マグワイアの「62号」から20年、歴史的ホームラン競争を振り返る

Tom Gatto

マグワイアの「62号」から20年、歴史的ホームラン競争を振り返る image

マーク・マグワイアがちょうど20年前の土曜日に放った新記録のホームランは、彼が1998年にそれまで放っていた61本のようにブッシュ・スタジアムのスコアボードに穴を空けるものでもなければ、アッパーデッキのファンたち目掛けて飛んで行ったものでもなかった。しかし、それでもその一発は印象的なものだった。

▶スポーツ観るならDAZNで。1ヶ月間無料トライアルを今すぐ始めよう

セントルイス・カージナルスのスラッガーがシカゴ・カブスのスティーブ・トラクセルから放った第62号は、レフトフェンスを越える低い弾道のラインドライブだった。

カブスのライトを守っていたサミー・ソーサは、マグワイアとホームランの数を競っていた。そのソーサも、友人であるマグワイアを大いに祝福した。

マグワイアはそれからスタンドに立ち入り、元最多本塁打記録保持者のロジャー・マリスの家族と喜びを分かち合った。

1998年9月8日の夜は、少なくとも二通りの見方ができる。1994年から1995年にかけてのストライク・ロックアウトを経た後のメジャーリーグを大いに盛り上げた。あるいは、違反薬物により加熱したホームラン競争のワンシーンだった。

しかし、それだけではなく、時を経て明らかになったこともある。マグワイアとソーサのホームラン競争は、ファンの関心度の高さと言う意味では最後の、ベースボールにおける本当に国民的な対決だった。

理由はふたつある。ひとつは、ペナントレースの状況に関するもの。もうひとつは、ホームランがどのように見られていたかに関するものだ。

ベースボールには今日も「負けたら終わり」というプレーオフの試合が存在してはいるが、それは1978年のニューヨーク・ヤンキース対ボストン・レッドソックスや、1985年のカージナルス対ニューヨーク・メッツ、あるいは1993年のアトランタ・ブレーブス対サンフランシスコ・ジャイアンツとは比べ物にならない。今日のメジャーリーグでは、圧倒的な強さを誇るチームは揃ってプレーオフに進出する傾向がある。生き残ることよりも、勝ち進むことが重要視されている。シーズン87勝しか挙げていないチームを含むプレーオフの争いは、やや物足りない。

ベースボールは地域性の強いスポーツで、国民全員の関心など得られないという人がいるかもしれない。しかし、1998年シーズンは確かに国民的な話題となった。

マグワイアとソーサの対決はもちろん、ペナントレースではなくホームラン競争だ。両者は真夏にホームランのためのホームランを量産し始め、アメリカ中が注目した。

マグワイアは前年、オークランド・アスレチックス、それから7月のトレード期限に移籍したカージナルスで、計58本塁打を放った。オフシーズンにフリーエージェントとしてカージナルスと再契約した後、彼はホームランの祭りを繰り広げた。

マグワイアとケン・グリフィー・ジュニアはシーズン序盤、驚異的なベースでホームランを量産し、今年ついにマリスの記録が破られるのではないかとファンは考え始めた。ソーサは6月に20発を放ち、このホームラン競争に参戦した。

オールスター休暇の頃までには、舞台は整っていた。今も発祥の地セントルイスに編集部があるスポーティングニュースは、ファンに最前列のシートをプレゼントした。

sn

試合を観るために、さらに数百万人もの人がチケットを買った。それはシンプルな、しかしスリリングな展開だった。スリー・リバーズ・スタジアムやオリンピック・スタジアム、リバーフロント・スタジアムやジョー・ロビー・スタジアムといった、普段は閑散としている球場も賑わった。

スポーティングニュースとザ・セントルイス・ポスト・ディスパッチは共同で『セレブレイティング70:マーク・マグワイアの歴史的なシーズン』という記念の本を出版した。最後のホームランが放たれた直後の時期に出版された。元ポスト・ディスパッチのコラムニスト、バーニー・ミクラスは同書で、マグワイアの偉業をこうまとめている。

「ビッグ・マック(マグワイアの愛称)が街にやって来ると、それは市民の一大イベントとなった。マグワイアの打撃練習は、スポーツ界における最高のウォームアップ・ショーだった。彼は全米中でホームランを放ち、カーテンコールを送られた。彼はベースボールの汚名を晴らした。ベースボールの悪いイメージを払拭したのだ」

PED(能力向上薬物)を巡る調査はまだ、その偉業をかすめたりはしなかった。マグワイアは偉大なる巨人として称えられた。

テレビの全国放送で視聴者は、第62号を目撃した。全米の新聞が、翌朝までにニュースを届けようと奔走した。

熱狂はそこで醒めず、9月8日以降にさらなる注目が集まった。マグワイアとソーサは、次にやって来る(自分たちの記録を破る)選手のためにハードルを上げるべく競っていたからだ。3週間に渡るホームラン競争は、70本を放ったマグワイアが66本のソーサに勝利した。しかしソーサは、プレーオフに進出してナショナル・リーグMVPを獲得した。ウィン・ウィンだろう?

ところで、その「次の男」はバリー・ボンズであることが、3年後に発覚した。マグワイアの記録を破ろうとするボンズの挑戦は、少なくともサンフランシスコ周辺のベイエリアを除いては、98年のような熱狂を欠いていた。PED使用をめぐる疑惑が、ボンズに浮上していたからだ。彼は、球界の「ステロイド時代」と言われる時期の象徴だった。6年後にボンズがハンク・アーロンの持つ歴代最多本塁打記録に挑んだときも、やはり熱狂はなかった。

今日のファンは、予想外のパワーを発揮する選手が現れる度に、ステロイドについて話をする。コメンテーターたちが単にあら捜しをしたいだけだとしても、ボンズの記録を破ろうかという挑戦には実際、多くの疑惑の目が突きつけられる。

選手たちは今、未だかつてなく多くのホームラン、そして長打を放っている。今も見ていて楽しいが、20年前ほどの華やかさはない。たとえば、アーロン・ジャッジのモンスターイヤーはニューヨークで話題にはなっただろうが、20年前のマグワイア対ソーサのように、全米が夢中になるなんてことはあり得るのだろうか?

原文:Mark McGwire's 62nd turns 20; why feat may be last of its kind in one respect

翻訳:Muneharu Uchino


【DAZN関連記事】
【必読】DAZN(ダゾーン)の"トリセツ" 最新・2018年版!
ネットでプロ野球中継を視聴する方法を紹介
DAZNでのプロ野球の放送予定や試合スケジュール
DAZNでF1放送を視聴する方法は?
【最新・2018年版】F1の放送予定・レース日程まとめ
ネットでMLB中継を視聴する方法を紹介
MLBの試合日程・放送予定|テレビでの視聴も可能?/2018シーズン

Tom Gatto

Tom Gatto Photo

Tom Gatto joined The Sporting News as a senior editor in 2000 after 12 years at The Herald-News in Passaic, N.J., where he served in a variety of roles including sports editor, and a brief spell at APBNews.com in New York, where he worked as a syndication editor. He is a 1986 graduate of the University of South Carolina.