大谷翔平が今シーズン28本目の本塁打を放ち、メジャーリーグ全体でトップに立った。シーズン57本に到達するペースだ。大谷は全米各地のメジャー球場で本塁打を打ち続けているが、そこにはもっとも大きな痛みを持ってその活躍を見なくてはいけない球場も含まれる。特に今となっては。
大谷のその本塁打数ペースだけでも驚異的だ。バリー・ボンズが2001年に73本の本塁打を記録して以来、わずかに2人の選手しか57本以上を記録していない。ライアン・ハワード(2006年、58本)とジャンカルロ・スタントン(2017年、59本)だ。しかし、もちろん、大谷の価値はそれだけではない。
大谷は投手としてもシーズン168奪三振のペースである。ロサンゼルス・エンゼルスが79試合を消化したこれまでに、59回1/3を投げて82個の三振を奪っている。防御率2.58、1試合平均奪三振12.4個、1試合平均被安打数5.9本という成績だ。つまり、打者として最優秀選手賞(MVP)級でありながら、投手としても十分オールスター候補になり得るということだ。
我々はこのようなものを見たことがない。これほどまでの投打両方での活躍を同じ年に見せた選手はかつていない。
それを示すために1つのスタッツを作ってみよう。単純な計算方式だ。1シーズン中に打った本塁打数と奪った三振数を足してみるのだ。仮にそれを「BS」と呼んでみる。ベーブ(ルース)の「B」と(大谷)翔平の「S」だ。これまでに1シーズン内の本塁打数と奪三振数がともに10を越えた二刀流選手は以下の通りである。
選手名(シーズン) | 本塁打数 | 奪三振数 | BS |
---|---|---|---|
大谷翔平(2021) | 28 | 82 | 110 |
大谷翔平(2018) | 22 | 63 | 85 |
ベーブルース(1919) | 29 | 30 | 59 |
ベーブルース(1918) | 11 | 40 | 51 |
ウィリー・スミス(1964) | 11 | 20 | 31 |
ジミー・ライアン(1887) | 11 | 17 | 28 |
ジミー・ライアン(1888) | 16 | 11 | 27 |
これはまさに歴史的な偉業であり、大谷はまだそれを始めたばかりのようにさえ感じられる。
大谷は直近13試合で11本の本塁打を打っている。そこには今週ニューヨーク・ヤンキースの本拠地ヤンキー・スタジアムでの2試合で放った3本も含まれる。そして今夜、大谷は投手としてマウンドに立つ。それはかつてヤンキースが夢見た光景でもある。
しかし、その夢では大谷は今とは違うユニフォームを着ていなくてはならなかった。
2017年に大谷がメジャー移籍を決めた時、ヤンキースは獲得へ大いに乗り気だった。しかし、ヤンキースは大谷の選択肢から外され、面談にこぎつけることさえできなかった。ヤンキースがこの日本の天才に興味を持ち始めたのは2012年まで遡る。それだけに大谷から考慮すらされなかったことは苦い記憶だ。ヤンキースは大谷獲得を強く望んだ。しかし獲得レースの準決勝ラウンドにさえ進めなかったのだ。
そして今、大谷が熱望した通りの選手になりつつある。それを本拠地球場で見せつけられる。まさに苦痛であるとしか言いようがない。
2017年に大谷の決断を受け、ヤンキースのブライアン・キャッシュマンGMは次のようなコメントを残している。「数日前から嫌な予感はしていた。我々が用意したプレゼンテーション資料は素晴らしいものだ。反応も群を抜いていた。ただ、我々が大きな市場であることや米国東部にあることを変えることはできないとは感じていた。プレゼンテーション資料の出来にかかわらず、そのことが我々にとって厳しい状況をもたらすことも」
ヤンキー・スタジアムのライト側外野席に強烈なライナーで飛び込んだ大谷の本塁打は、なぜヤンキースが大谷を獲得したかったを思い出させた。
そしてもし、6月30日(7月1日)の試合で大谷がヤンキース打線をシャットアウトするとしたら? それはさらに耐えられないものになるかもしれない(追記:現地時間6月30日、ニューヨーカーは大谷の1回途中KOでようやく留飲を下げた)。
(翻訳:角谷剛)
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