野球ファンなら誰しも、球界で思うような力がふるえたらいいな、と夢想するものだ。
「もしアリゾナ・ダイヤモンドバックスのGMだったら、有望な若手をすべて放出してでもマニー・マチャド(ボルティモア・オリオールズ)を取る」とか「もしコミッショナーだったら、指名打者制は廃止にする」あるいは「もしセントルイス・カージナルスのオーナーだったら、アダム・ウェインライトが引退したら即座に彼の背番号を永久欠番にする」といった具合だ。
MORE: 今なら無料視聴可。スポーツを見るならDAZN(ダ・ゾーン)に!
ファンはこのように「こうなるべきだ」ということを話し合う。これが野球の楽しみ方でもある。ベースボールライターも同じようなことをしている。どんなトレードが効果的か、どんなFAが相応しいのか、といったものだ。
そんななかで、よく出てくるのが「もしあなたがオーナーで新球団を立ち上げるとしたら、誰を中心にしてチームを作っていきますか」というものである。私にはここ数年、ひとつの答えしかない。アンドリュー・マッカッチェンである。
私なら彼からチーム作りを始める。彼こそ野球ファンが思い描くスーパースターである。ピッツバーグ・パイレーツのファンは、彼がどれだけ別格な存在だったか、球団と地元にどれだけ大きな影響を与えてきたかをよく理解しているものと思う。
球場でスーパースターであり、球場を離れてもスーパースター以上の存在だ。彼はロベルト・クレメンテの遺産を受け継いでいる(実際、2015年にロベルト・クレメンテ賞を受けている)。フロリダ州フォートミード出身の彼には、パイレーツ・ファンが強く求めていた勝利への情熱を持ち合わせていた。彼にはパイレーツの地元ピッツバーグへの愛情もあった。鉄工業の街にちなみ、長男を「スティール(鋼鉄)」と名付けたのだ。彼は野球好きな子供たちにとって最高のお手本である。
— andrew mccutchen (@TheCUTCH22) 2017年2月6日
彼のような地元の英雄を応援するチャンスに恵まれる野球ファンはいないだろう。球団と地域を代表するというのがどういうことか、彼はよく理解している。だから彼に声援を送ることがそのまま誇らしいことなのだ。2015年にサンディエゴのペトコ・パークの外野席にいた、病身の父を持った子供たちにバッティンググラブをプレゼントしたことを思い出す。
現在の球界で、この手の心温まる関係を築ける選手は、そういない。シンシナティ・レッズのジョーイ・ボット、クリーブランド・インディアンスのフランシスコ・リンドア、ロサンゼルス・ドジャースのクレイトン・カーショー、ヒューストン・アストロズのホセ・アルトゥーベといったくらいではなかろうか。マッカッチェンはパイレーツそのものなのだ。サンフランシスコ・ジャイアンツのユニホームを着ることになっても、それは変わらない。
(後編につづく)