ロンゴリアが移籍し、レイズの一時代が終焉

Marc Lancaster

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タンパベイのMLB球団には明確な分岐点がある。ひとつの言葉とひとりの選手に集約することができる分岐点だ。

最初の10年、デビルレイズは645勝972敗(勝率.399)に終わり、プレイオフに近づくことすらなかった。だが、再び最下位に終わった2007年、球団は生まれ変わる。チーム名から「デビル」がなくなり、レイズは翌シーズン、最下位からトップに登りつめた。ワールドシリーズにも進出し、その後もプレイオフを3度経験。10年で855勝766敗(勝率.527)を記録した。

チーム名とユニフォームの変更同様に、球団の歴史を大きく変える瞬間となったのが、2008年4月12日。3Aから呼ばれたエバン・ロンゴリアのメジャーデビューである。

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南カリフォルニア出身で身だしなみが整っており、スムーズなスイングを持つ青年は、すぐに三塁手として定着。一気に球団の顔となった。新人ながらオールスターに選出(通算では3回選出)。歴史に残るボストン・レッドソックスとのアメリカン・リーグ優勝決定シリーズでは4本の本塁打を放った。

2011年のレギュラーシーズン最終日には、おそらくタンパベイにおける野球の歴史の中で最も見る者を魅了した瞬間を作り出した。トロピカーナ・フィールドの左翼フェンスを越えるホームランで、レイズを4年で3度目となるプレイオフ進出へと導いたのだ。

レイズがロンゴリアのルーキーシーズンほどの高みに登りつめたことはない。一方で、彼らの三塁手は、プレイオフ時代の主力たちが去ってからも、少なくともレイズが競っていく上で頼れる選手としてあり続けた。

常に低収入の球団がなんとかやり繰りしようとする中で、デビッド・プライス、ジェームズ・シールズ、カール・クロフォード、ベン・ゾブリストなど、主力たちはタンパベイを去っていった。成功の立役者だったアンドリュー・フリードマンGMとジョー・マドン監督も、より勝利を手にするチャンスを持つ大きな市場の球団へと去った。マドン監督は2016年にシカゴ・カブスで優勝を遂げている。

ひとり残ったのが、ロンゴリアだ。彼がこれほど長く球団に残ったのは、メジャーに呼ばれて1週間も経たないときに自らが下した決断も影響している。当時22歳の彼は、結果的には非常に球団に有利となった契約を結んだ。3年のチームオプションつきで6年総額1750万ドルという契約だ。この取引で、ロンゴリアを手ごろな価格で引き留められると知っていたレイズは、2008年以降もチーム作りを続けることができた。2012年シーズン後、ロンゴリアは2017年からの総額1億ドルという延長契約を結んだ。だが、10年近くにわたり市場価格を大きく下回る額でプレーすることで、彼はずっとレイズにい続けることになったのだ。

その間に、ロンゴリアは地域社会の一員となった。あらゆるマーケティングキャンペーンのスターというだけでなく、2013年にはタンパにスポーツバーを開店させている。トロピカル・フィールドやタンパの空港に支店もできた。結婚もし、子供も生まれ、初々しい表情の青年は、32歳のベテランとなった。

誰もロンゴリアが引退までレイズにいると予想したわけではない。最近の野球界はそういうものではないし、レイズの普段の人件費を考慮すれば、ロンゴリアが結んだ延長契約の規模は、彼の移籍を必要としていた。

オフシーズンになると、レイズがまた再建モードに移行し、ロンゴリアの高額年俸支払いが本当に迫ってくる中で、関係者の多くはトレードを予想した。周知のように、ロンゴリアは来年の4月、メジャーで10年、うち直近5年以上を同一球団でプレーした選手として、全球団へのトレード拒否権を手にすることになっていた。

ロンゴリアにとっては、今が去るタイミングだった。ただ、多くのタンパベイファンにとっては、より受け入れるのが難しい別れだ。少なくともレイズを重要なチームにしたあの2008年シーズン以降でさえ、失望に慣れてきたファンたちは、自分たちの希望を支えてくれる別の選手をこれから探すことになる。

原文:Evan Longoria trade marks end of remarkable era for Rays(抄訳)

翻訳:Hiroaki Nakamura

Marc Lancaster

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Marc Lancaster joined The Sporting News in 2022 after working closely with TSN for five years as an editor for the company now known as Stats Perform. He previously worked as an editor at The Washington Times, AOL’s FanHouse.com and the old CNNSportsIllustrated.com, and as a beat writer covering the Tampa Bay Rays, Cincinnati Reds, and University of Georgia football and women’s basketball. A Georgia graduate, he has been a Baseball Hall of Fame voter since 2013.