムで行われる、数時間前のことだ。

クウェントンは、デッキにいる全員を知っている。少なくとも、数分経てば、全員が彼を知っているような気になる。彼はスパニッシュ・マカレル(さわら)、あるいはエサに噛みついたあらゆる魚介類を釣り上げる。彼によると、数日前にはあまりにもスパニッシュ・マカレルがたくさんいて、エサを次々と奪っては逃げていくため大変だったという。今朝はずっと穏やかだったが、良い波が来ているので、やがてすぐに良いことが起こる、と彼は言った。

ドジャーブルーのシャツを着たクウェントンは、フィッシング・デッキを歩き回り、地元の人々と話しながら釣り針にエサをつけ、観光客と釣りの話をしていた。私が訪れた日は、彼が壁の隅にもたれて行う釣りの準備は、彼にとって優先順位の高いことではなかった。クウェントンは、その場にいた全員と自身の誕生日を祝っていた。私もそのデッキで、彼と共に日光を浴びることができて幸せだった。

insert 3

クウェントンと、彼が釣ったスパニッシュ・マカレル(撮影:ライアン・ファガン)

後編へ続く)


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Ryan Fagan, the national MLB writer for The Sporting News, has been a Baseball Hall of Fame voter since 2016. He also dabbles in college hoops and other sports. And, yeah, he has way too many junk wax baseball cards.