ワールドシリーズでもっとも楽しい選手。ドジャースが崔志萬を警戒しなくてはいけない理由

Billy Heyen

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メジャー5年目で注目の選手に

崔志萬がタンパベイ・レイズに大きな貢献をしている。身長6フィート1インチ(約184.5㎝)、体重260パウンド(約117キロ)でメジャー5年目の1塁手だ。崔は予想がつきにくい選手だ。いつも変わった行動を取る。だがレイズがそのようなチームであるように、崔はそれを上手くこなしている。

レイズと崔は10月20日(日本時間21日)から始まるワールドシリーズでロサンゼルス・ドジャースと対戦する。この韓国出身の1塁手、崔はその左打席からの打撃と試合中ほとんど絶やすことがない笑顔によって、レイズのファンの間で人気者となった。プレーオフに入ってからは、中継カメラさえもが、しばしば試合中にレイズが盛り上がる場面などで崔のリアクションを大写しにするようになった。

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ワールドシリーズでも、少なくともドジャースの先発投手が右腕の試合では、崔は先発出場するだろう(訳者注:崔は第2戦に4番1塁手で先発出場した)。最近の崔の好調子ぶりを見る限り、その起用は成功を収めるはずだ。ドジャースがもっとも警戒しているレイズの打者はランディ・アロサレーナだろうが、そのすぐ後で打席に入る崔にも大きな警戒が必要になる。崔はワールドシリーズでもっとも楽しい選手であり、そのバットはシリーズの流れをレイズに引き寄せる存在になる可能性を秘めている。
 

ゲリット・コールを打ち負かした崔志萬をドジャースが恐れる理由

崔志萬がもっとも得意とする投手とはワールドシリーズで対戦することはない。それはニューヨーク・ヤンキースのエース、ゲリット・コールだ。崔がアメリカン・リーグ・ディビジョン・シリーズでコールからキャリア4本目となる本塁打を放っていることもその理由の1つだ。

コールはいなくても、ドジャースにはコールと似たタイプの投手は何人かいる。100マイル(約160キロ)の速球と鋭く落ちる変化球を織り交ぜるタイプだ。崔が好投球に打ち取られるときでさえ、それは難しい球ではないことが普通だ。崔は球界最高の投手たちからも好成績を残しているのだ。

アメリカン・リーグ・チャンピオンシップ・シリーズ第5戦では、崔は球界指折りの救援投手の1人であるジョシュ・ジェームズから本塁打を放った。初球は鋭いカーブボール、続く2球は97マイル(約156キロ)の速球で、カウントが1ストライク2ボールとなった。ジェームズは96マイル(約154キロ)の速球で崔を打ち取ろうとしたが、崔はその球を逃さなかった。

ドジャースは速球と鋭く回転する変化球を投げられる多くの投手を繰り出すだろう。ワシントン・ポスト紙のジェシー・ドゥハティ記者は最近「崔志萬は内角球にめっぽう強い」と崔について書いている。崔が相対するのは球界でもっとも才能に溢れた投手陣だが、崔にとっては相性が良いタイプだ。崔の打席がシリーズ全体の流れを決めることになるかもしれない。
 

崔は笑顔を絶やさない

それがどんなプレイであるかはあまり関係ない。崔は鋭い投球に空振り三振を喫したときさえ笑顔なのだから。崔はどのようなプレイの後で笑顔を浮かべる。もちろん、本塁打を放った後も。

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崔を見ていると、「この男は本当に野球を楽しんでいるのだな」以外のことを考えるのは難しい。現代のMLBがどんどん無機質になっているなか - 似たようなフォーム、似たような作戦、似たような結果 -、崔の笑顔は際立っている。このCut4の動画では崔のそんな情熱を見ることができる。

Ji-Man Choi turns 29 today.

Let's celebrate this king. pic.twitter.com/BC91wXReY2

— Cut4 (@Cut4) May 19, 2020

今シーズン前半、崔は渋いシングル安打を放った後で、ビリヤードの腕前もあるというジェスチャーをしたことがある(そのゲームをするときも笑顔を浮かべるのだろう)。

そして韓国で新型コロナウイルスの検疫が行われていた頃に崔が家族と釣りを楽しむ様子を写したインスタグラムの写真を見てほしい。


崔は守備も上手い

昨年9月中旬以来、崔はハムストリングスの故障により、守備につくことがあまりできなかった。しかし、レイズはプレーオフに入ってから崔を1塁手として信頼して起用してきたし、それはワールドシリーズでも続くと思われる。崔の体型はあまり守備の名手のように見えないが、2020年の守備成績は平均以上であるし、ショートバウンドのボールを救い上げる目の良さとグラブ捌きを備えている。

野球専門ウェブサイト『Fangraphs』によると、2019年にはやや平均以下だった崔の守備評価の数値が今シーズンは平均以上に向上している。全体では可もなく不可もなくといったところかもしれない。だが、崔が1塁を守るのを見るのは楽しいことは確かだ。

そして、ヒューストン・アストロズを破ったアメリカン・リーグ・チャンピオン・シリーズで見せた崔の1塁守備の上達ぶりを下の短い動画で見てほしい。

Won't show up in the box score, but Ji-Man Choi is putting on an absolute clinic at first base today. #RaysUp pic.twitter.com/FEUvSUDI8N

— Danny Vietti (@DannyVietti) October 12, 2020


崔は右打席でも打てる

崔は公式には左打者となっている。スイッチヒッターではない。しかし、今シーズン前半に崔は右打席から本塁打を放っている。崔は2015年にもスイッチヒッターを試みたが、試合で使うまでには至らなかった。それが今年の7月26日に始めて実現した。

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崔のメジャーリーグにおける初めての右打席は三振に倒れる結果になった。それによって、この実験は失敗に終わったかと思われた。だがそうではなかった。2回目の右打席で崔はトロント・ブルージェイズのアンソニー・ケイ投手から本拠地トロピカナ・フィールドの左中間外野席に突き刺さる本塁打を放ってみせた。

Ji-Man Choi batted left-handed for the first 250 games of his #MLB career. He is now switch-hitting, and after striking out in his first at bat righty, he just homered right-handed. #RaysUp pic.twitter.com/8MT4VM5hgl

— Billy Heyen (@BillyHeyen) July 26, 2020

野球データ専門ウェブサイト『Baseball Reference』は崔の右打席での成績をどう分類するべきか困っているようだが、崔は2020年シーズン中に右打席を10回試しているようだ。崔がそれをワールドシリーズの舞台で試すとは考えにくい。失敗を恐れるレイズは崔にそれをすることを許すよりも代打を送ることを選ぶと思われる。だが、崔が自分で勝手に右打席に移ることはけっしてないと誰が言えるだろう? 今年はすでにそれを1回成功させているのだ。

(翻訳:角谷剛)

Billy Heyen