昨季17勝のバウアー「MLBには異物使用が蔓延」とツイート、物議醸す

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インディアンスのトレバー・バウアー投手が先週、メジャーの投手には異物使用が蔓延していると示唆して波紋を呼んだ。

ピッチングを科学的に見つめてきたバウアーは、松ヤニなどの物質が投球の回転数にどのような影響を及ぼすか自分で実験してみた結果を口にしたのだという。

スポーティングニュースの取材にバウアーはその実験と、異物が大きな影響をもたらすことを語った。

(以下の会話はいくぶん編集されている) 

スポーティングニュース(以下SN)「あなたのツイートの真意を確かめたいと思います。アストロズだけではないということですね?」

トレバー・バウアー(以下TB)「私は特定の選手の名を挙げたことはない。特定の球団の名も挙げたことはない。どの選手とかどの球団とかどのコーチとか、そういうことではないんだ。特定のチームや人物のことではない」

SN「現在、異物の使用はどれほど蔓延しているんですか?」

TB「とても広まっていると誰もが考えていると思う。それを秘密と呼ぶのなら、とても広まった秘密だ。ただ問題は、これがどれだけ野球に影響を与えるかをはっきりさせるテクノロジーがなかったということだ。投手としての成功や、彼の能力や、金銭的な見返りといったことに対する影響だね。いま、われわれにはそれを明らかにするテクノロジーがある。われわれは研究を続け、異物の使用がどれだけ回転数を増すか、そして回転数が増すとどれだけ選手を成長させるかが分かった。FAになった投手は、ボールの回転数に従って契約を結ぶことになる。もし私が松ヤニを塗って回転数を200RPM(毎分の回転数)ほど増し、その結果、不正を働いていない投手よりもいい条件で契約したとしたら、これはフェアなことだと思うかい?

ステロイドの使用と同じ議論だ。みんなドーピングをして、本塁打が増えれば試合は盛り上がる。野球にとっていいことだろう。見方を変えてみよう。体に不正な細工をしたくない選手はどうだろう? 彼らはフェアな競争をすることになる。ただ、ドーピングの場合は体に悪い影響をもたらすから、同じとは言えない。こちらはちょっとグラブに松ヤニを塗ったり、指を粘つかせればいいんだ、そうだろう? けれども、不公平という意味では変わりはない。いまやこれがどれだけ不公平を作りだすかがはっきりしたんだ」

SN「あなたは異物の使用がボールにどれほど影響をもたらすか実験したのですね。テストはどのようなもので、どのような結果が得られたのですか?」

TB「2年前、ボールの表面と指の皮膚との関係で、どのような抵抗力が生まれるのか化学者と話をした。非ニュートン流体(動きの速度と流体の変形速度が比例しないもの)を混ぜ、滑りやすい物体、粘る物体などを試してみた」

SN「コカ・コーラとか?」

TB「そうだね。松ヤニに混ぜてね。いろいろなものを試してみたい。父親の指の型を取って3Dプリンターで鋳型を作り、強く指を曲げてみた。指の背に紙ヤスリを固定して指をまっすぐ伸ばしてもみた。さまざまなことをして、速球の回転数がどうなるか調べてみた。速球の回転数を上げる研究を5年間続けてきた。

優れた速球を投げたければ、こうした研究が必要だ。5年間続けたのだ。その間、あらゆるテストをした。私ひとりだけでなくドライブライン(トレーニング施設)の人間や私の父親、そして私が話をした米国中の研究施設が、だ。そしてたどり着いた結論は、ボールの回転数を上げるにはたったひとつの方法しかない。粘る物質を使うことである、というものだ」

SN「回転数は具体的にどう違うのですか?」

TB「それには若干個人差があるし、球速による。70マイル前後のスピードの球を投げる10人で調査してみた。平均68マイルとか71マイルとかだが、だいたい70マイルのスピードを投げる人たちだ。このテストでは回転数は250RPMから400RPMの間だった試合中で投手が投げる90マイル前後にスピードを上げると、フォーシームの速球の回転数は200RPMから300RPMだった。カーブやスライダーになると結果は異なる。手から離れたときのメカニクスが違うからね。だが私には回転数の違いを生み出すものが分かった。自覚的に指を内側に捻る度合いとか、ボールの握りの強さなどが関係するのだ」

SN「あなたのツイートにアストロズのA・J・ヒンチ監督は”ゲリット・コールは握りを変えているのだ”と反応していました。自然な形で投手がボールの回転数を上げることはできますか? 松ヤニを使うのと同様な効果が期待できますか?」

TB「もう一度言うが、私はある人物やあるチームの話をしているのではない。私の行ってきた研究の結果を話しているのだ。5年間の研究の結果では、自然な形でボールの回転数を上げる方法は見出せなかった。もちろん、そうした方法がないと言っているわけではない。どこかに存在するかもしれない。私が言っているのは、5年間をかけた私の研究では見つけることができなかったということだ。私とともに調査をしたり、調査を依頼した人たちも、誰ひとりとしてそんな方法を見つけられなかった」

SN「粘性物質に関して、あなたの研究結果をMLB機構やリーグ、選手会に報告しようとは考えなかったのですか?」

TB「考えなかった。私個人の財産として取っておきたかったからだ。金の卵をただで他人にあげる人間がいるかい? ここまで理解が進んだ今、不正せずに回転数を上げる方法はそうはないと確信している。だから自分だけの財産にしておかず、自分のために使おうと思う。不正はしたくない。そこで問題提起をした。使用を認めるのはどうか。誰でも粘着質の物質を使っていいのなら、競争はフェアになる。

禁止されていたら、異物使用はチームにリスクをもたらすことになる。私が見つかって退場になったら、救援投手に迷惑がかかる。他の先発投手にも迷惑がかかる。日々の試合に勝つことに集中し、ワールドシリーズ優勝を目指す野手たちにも迷惑がかかる。みんな毎日毎日グラウンドで戦っている。そこでリスクを冒したくない」

SN「ではフェアな競争を実現するためにMLBは何をするべきですか?」

TB「彼らの決断次第だ。彼らが扱いたい問題かどうか知らないが、これからもずっと球界に付きまとう問題だと思う。現状は誰もが知っている。監督も、球団首脳も、選手たちも知っている。ただ、口にしないだけだ。それは黙って受け入れるべきことだからだ。規制を強化するか、認めるかだが、規制を強化していいことはないと思う。イニングごとに、または1球ごとにチェックするなど不可能だからだ。どこに何を隠しているか、分かるものではない。これといった有功な対策はない。フェアな競争を実現する唯一の方策は、使用を認めてしまうことだ。使いたければ使えばいいし、使いたくなければ使わなければいいのだ。

その結果どうなるか。異物使用によってあらゆる投手のボールの回転数が増す。そのうち打者も回転数の多い球に適応していく。回転数が上がればそれだけで打ちにくいというわけではない。打者の目は慣れていく。平均の回転数は上がるだろう。だがみんなが上がれば、相対的に効果は下がる。投手にとっても打者にとってもフェアになり、問題はなくなるだろう」

SN「ふつうのファンに説明してほしいのですが、不正に異物を使った投手だけがボールの回転数を上げると、他の投手に比べてどのような利点があるのですか? あなたはステロイドの使用になぞらえていたようですが?」

TB「回転軸が同じだと想像してもらいたい。回転数が100RPM増すごとに、ボールはより動く。ボールはそうして動くのだ。ボールが回転すると空気中に力が生まれて動くことになる。もし100RPMとか200RPM、400RPMとか増加していたら、ボールはもっと動くし、違った動きをする。しかしボールが投手の手を離れた時点では、打者にはその差は分からない。打者の手元に来たときに、打者の予想と2インチから4インチ、あるいはもっとずれていることになる。15フィートから20フィートまでの距離に近づくと、もう打者はボールを目で追うことはできない。打者はその距離に至る以前のボールの軌道でミートポイントを判断することになる。ボールがミートポイントから3インチから4インチずれていれば、容易に空振りが取れることになる。だからボールの回転数が増せば、対戦打率や空振り率といった数字は軒並み投手にとってよくなるのだ。

速球の回転数が2250RPMで、球速は93マイルから94マイルだとしよう。回転数2250RPMも球速93、94マイルもごく平均的な数字だ。ここで球速はそのままで回転数が2600RPMになったとしよう。するとボールはもっと動くようになる。昨季、私の速球は悪い方から数えて17位だったけれど、回転数が増えればあっというまにリーグ屈指の速球になるのだ。投手としての価値は劇的に変わる。

速球が平均以上であれば、低めにさえ投げておけば打者は空振りするか凡フライを打ち上げてくれる。試合での結果も大きく変わる。そうなると、さっきも言った通り、金銭面でも変わる。ボールの回転数を好投手の条件と見なす球団が増える。回転数の多さでもって球団から高い評価を受けている救援投手が多い。もし平凡な回転数しかない投手が異物を不正に使用して回転数を増したらどうなるか? 不正せず真面目にやっている投手よりいい契約がもらえるのだ。現役の間、ずっと不正な異物を使用して回転数を増やしていたらどうなるか? 回転数の多い、素晴らしい投手だと賞賛されるだろう。不正に異物を使って回転数を増し、その結果いい成績を残すと、FAになって金銭的に恵まれるのだ。これがフェアだと思うかい?」

SN「この研究を始めた動機は何ですか? 何か有利なものを見つけようと思ったのですか? それとも単なる好奇心からですか?」

TB「何か有利なものを見つけようと思った。これまでもずっとそうしてきた。絶えず自分を成長させる何かを発見しようとしてきたのさ。

5年前、私はボールの回転数は大きな問題だと認識した。ずっと黄金の卵を産むガチョウを探し求めてきた。5年間、私は球速を追い求めていた。その結果、球速以外のものに気付いた。それが回転数だった。全力で投げれば回転数が上がる。そこで回転数を球速で割ったバウアー単位で比較するようにした。球速88マイルの投手の価値と98マイルの投手の価値を、回転数を使うと比較することができる。バウアー単位が大きければそれだけ打者にとっては打ちにくいということだ。

私は速球の精度を上げたいと思っている。ではどうすればリーグ有数の速球に磨き上げることができるのか? とにかく力いっぱい投げてきた。それもそろそろ体力的な限界に近づいた。

球速をアップさせようと努力して、実際シーズンごとに徐々にアップした。でも、速くなったといってもせいぜい0.2マイルくらいなものだ。リーグ全体の球速アップについていくこともできない。私の球速が上がっても、リーグの平均も上がっていくので、相対的に私の球速は平凡なままだ。

SN「粘着物質とMLBのことに話を戻すと、あなたは異物の使用を認めるとか、規制を強化するとか、MLBが何か決めることを期待しますか?」

TB「期待したい。でもどうなるか分からないというのが正直なところだ。私に変な思い込みはない。彼が積極的に取り組む理由はない。公にする理由もない。だからこんなことを公にした私に反動がかかってくるのだ。この話をしようとする者はいない。だが、しっかり議論すべきことだ。各球団にはこの情報をしっかり使ってもらい、契約の際に活用してもらいたい。不公平な事態を生み出しているのだから」

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原文:Indians’ Trevor Bauer talks pine tar, spin rate, experiments and more
翻訳:Hirokazu Higuchi