監督が「悪意」を持って異物チェックを要求することをどう防ぐか? MLBが定めた防止策ルールとは

Ryan Fagan

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フィラデルフィア・フィリーズのジョー・ジラルディ監督は長年に渡って野球界に関わってきた。6月22日の夜(日本時間23日)、この大ベテラン監督が野球界を賑やかせている粘着物質に関わる議論に新たな火種を起こした。

ワシントン・ナショナルズの先発投手、マックス・シャーザーはその時すでに2回のチェックを1イニング目と3イニング目に審判団から受けていた。それはMLBの新たな取り締まり方針に基づくものであった。それにもかかわらず、ジラルディは4回途中にシャーザーを再チェックすることを審判団に要求したのだ。4回裏のその場面、ナショナルズは3-1で試合をリードして、1アウトで、ランナーを1塁に置いていた。シャーザーはこの要求に対して明らかな不満を示した。

この件の詳細をこれ以上蒸し返すことは止そう。MLBの取り締まりがまるで選手たちを悪者に仕立て上げていることについては、他でも十分語られているからだ。この記事では監督たちがこの取り締まりにどう関わるかに焦点を当てたい。

最初にここから始めよう。監督は相手チームの投手がボールに何かしら細工しているとの疑いを持った時、いつでもその投手をチェックすることを審判に要求できる。ボールに傷をつける、粘着物質を塗布する、など、メジャーリーグの投手が投じるボールの動きに影響を与える方法は数多くある。

過去数十年に渡って、そうした要求が実際に出された事例の数は多くはない。その最大の理由は監督たちが自分のチームにも何かしらを使っている投手が何人かはいることを知っていたからに他ならない。相手チームの投手をチェックすることを要求すれば、当然のことに同じことを相手チームから要求される事態を招くだろう。それでもチェック要求が行われたレアなケースもないではない。相手投手があまりにもあからさまに異物を使っているときは、監督には要求するしか他に選択肢はないからだ。

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例えば、かつてボストン・レッドソックスの監督だったジョン・ファレル氏がニューヨーク・ヤンキースのマイケル・ピネダ投手のチェックを審判団に要求したことがある。ピネダはそのとき首に大きな松ヤニの塊をつけているのが誰の目にも明らかだったからだ。

しかし、ほとんどの場合、監督たちはガラスの部屋にいる人間が石を投げることは賢明ではないと基本的には理解している。

だが今はどうだろう。すべての投手はチェックを受けることが初めから分かっている。例えば、もしある投手が3イニング目にチェックを受けたとしたら、その投手は続く4イニング目には審判団からのチェックはおそらく行われないと予測できないだろうか? それならば、もしその投手が賭けに出るとしたら、それは4イニング目になるのではないか?

ジラルディがシャーザーに対してそうしたように、監督はある場面では特に疑い深くなり、審判に先発投手のチェックを要求するようになるかもしれない。そして過去数十年のどの時点より、現在の監督がその行動を取る可能性は高くなるだろう。

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そうなると、ある監督がある種の作戦として1試合中に何回も相手投手のチェックを審判団に要求することを防ぐにはどうしたらよいのだろうか? 試合中の重要な場面で投手の集中力を乱すことは大きな影響を及ぼすだろう。MLB機構はそのことについて対策は講じてある。
 

監督の異物チェック要求に関するMLBのルールとは何か?

MLB関係筋の情報によれば、先週MLB機構から全チームに送られた文書には以下の文章が含まれている。

「もしある監督が悪意を持って(例:試合の重要な場面で投手のリズムを乱す目的、証拠と思われる現象なしに定期的な要求すること、など)要求を行った場合、その監督は処罰の対象になります。監督からチェックの要求があった場合、審判団はその投手が最後にチェックを受けたタイミングと、監督の要求が妥当かどうかを考慮して、チェックを行うか否かを決定します。もし審判団が監督の要求は異物使用の疑い以外の目的でなされた(例:試合で有利になるため)と判断した場合、審判団は監督の要求を却下することができます。そして審判団が監督は悪意を持って要求を出したと判断した場合、監督は退場を命じられます」

「悪意」の有無はあくまでも審判団の主観のみによって判断される。これをジラルディとシャーザーのケースに当てはめてみよう。審判団はジラルディに要求について合議を行ってから、シャーザーの元へ向かった。ジラルディにはチェック要求を出すだけの十分な理由があったと審判団は判断したためだ。なぜならシャーザーはそのイニング中、帽子や髪の毛に繰り返し手をやっていた。シャーザーは汗をロージンと混ぜて握りを強くしようとしていた。その行為自体は完全に合法的である。だが、シャーザーが汗以外の何物かを防止や髪の毛の中に探していたのではないかと疑うことは理不尽であったとは言えない。

だから、審判団はチェックを行った。シャーザーの無実は証明された。ジラルディもシャーザーも退場させられることはなかった。(訳者注:その場面の後、シャーザーがフィリーズのベンチを睨みつけ、ジラルディがそれに対して立ち上がり怒鳴ったことで、ジラルディは退場処分を受けた)

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率直に言って、監督がそうした心理的な駆け引きをしたことを理由に退場処分を受けることは想像し難い。第一、監督たちはこの取り決めについて知っているのだから、要求を出すときは少なくとも合理的と思われる理由を用意するだろう。ましてや審判が監督に向かって、「私たちはあなたが動機についてウソをついていると思います。だからあなたにこの試合からの退場を命じます」と口にするのはとても困難であろう。

そのせいだろうか、シャーザーと同じように将来の野球殿堂入りが有力視されているクレイトン・カーショウは、MLBがさらに踏み込んだ対策をすることを望んでいる。

訳者注:クレイトン・カーショウはジラルディとシャーザーのケースについてコメントし、ジラルディは罰せられるべきだったと述べた。そして、今後もしある監督がチェック要求を出して、その投手が無実であった場合、監督には何かしらのペナルティを科すべきだとも述べている。

それは悪くない考えだ。カーショウのような選手の言葉は重みがある。カーショウは騒ぎを大きくすることを目的に意見を述べるようなタイプの人間ではない。カーショウは自分の信念を述べているのだ。

そしてもしカーショウがそれを信じるなら、MLBは耳を傾けるべきだ。

(翻訳:角谷剛)

Ryan Fagan

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Ryan Fagan, the national MLB writer for The Sporting News, has been a Baseball Hall of Fame voter since 2016. He also dabbles in college hoops and other sports. And, yeah, he has way too many junk wax baseball cards.