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4月22日（日本時間23日）の午後、ボストン・レッドソックスのサイン盗みスキャンダルに対する処分内容が発表され、全米中の野球ファンが即座に怒りの声を上げた。
最初の真実と呼べることだが、MLBコミッショナーのロブ・マンフレッド氏がどのような裁定を下したにしても、また数か月は遅くなったと思われる決定時期がいつであったとしても、多くの人を満足させることはできなかっただろう。マンフレッド氏は以前から選手は処罰の対象にはならないと明言していた。それはヒューストン・アストロズの調査のときも同じだった。選手たちは正直に証言することの引き換えに、責任を免ぜられることが約束されていたのだ。
この決断には賛否両論があるだろう。しかしながら、これは既定路線だった。選手たちが不問に付せられ、（2018年のレッドソックスが冒した不正に対して）チーム全体にも罰則が科せされないこの決定は、「手首にしっぺ（い）」をしたぐらいにしか捉えられないだろう。
それが正しい反応だろう。実質的には何の処分もなかったようなものだからだ。
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“サインを読み取った”人物であるビデオ再生システム・オペレーターのJTワトキンス氏だけが停職処分を受けるというのはあまりにも軽すぎる処分だと思われる。さらにマンフレッド氏は「ワトキンス氏が普段から試合のビデオを解析する主要な役割を担っていたことが、サインを分析してチームに伝えることへのプレッシャーになったと思われる。そのことはもちろんワトキンス氏が取った行動を正当化するものでも、言い訳になるものでもないが」と述べている。
ワトキンス氏は2020年シーズン（もしあれば）を職務停止となり、2021年もビデオ再生システム・オペレーターとして働くことはできない。ネバダ大学ラスベガス校（UNLV）バスケットボール・チームのジェリー・ターカニアン監督の有名な言葉「NCAA（米国大学体育協会）はケンタッキー大に対して腹を立てるあまり、クリーブランド州立大の2年間の停止期間を科すだろう」を思い出す人も多いだろう。この言葉は、かつてケンタッキー大が選手のリクルートスキャンダルを起こした際、公平であるべきはずのNCAAのダブルスタンダードな判断を皮肉るものだった。
レッドソックスは2020年ドラフトの2巡目指名権を剥奪され、アレックス・コーラ元監督は2017年にヒューストン・アストロズのサイン盗みに関与したことのみに対して2020年シーズン末までの出場停止処分が科せられた。
2番目の真実とはMLBがこの2件のサイン盗みスキャンダルに関する調査と処分において、当初から意図した通りの結果を得たと言うことだ。
MLBが選手たちに免責を与えたことのもっとも大きな理由は、MLBは実際に何が起きたかを把握し、この醜い出来事の幕引きを急いでいたからだ。もしMLBが選手たちを処分しようとすれば、選手からの証言を得られずに、情報が錯乱し、調査が難航して、決着まで何年もかかるというのが最悪のシナリオだった。MLBはとにかくこの件を早急に終わらせたかったのだ。終わらすことが重要で、処分を下すことは重要ではなかったのだ。
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選手たちを処分することは現実問題として困難だっただろう。藪の中に隠された事実を明らかにする過程で、多くの選手たちがああ言った、こう言ったと、泥沼になってしまっていただろうからだ。そして処分を下したとしたら、また世間の多くの人の議論を呼ぶことにもなっただろう。そうなると、この件が決着するまでに、長く、醜いプロセスを経なくてはいけなくなる。繰り返しになるが、マンフレッド氏の狙いはこの件を可能な限り素早く終わらせることだったのだ。
もう1つ見落としてはいけないことがある。MLBと選手会にとっては2021年に失効する包括的労働協約（CBA）の見直しが最優先課題であって、この件について争うべき時期ではないのだ。特に選手たちに処分を下すことができても、それが明るい材料にはなりえない。
つまりは、これこそがMLBが望んだことなのだ。誰もが納得できる決着ではないとしても、権力者たちは彼らの意図通りに物事を進めることができたことに満足しているに違いない。
（翻訳：角谷剛）
