米野球殿堂館長に聞く:殿堂入り選手に求められる“人格”とは?【後編】

John McMurray

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SN:あなたの意見では、人格条項は選手それぞれのキャリアにのみ適用されるのでしょうか? それとも野球以外の私生活や引退後の行いにまで延長して適用されるのでしょうか?

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JI:それは投票者自身が望むように定義することができます。

SN:現在、選手たちが候補者に残れるのは15年ではなく10年です。一部の人は、PED使用疑惑のある人物が候補に残る期間を少なくするため、または選出プロセスにおける記者の役割を弱めるためにこの変更が加えられたと主張しています。この変更の理由を説明してください。

JI:この変更は2014年に行われ、2015年から施行されました。変更の理由は、候補となって10年目より後に選出された選手が非常に少ないという傾向が1980年以降にあったからです。実際、1980年以降で10年目より後に選出された選手は数名です。そこで思い立った考えが、選出の可能性が極めて低い5年間に選手たちを思い悩ませるのではなく、この変更によってベテランズ委員会への選出プロセスに早く参加できるのではないかというものでした。また、この変更により候補者を少なく保つことができ、候補者をより現代的なグループにすることを可能にしたのです。

SN:これまでの数十年間、記者たちは選手とファンとの間の連絡役となっていたかもしれませんが、もはやこのスポーツの門番ではありません。野球の変化に適応するため、そして選出プロセスを多様化するためにも、野球殿堂の投票においてファンや選手が補足的な役割を果たすべきだと思いますか?

JI:野球殿堂の投票に参加する有権者の一員として考慮の余地がある団体は多くあるように思います。いまだに球界と根強い関係を持つ記者たちですが、彼らと我々がうまくいっているのは、彼らが試合を追いかけるのに費やす時間と同様に、彼らの独立性が起因しています。記者たちは今でも投票権を得るのに10年間野球を取材しなくてはいけません。多くの試合を調査し、観戦する必要があります。記者たちは新聞社やメディア支局に雇われているので、独立性と専門性を有しています。また、彼らはグループとして編成されています。歴史を振り返ってみてください。直近の投票でさえも記者たちはすばらしい仕事をしていたと我々は考えています。

放送局はたいていの場合、年間全162試合に目を通しており、間違いなく投票権を与えるのに賛成の論を唱えることができるでしょう。しかし、放送局と聞いて思い浮かぶのは、彼らの4分の3がどこかの球団の経営下にあるということでしょう。放送局が独立性を持ち個々に活動できないと言っているわけではありません。しかし、チームに雇われているとなれば、そのような(そのチームを贔屓しているという)認識も生まれます。

ファンの方々も当然ながらすばらしく、野球を愛しています。我々も皆ファンの一人です。しかし結局のところ、その役割を任せるグループとして我々は記者たちに非常に満足しているのです。

SN:2013年に野球殿堂に選出された選手の中にご存命の方は一人もいませんでした。この問題を将来的に解決するために、毎年生きている人物の中で最も票を獲得した2選手を75パーセントの投票率に達さなくても選出するといったようなルールをこれまでに考えたことはありますか?

JI:我々は2013年に3名を迎え入れましたが、彼らはすでに亡くなられていました。これによってクーパーズタウンと野球殿堂もビジネス的に難しい週末を迎えることになりました。しかし、我々は選出が純粋であることを愛しています。もし誰も選出されなかったとしてもその年のみ基準を変更するといったことには関心がありません。我々はこの一貫性を好んでいるのです。殿堂入りすることは難しくあるべきだと我々は考えています。そして、ごく稀に生人が選出されないという2013年のような事態が起こった際には、それまでのビジネスプランをぐっとこらえて順応する必要があります。

SN:殿堂入りを果たしたジョー・モーガンは公開書簡にて、彼と多くの殿堂入り選手がPED使用者は決して殿堂入りすべきではないと考えていると発表しました。殿堂入りメンバーによって表明されたこのような断固とした意見を聞いて、どれほどの重みを感じましたか?

JI:そのメンバーたちはかつて球界でプレーしていました。(監督や審判、球団の重役もいます)しかし、概して彼らは選手です。今回のように選手が集い、彼らの考えを知らせたいと思ったからこそ、大きく力強い声明が出されました。彼らはそれぞれがかつてユニフォームを来て戦った人たちです。彼らは野球をプレーするために必要なことを理解しており、不公平な競争条件とみなすであろうものに対して鋭い感覚を持っているのです。

我々の立場からすると、PED使用疑惑のある選手や使用経験のある選手が選出の対象になるかどうかの判断は記者たちに任せることで満足しています。PEDに関してはグレーゾーンとなっています。不公平な競争条件を好む人などはおらず、野球殿堂も同じ考えです。我々はスポーツにおける平等と公平を信じています。しかし、多くのグレーゾーンがあることも事実です。記者たちは選手の価値を判断するために、通算成績を見たり人格条項を利用したりして優れた仕事をしてきています。

SN:投票者たちに投票用紙を公開するよう強く要求し、投票の透明性を求める動きが続いています。野球殿堂の視点からして、要求に応じて投票用紙を公にすることは肯定的な動きとなりますか?

JI:透明性へ向けての作業は長い間行われてきましたし、進んできました。記者たちが我々のところに来て、透明性を求める規則を施行してほしいと持ちかけてきましたが、我々はその規則を適用することには抵抗がありました。理事会は幹部陣が感じたのと同様に、投票者がどう票を投じたかを明かしたくないのならそれでいいと感じたのです。その権利はある、と。結局、票を明かしたい人たちがいるので、我々はそれについては全く構わないし、それを望まない人に関しては彼らのプライバシーを尊重します。

SN:殿堂入りしたメンバーで投票の100%を得た人物はこれまでいません。最も優れた選手であるウィリー・メイズが全ての票を得なかったことを多くのファンは信じられません。最高の選手たちが満票を獲得して選出されないことについてどう説明されますか?

JI:たとえば400人もしくは500人を集めて、世界の何かしらのことについて質問すると、私に言わせれば、満票一致という可能性はゼロです。なぜ球界の偉大なレジェンドたちが100パーセントの得票率を得なかったか私には全く理解できませんが、言ってみれば、それはこの過程が民主的であるということを示しています。何も強要はされておらず、人々は自分自身の意見を言う権利があるということです。私は満票一致に賛同しないかもしれませんが、その過程は民主的だということになります。

SN:これから数年かけて殿堂入りの投票過程に関して何らかの変化を見込んでいますか?

JI:絶対にないとは言いません。我々は常に、記者たちとベテランズ委員会の両方によって投票のプロセスを見直しているからです。我々自身が一番納得できる場所にたどり着くためにここ10年ほどで多くを変えてきました。今日こうして座っていますが、記者の票に納得していますし、同様にベテランズ委員会のプロセスも正しい方向で整っていると非常に満足しています。すぐに何か変えることは見込んでいません。

(完)

原文:Baseball Hall of Fame president Jeff Idelson talks character clause, PED users and ballot changes

翻訳:日本映像翻訳アカデミー


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