マイク・トラウトの騒動に見る、MLBの時代遅れ感

Joe Rivera

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海にはたくさんの魚がいるが、マイク・トラウトはひとりしかいない。

MLBコミッショナーのロブ・マンフレッドがトラウトについて間違った発言をしたことを受けて、ロサンゼルス・エンゼルスが声明を発表した翌日、事態は速やかに収束した。トラウト本人が彼らしい良心的なやり方で、声明を発表したのだ。

それが無知によるものだったのか、貧しいボキャブラリーによるものだったのか、あるいはその両方だったのかはわからない。いずれにせよ、トラウトにさらなるスーパースターになることを要求するマンフレッドの試みは、全くもってフェアではない。というか失笑ものだ。なぜMLBコミッショナーが、球界最高の選手のひとり、この時代最高の選手のひとり、そしておそらくは歴代最高の選手のひとりであるトラウトに、さらに何かを求めようとしたのだろうか? トラウトが今よりもビッグな選手でないのは、彼の問題ではない。

トラウトの仕事は野球場に出て、トラウトであり続けることだ。彼がこの8年間、自分自身にスポットライトを当てることなくファンを興奮させ続けてきた事実を語るのに、言葉が足りなくなることはない。特に多くの選手が自分第一主義な今日のスポーツ界において、それは新鮮でさえある。

トラウトはフィールド内外で、ロールモデルとして成長し続けている。ファンは彼がどんな選手であり、どんな人間であるかを理解している。シンプルに、彼はMLBの超一流選手であり、彼がよりビッグネームになるための方法を考えるのは彼の仕事ではない。それはMLBの仕事だ。

トラウトが野球以外の時間をどう過ごすかは、彼の勝手だ。もし野球界のマスコット的存在になりたくなければ、ならなくて良い。彼は既に米国中で、野球というスポーツの新境地を開拓するのに何百時間と費やしているのだ。

マーケティング計画の一部になるよう求めるコミッショナーの提言にトラウトが「ノー」と言ったならば、何か別の方法を探し出すのはMLBの仕事だ。もし「歴代最高の選手のひとり」としてプレーするだけでは充分ではないとしたら、他に何ができるのか私にはわからない。

ひとつの指標だけで選手を評価するのはときに公平ではないが、よく用いられるのはWARだ。トラウトが最初の7シーズンで蓄積したbWARは、54.1。最初の7シーズンで50以上のbWARを記録した選手は歴代でも、アルバート・プーホルス、テッド・ウィリアムス、ウィリー・メイズ、ミッキー・マントル、バリー・ボンズ、ジャッキー・ロビンソン、そしてウェイド・ボッグスだけだ。

MLBのマーケティングは、トラウトには関係のない話だ。MLBは概して、スター選手のマーケティングが下手なのだ。彼らは歴史的な偉業を成し遂げているにも関わらず。スター選手たちのマーケティングは、単にMLBネットワークのハイライト映像や、オールスターゲーム中に30秒の映像、それも選手たちが「フォーナイト」というビデオゲームへの愛を表現するヘンテコな映像を流すだけでは充分でない。

まるで野球界には、色とりどりのスター選手たちが存在しないかのようだ。少し名前を挙げるだけでもトラウト、ムーキー・ベッツ、アーロン・ジャッジ、ハビアー・バエス、フランシスコ・リンドーア、ロナルド・アクーナ、マニー・マチャドといった選手たちがいるのに。

彼らは皆、それぞれがユニークな才能と性格を有している。

彼らは皆、若く新鮮で、それでいて確立されたスーパースターだ。

おそらくジャッジを除いて、米国の全ての家庭が知っているような選手はいない。ジャッジはニューヨークのメディア、そしてヤンキースというブランドの恩恵を受けている。

たとえば、ブライス・ハーパーはどうだ。彼は「メイク・ベースボール・ファン・アゲイン(野球を再び面白く)」運動における騎士の筆頭だ。野球界は、彼の存在を最大限に活用しなければならない。ハーパーとは一体、何を意味するのか? 彼は何を求めているのか? 実際のところ、ハーパーはときに自分第一主義の男として見なされている。野球というスポーツに情熱とエナジーを注ぐ存在であるにも関わらず。

ベースボールは言うなれば、世界中がエミネムの「シング・フォー・ザ・モーメント」を聴いているときになお、エアロスミスの「ドリーム・オン」を聴いているようなスポーツなのだ。どちらもそれぞれ良い音楽だが、伝統とオールドスクールな精神への固執は、ファンを遠のかせてしまう。ベースボールはときに「あの頃は良かった」みたいなノスタルジーに浸ってしまう。TV解説者の中には、今の野球に文句を言いながら、昔と変わらぬ実況席に座っている人もいる。今日の野球がいかにダメなのか、椅子に座って文句をたれる前に、ファンを興奮させる努力をしてみたらどうなんだ?

伝統とは力強いものであり、野球界には過去の歴史と未来の橋渡しをするより良い仕事が求められる。しかし、このスポーツの最も愉快で心温まる部分は、馬鹿げたルールにより制限されてしまっている。たとえば、野球ファンから@PitchingNinjaとして知られているロブ・フリードマンのツイートが制限されたこと。彼は投手たちの凄まじい投球のGIFをツイッターでシェアしていた。ブラックアウトのルールも馬鹿げている。昔ながらの暗黙の了解にしてもそうだ。

考えてみて欲しい。「今こそ進化するときだ」と声を上げる人がいる一方で、選手たちがカラフルなシャツやスパイクを身に着けただけで罰せられるのがこのスポーツだ。ちょっとした個性も、一部のファンや選手たちによる「正しく試合をしよう」という声にかき消される。実際のところ、それは何も意味していないのだが。

こうした問題を解決する方法を考えるのは、野球界の仕事だ。たとえどんなに大変でも、より先進的になることを求められても。

MLBは、ツイッターに好プレーの動画を載せるだけでなく、マイクが拾った場面だけを映すのではなく、あるいは「野球はアメリカのパスタイム(国民的娯楽)だ!」と叫ぶだけでなく、もっと今と向き合わなければならない。そのためにも、まずはスター選手たちをこの国の誰もが知る存在にし、国中でファンの目を開かせるような方法を考えなければならない。

マイク・トラウトの一件は、MLBが抱えている遥かに大きな問題の縮小版だ。なかなかやり方を変えない野球界で、またひとつ新たなパンドラの箱が空いたのだ。

マンフレッドの発言は、間違いだった。今こそ、本物のショーを始めるときだ。

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原文:Mike Trout doesn't have to change a damn thing for anybody

翻訳:Muneharu Uchino

Joe Rivera