片手のメジャーリーガー、ジム・アボットの物語【後編】

Joe Rivera

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アボットは元々、高校卒業時の1985年にトロント・ブルージェイズからドラフト指名を受けていた。ブルージェイズのパット・ギリックGMはこの指名が広報活動ではないと話したが、世間からは多くの憶測を呼んだ。

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「その当時でさえ、我々は彼にはハンディキャップを克服するだけの投球能力が備わっていると感じていた」。ギリックはそう話した。

アボットはブルージェイズとの契約を結ばないことに決めた。そしてこの決断は、指名巡の遅い選手は最低限のボーナスしか受け取れないということが理由ではなかったという。

「僕はいつもメジャーでもやれると感じていた」。アボットはそう話した。「だが、僕には自分を含めた大勢に向けて証明しなくてはいけないことがたくさんあった。そして、もし僕の自分の能力に対する評価が間違っていたと判明していたら、少なくとも僕はその過程で大学教育を受けていただろう」。

大学にて素晴らしいキャリア(ウルヴァリンズにて通算26勝8敗、防御率3.03)を築いた後、出資者が現れた。

8月3日、エンゼルスはアボットと1989シーズンから傘下のミッドランド(テキサス州)のチームでプレーする契約を結んだ。そして特典として20万ドルのボーナスも支払った。

当初、この交渉は難航した。エンゼルスが最初のオファー額を意図的に低く提示したためだ。

しかし最終的に球団側は、自分たちが相手の弁慶の泣き所を蹴っているように見られていることに気付き、ドラフト全体8位で指名したアボットの地位に見合ったものにオファー額を引き上げた。

ジェームスサリバン賞を受賞した後、アボットは以下のように話した。「ドラフト指名は純粋に僕の能力に基づいたものだと思いたいけど、僕の背景がそれと大きく関係していたことは分かっている。だが、それでも構わない。僕が野球をプレーしている姿から何かを見出す人がいてくれて、それが彼らの生きる支えとなれば僕は嬉しいからね」。

そしてアボットは、オリンピックという輝かしいキャリアの段階に足を踏み入れたにも変わらず、冷静だ。

報道によると、彼は10万ドルで自叙伝を共同執筆するオファーをすでに断っている。その理由を以下のように語った。「マイナー選手が本を持ってウロウロしているのはかっこよくないからね」。

彼は、二夏に渡る夏の国際大会で得た経験に最も満足していると話した。その経験が、プロの世界への準備の手助けとなったからだ。

「人は、今自分が競争している場のレベルに合わせて成長するものだ。学ぶためには、その場所が求めてくることをしなくてはならない」。彼はワシントンポスト紙にそう話した。

「ミシガン大学に入学した時、僕はストレートしか投げられなかった」。彼はそう付け加えた。「その後カーブとカットボールも覚える必要が出てきて、それが僕のスライダーになった。今はスピードの遅いカーブとチェンジアップの練習中だ」。

また、彼は投球コースを新たにすることにも取り組んでいる。

大学野球では、アルミニウムのバットを持った打者に対して外角の隅に投じる傾向があった。しかし、プロの世界でそれと同じ投球をすると、球はフェンスの向こうへと消えてしまいがちだ。

「内角に投げる練習をしている」。彼はそう話した。「これは僕の将来にとって大切なことなんだ」。

今夏のオリンピックチームでは、アボットは練習試合の最初の4試合の内3試合に勝利した。

唯一敗戦を喫したのは1対2で敗れたキューバ戦であり、彼の持つ153キロのストレートの1球が内角に収まらず、35歳のキューバ人捕手フアン・カストロがその球を場外へと追い出してしまった。

仕方がない。

ハリウッドの脚本家たちはすでにジム・アボット物語の次の章を渇望している。

米国代表チームは9月19日にオリンピックの試合を開始する。対戦相手は開催国の韓国だ。

そしてたまたま9月19日はジム・アボットの21歳の誕生日だ。

だが……

そのことは忘れてほしい!

「ジム・アボットが韓国戦で投げないとは言っていない」。マルケスコーチはそう話した。「だが、東洋のチームには左打者がそれほど多くないので右投手を起用した方が良いかもしれないと私は言っているんだ」。

「そして、カナダには通常左打者が多く、それがカナダ史上最強チームだと考えられているので負けるわけにはいかない」

つまり、アボットが出場するのは、9月23日の韓国でのファーストラウンド最終戦、カナダとの試合になるだろうということだ。

「もちろん開幕戦で投げたいよ」。アボットはそう話した。「でも、もし僕が第3戦で投げることがコーチの希望ならば、僕は喜んでそうするよ」。

「それによって悩まされることはないよ。今後のキャリアでも、僕が自分自身を指揮することはないわけだからね」

(完)

原文:SN Throwback Thursday: Jim Abbott, Team USA embark on road to Olympic gold

翻訳:日本映像翻訳アカデミー


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