ボストン・レッドソックスの現監督アレックス・コーラはヒューストン・アストロズのサイン盗み疑惑にどう関与したのか

Edward Sutelan

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2021年のアメリカン・リーグ・チャンピオン・シリーズで対戦するボストン・レッドソックスとヒューストン・アストロズはどちらも近年にワールドシリーズを制覇したことがあるチームだ。

そして両チームともチャンピオンとなった年にサイン盗み疑惑が持ち上がったことでも共通している。両者を結びつける糸はレッドソックスの現監督アレックス・コーラである。

コーラはアストロズがワールドシリーズを制した2017年に同チームのベンチコーチだった。その後、アストロズはレギュラーシーズンとポストシーズンを通して電子機器を用いたサイン盗みを行っていたことが明らかになった。

レッドソックスは2017年9月にサイン盗み事件による罰金をMLBから科せられ、その後コーラが指揮を執りワールドシリーズを制した2018年にビデオを使用したサイン盗み疑惑で調査を受けた。

 

アレックス・コーラはヒューストン・アストロズ疑惑にどのように関与したか?

レッドソックスの監督に就任する前、コーラはアストロズのベンチコーチだった。アストロズは2017年にワールドシリーズを制覇した。

2020年1月13日に発表されたMLBの調査報告書によれば、コーラはチームのビデオ解析班にサインの情報を盗むことを指示していた。コーラはさらにセンター後方のモニター映像を即座にダグアウトで見れるよう技術者に依頼した。MLBは当時センター後方モニターは選手育成を目的として許可されていたとしている。

報告書は選手たちがセンター後方からのライブ映像を見て、サインを解析し、そしてゴミ箱を叩くことでバッターに球種を伝えていたと述べている。

MLB調査の証言者たちはサイン盗みのほとんどは選手主導で行われ、それ以外に関与したスタッフはコーラだけだったと述べた。だがダグアウトにいた他のスタッフが少なくともバケツを叩く場面を見聞きしたことは明らかだった。

MLBコミッショナーのロブ・マンフレッドは報告書の中で、「コーラはバケツを叩いて球種を知らせることとビデオ解析班がサインを盗むことの両方に積極的に関与した。それによって選手たちの行動を黙認することに繋がった」と書いている。

マンフレッドはさらに2018年のレッドソックスに関する調査が終了するまで処罰内容の決定を保留すると述べた。

 

アレックス・コーラと2018年ボストン・レッドソックス疑惑

レッドソックスのサイン盗み疑惑はアストロズのものに似ているが、MLBによれば、それは「はるかに限定された範囲と影響」に留まるものだった。

2020年4月22日に公開された調査報告書によれば、レッドソックスのサイン盗みはアストロズが行ったもののような大掛かりな仕組みではなかった。ビデオ再生システム・オペレーターのJTワトキンス氏がライブ映像を解析した相手チームのサインを選手たちに伝えていた、というものだ。

MLBは報告書の中で、オペレーターが試合前にサインを選手たちに伝え、試合中にサイン変更があったときも選手たちに知らせていた、と述べた。報告書はさらにそうした情報はレッドソックスが2塁にランナーを置いた場面だけに使われたとし、オペレーターがサインを解析したのはそのうちのごく僅かだったとしている。2018年のMLBシーズンにおいて、ランナーが2塁にいた場面は全体の19.7%だった。

コーラはレッドソックス疑惑ではアストロズ疑惑ほどの関与は認められなかった。MLBの報告書はレッドソックスのビデオ悪用とサイン盗みはワトキンス氏と少数の選手たちの間のみで行われ、コーラはそれを知らなかったとしている。

マンフレッドは調査終了後にコーラは2017年のアストロズ疑惑にのみ関与していたとして、2020年ポストシーズン終了までの停職処分を科すことを発表した。

「コーラには新たな処分を科すことはない。ワトキンス氏が行った行動に関して、コーラは気がついていなかったからだ。だが、コーラはレッドソックスの選手たちにサイン盗みが2018年シーズンのルール上許されないことを伝えることを怠った」とマンフレッドは報告書の中で書いている。

 

コーラに保証されたレッドソックス監督の座

コーラがレッドソックスの監督になることはアストロズとロサンゼルス・ドジャースが戦った2017年のワールドシリーズ前に発表された。シリーズ終了後にコーラは正式に就任した。

レッドソックスが2018年のワールドシリーズでドジャースを5試合で破ったとき、コーラは指揮官の座にあった。シリーズ終了後、コーラは2021年シーズン終了後までの契約延長を2022年の残留オプション付きで受け取った。

MLBがアストロズ疑惑の調査結果を発表した時に、コーラのレッドソックスでの未来も危ぶまれることになった。マンフレッドがレッドソックス疑惑の調査が完了するまでコーラの処分を保留すると発言すると、事態はさらに深刻になった。

2020年1月14日にレッドソックスはコーラを解任した。レッドソックスはドラフトでの指名権を失い、マンフレッドはコーラを2020年シーズン全体で停職処分とした。

新型コロナウイルスの影響で短縮された2020年シーズンをレッドソックスは24勝36敗の成績でアメリカン・リーグ東地区の最下位で終えた。2020年11月にレッドソックスはコーラを監督に呼び戻し、2024年シーズン終了までの残留オプションがついた2年間契約を結んだ。

(翻訳:角谷剛)

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Edward Sutelan

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Edward Sutelan joined The Sporting News in 2021 after covering high school sports for PennLive. Edward graduated from The Ohio State University in 2019, where he gained experience covering the baseball, football and basketball teams. Edward also spent time working for The Columbus Dispatch and Cape Cod Times.