ワシントン・ナショナルズで再び見事なシーズンを過ごしたマックス・シャーザーが、15日に通算3度目となるサイ・ヤング賞を受賞した。デトロイト・タイガース時代の2013年に続き、ナショナル・リーグでは2度目となる受賞だ。
そしてこれは、彼にとって最後のサイ・ヤング賞にはならないかもしれない。
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私はことしの投票を担当した。トップに選んだのはシャーザーだ。ナショナルズのエースを選んだ27票のひとつは私のものだった。
こちらは、選ぶうえで助けとなった作業シートだ。スプレッドシートにただスタッツを埋めていくよりも、各選手の統計を書いていくプロセスは助けになる。そして真の候補になり得るチャンスはなかったであろう投手たちを含めることで、今後のトップクラスの投手を生む助けともなる。
シャーザーとクレイトン・カーショウを比べるのと、シャーザーとジミー・ネルソンやカルロス・マルティネスを比べるのは別物だろう。とにかく、作業シートはこちらだ。
The very complicated worksheets that helped me fill out my NL Cy Young ballot. pic.twitter.com/YcfAcetrtm
— Ryan Fagan (@ryanfagan) 2017年11月16日
投票プロセスに関していくつか思うことも…。
シャーザーは見事だった
複雑なプロセスに取り組み始めたとき、私は僅差でシャーザーをトップで選ぶことになると予期した。実際にはカーショウに大差がついたことに驚いている。WAR(Baseball-Reference版とFanGraphs版の双方)、FIP、平均被安打、平均奪三振、平均被本塁打、WHIP、対戦相手の打率、対戦相手のOPS、WPA、総奪三振数と、ほとんどのカテゴリーで、ナショナルズの右腕はロサンゼルス・ドジャースの左腕を上回った。
そして、シャーザーはカーショウよりも25回2/3イニング多く投げた。それらの重要なイニングには価値がある。私は選出が難しくなること、微妙な違いで決断することになることを予期していた。だが、楽にシャーザーをトップに選べるという、うれしいサプライズを感じたのだ。
カーショウがシャーザーに迫る以上にカーショウに迫ったストラスバーグ
2017年のスティーブン・ストラスバーグがいかに良かったのか、みんな理解していないと思う。3度目のサイ・ヤング賞を受賞したチームメイトの影に隠れ、近年のシーズンでは故障者リスト入りすることが多かった(2015年から16年にかけて先発は47試合)。だが、2017年のストラスバーグは、先発の機会を多く失っていたにもかかわらず、ベストシーズンを過ごしたのだ。Baseball-Reference版WARは6.5と、それまでのベスト(3.5)からほぼ倍増。FanGraphs版WAR(5.6)も自己ベストだ(それまでは4.5)。平均奪三振(10.5)や被本塁打率(175回1/3で13本)の素晴らしさから、FIPはシャーザーやカーショウよりも良い数字となっている。
カーショウもいまだ見事
ここまではカーショウにとって痛手となる話だった。ただ私は、いまだ野球界最高の投手と考える選手を叩くことが目的ではないということを明確にしておきたい。ことしの彼が健康を保っていたら、通算4度目のサイ・ヤング賞を手にしていたかもしれない。防御率2.31はナ・リーグのトップ。それでいて、2012年以降で最低の数字だ。まさに常軌を逸している。カーショウは見事だ。
5番手のジレンマ
私にとって、シャーザー、カーショウ、ストラスバーグは明らかなトップ3だった。前回の投票時から順位は落ちたが、4番手にザック・グレインキーを選ぶのも楽だった(2015年の投票ではグレインキー、ジェイク・アリエータ、カーショウを選んだ)。5番手の候補に挙がった投手は3名。ロビー・レイ、ジオ・ゴンザレス、ケンリー・ジャンセンだ。そして選んだのはレイだった。平均奪三振12.1はナ・リーグで最多。ちなみに、ボストン・レッドソックスで素晴らしいシーズンを過ごしたクリス・セールの平均奪三振は12.9だ。
レイとゴンザレスはともに防御率やFIPで大きな違いをつくった。ゴンザレスは201回を投げ、レイは162回。これは大きな開きだが、レイは平均被安打、平均奪三振、K/BBなど平均の数字で大きく上回っていた。そしてジャンセン。68回1/3を投げ、ビデオゲームのような数字を残した。奪三振109に加え、歩かせたのはわずか7回というのは驚くべきものだ。
いずれにしても、私はレイを選んだ。どこか最終決定を下さなければいけなかった。だからこれが最後の決断だった。ゴンザレスとジャンセンも、誰の投票でも候補に名を連ねるにふさわしいシーズンを過ごしたのだが。
原文:SN MLB writer explains NL Cy Young Award vote for Max Scherzer
翻訳:Hiroaki Nakamura