米記者が語る大谷翔平【後編】成功を予言するチームメート

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覚えているかな? ドジャースの高名なアナウンサーのビン・スカリーと、その年の1月まで大統領だったロナルド・レーガンが1989年のオールスター戦のテレビブースに一緒にいた。ふたりはロイヤルズの外野手と、ロサンゼルス・レイダースのランニングバックという二刀流のジャクソンについて語っていた。このオールスターはジャクソンが最も輝いた舞台になった。

レーガンは「人間がここまでは…」と言うと、ジャクソンはリック・ラッシェルのシンカーをたたいて中越えの初回先頭打者本塁打とした。「ボー・ジャクソンから強烈なあいさつ代わりの一発です」とスカリーは叫んだ。

この試合でジャクソンのチームメートだったグビザは、いい角度からこの本塁打を見ていた。「ブルペンにいて、打球がセンターのフェンスを越えて行くのを見た。思わず“ワオッ”という声をあげてしまった」という。

バレンズエラや野茂、イチローにジャクソンと同じ要素を見出すとすれば、それはオールスターでの活躍ということになろう。バレンズエラは1981年の主役だった。野茂は1995年、前半戦で6勝1敗、防御率1.99の成績を残し、オールスターでナ・リーグの先発投手に指名された。イチローは2001年、本拠地セーフコ・フィールドの地元ファンの前で安打と盗塁を記録した。次は大谷がオールスターで全米にその名を高めるのだろうか。ホームラン・ダービーで優勝して、試合で勝利投手になる姿を想像してみようではないか。

「そうなったら大きな力になる。もう彼は力強いけれど、もしオールスターに出場したら、みんなにこう言おう。見逃すな、とね」。

グビザはオールスター後に起こるかもしれない事態を想像している。1989年のオールスターを終えて、ジャクソンと一緒に飛行機に乗っていたときは、まるでミック・ジャガーとローリングストーンズのメンバーと一緒なのではないかと思ったほどだったと話してくれた。

「後半戦に備えてニューヨークに移動したのだが、機中でパイロットたちがコックピットから客室に来てボーにサインを求めた。”おいおい、この飛行機はどうなっているんだい? ちゃんと操縦してくれよ”と思ったよ」(グビザ)。

グビザはオークランドでの大谷の初登板のときの話もしてくれた。大谷はトラウトら他の選手とともにバスに向かって歩いた。そこで大谷が沈黙を破った。

「翔平が立ち上がると”イッツ・ショータイム”の声。するとみんな手を叩いて笑い、大いに盛り上がった」とグビザは話した。

◇ ◇ ◇

大谷の存在はクラブハウスにどのような影響を及ぼしているのだろうか。

「もしあなたがマイク・トラウトだったら、満足して過ごせるだろう。なぜなら一日中取材に答えないでプレーしていられるからだ」とグビザは言う。

確かにトラウトはメジャーでトップの9本塁打をマークし、21日のジャイアンツ戦で勝ち越しの本塁打を放って連敗を4で止めてみせた。

「長いシーズンにはいい時も悪い時もある。今季、エンゼルスはいいスタートを切ることができた。ここ4試合は苦戦したけれど、いいチームは必ずやり返すものだ。今日はそれができた」とトラウトは話した。

トラウトはここまでMVPレベルの活躍を演じている。将来の殿堂選手アルバート・プホルスは通算3000安打を目前にしている。打線にはさらに新戦力のイアン・キンズラーやザック・コザートといったベテランがいる。大谷は22日、この試合を休養のため欠場したプホルスに代わって4番に座った。大谷はまた、防御率3.46で26回を投げて35三振を奪っているギャレット・リチャーズが柱となっている先発投手陣の一員でもある。エンゼルスが狙うのは2014年以来のプレーオフ進出。大谷はチームを動揺させてはいない。

「彼は最高に落ち着いたルーキーだ」とリリーバーのケイナン・ミドルトンは言った。

山あり谷ありだろうが、グビザは学習能力の高さを理由に大谷の成功を予言する。例えば、大谷はノーステップの打法を開幕までの2日間で身に付けてしまった。

「スプリングトレーニングで多くの試合を見てきたが、彼はとても優れていて他の選手とは比べものにならない。ふつうは急な修正はしないものだが、彼は楽々と取り入れてしまった。彼はいま何をすべきかを知っている」。

大谷が高く翔ぶ姿を見たければ、エンゼルスは優勝争いから脱落してはならない。これが「フェルナンド・マニア」の違うところだ。1981年のドジャースはワールドシリーズで優勝したのだ。

「フェルナンドは、あの強いチームにあって重要なパーツだった。あの年のドジャースは、能力の高いチームだった。フェルナンドは先発ローテーションの中心であり、最高のピッチングを続けた」とソーシア監督は言って、話を大谷に戻した。「いま翔平を擁して今季を素晴らしいシーズンにしようと努力している。翔平は貴重な役目を果たしてくれるはずだ。もっともっとやらなければいけない。ひとりの力では足りない。1981年のドジャースでは多くの選手がそれぞれ最高のシーズンを過ごし、そのなかにフェルナンドがいた。ひとりの力ではないんだ」とソーシア監督は強調した。

われわれはしばらくの間、最高のスーパースターとして日本をとりこにした選手についてもっと学ぶことになるだろう。

つねにメディアに囲まれても謙虚な態度を崩さないことを聞かれたとき、大谷はわれわれにとって相変わらずミステリーだった。水原通訳の言葉は「あまり考えたことはない。自分のすることを学ぼうとするだけだ」。

もっと考える。もっと学ぶ。もっと二刀流で成功する。この道を進んでいけば、三塁側ダッグアウトの前に記者やカメラマンはもっと増えることだろう。

「ショータイム」は最高の舞台でクローズアップされることだろう。

原文:The Shohei Ohtani experience will get bigger, better as spotlight grows
翻訳:Hirokazu Higuchi