ロボット審判は、救世主にはなりえない(前編)

Ryan Davis

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時代が変わり、野球が変わったとしても、大切な部分は人間が守り続けている。

新しいテクノロジーにより、21世紀のゲームへと進化が進んでいることに間違いはない。しかし、原則は変わらぬままだ。フィールドで選手がプレーをする野球という競技は、100年前のベーブ・ルースの頃とほぼ同じままなのだ。

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しかし、人間に起因し、議論を呼ぶものもある。それは審判の判定だ。

近年のメジャーリーグは、アメリカのメジャースポーツとして進歩を遂げ、簡単にプレーの再生ができるようになってきた。しかし、ボールとストライクについての判定は、変わることのなかったものの一つだ。

ストライクゾーンは、バッターのひざの下の部分からわきの下にかけてと定められている。そこに最新テクノロジーは一切ない。試合中の判定は審判の判断によるものとなる。一人の人間の目視により、投球がストライクなのか、ボールなのかが決定されるのだ。

良い審判とは?ということについては、議論の余地がある。一般的に野球では、判定の95%程度が正確なものであり、この数字は科学的なものではない。リーグでは誰も確認や否定をすることなく、検討もなされていないままなのだ。95%より低いということはありうるのか?ストライクやボール判定の自動化は、正確な審判の方法となりうるのだろうか?

この質問の答えがノーだと示す証拠はない。少なくとも今のところは。

2017年、ボールかストライクかを把握する情報は拡大した。過去10年間の技術の革新により、すべての投球をトラッキングすることが可能になったのだ。まずは、そのデータがどうやって集められているかを見ていこう。

「かつてはカメラシステムが使われてきた。今はレーダーだ」ベースボール・プロスペクタスの技術担当ディレクターであり、ピッチインフォの創始者ハリー・パブリディスは述べた。「基本的にボールの軌道は、詳しく投影され、ボールの通り道全体を作り上げることで、把握され分析されている。大きくかかわってくるのはボールの速さと回転。つまりボールの方向とスピード、回転数だ」

投球の情報は、Brooks BaseballやFanGraphsといったデータ集計を行うウェブサイトに掲載されている。この情報は「PITCHf/x」と呼ばれるもので、投球タイプ、場所、ボールやストライクなどの分類により試合分析を行うのに役立ち、全てのメジャーリーグでプレーする打者たちに公表されている。

パブリディスたちのおかげで、公開されている情報に基づいて、審判が下した判定とレーダーによる判定を比較することができる。これにより、ホームベースにいる一般的な審判が下す判定の正確さを推測することができる。

「(レーダーと審判の判定)の双方は約90%一致している」彼は語る。「自動化されたシステムでは大きなミスはないが、私が耳にした非公開のリサーチ結果によると、実際にある程度の誤りがあるようだ。大きな違いは、打席では、ストライクエリアが広がることも、狭くなることもないということだ」

ホームベースの後ろに立つ審判と同じように、テクノロジーが正確であるということは興味深い。カメラシステムからレーダーへと変わった近年の変更により、すべきことがたくさんできたと、パブリディスは語っている。

「私の予想よりも悪いものだ」彼は続けた。「カメラシステムは2017年の間にレーダーに置き換えられた。そして視覚的に判断していたフィールド上で確立された正確性のレベルには達していない。理想のコンディションから0.5から1インチほど下回っているんだ」

「スタジアムに導入された新しいシステムも同様だ。他のシステムには多くても10年間は要した。問題点を解決する必要がある。レーダーのデータ処理は時間もかかり、より電子的なインターフェースに依存しているものだ」

もちろん、大きな疑問点となるのは、人間によるボールかストライクの判定は、テクノロジーにより自動化されたシステムに置き換わるのかどうか、ということだ。最近の変化を見てみると、おそらくそうはならないだろう。しかしパブリディスは、その先を見据えている。

「余分なシステムとともに、視覚よる判断に戻さなければならない」彼は述べた。「ストライクゾーンの上部と下部を再定義すれば、時間的に考えても独断的な判断とはならないだろう。そして決められたストライクゾーンという概念でテストすること。3-0(ボール3、ノーストライク)以上のフォアボールや(ボール0、2ストライク)三振があっても大きなことではないだろう、ゲームにどんな影響を与えるかを検討しなければならない」

現実的な点から考えてみよう。たとえ自動審判が現実的なものになっても、審判はいつでもホームベースの後ろで立っている必要がある。1塁の審判は、3塁からくるランナーがセーフであるかどうかを伝えるためにホームベースに行くことはできない。そのため、たとえ判定がハイテクなコンピュータシステムで決定されたものになるとしても、ホームベースの審判はそれぞれの投球の判定を叫ぶ役割も持つだろう。

バッターボックスの外について考えてみよう。審判にその投球がボールかストライクかを知らせるブザーシステムが導入されたとする。ライトが点灯するようなハンドヘルド端末かもしれない。投球後、「ボール」か「ストライク」と示すスクリーンかもしれない。判別には無数の方法があり、遅延はほぼ確実に少なくなるだろう。

後編につづく)

Ryan Davis