ホセ・アルトゥーベに明らかなイップスの症状。ヒューストン・アストロズはプレーオフ敗退の瀬戸際に

Billy Heyen

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イップスはスポーツ界において完全な説明ができないままになっている数少ない現象のひとつだ。セイバーメトリクスもデータ解析でもイップスは説明できない。イップスについて明らかになる数少ない場面のひとつは誰かがそれにかかっているときだ。

現在、ヒューストン・アストロズのホセ・アルトゥーベ2塁手がイップスにかかっているようだ。

アルトゥーベはこのポストシーズンに入ってからすでに4個の送球エラーを記録している。その中の3個はアメリカン・リーグ・チャンピオンシップ・シリーズのタンパベイ・レイズ戦においてである。最後のエラーは10月13日(日本時間14日)のシリーズ第3戦で、6回にレイズが5点を挙げるきっかけを作ってしまった。その結果、レイズはシリーズ勝敗を3勝0敗とした。かつては素早く、シンプルで、そして滑らかだったアルトゥーベの送球フォームだが、今ではバックスイングに引っ掛かりが見えるようになった。これはイップスにかかった選手によく見られる現象である。

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シリーズ第3戦の試合後にアストロズのダスティ・ベーカー監督は以下のように述べている。

「我々はホセにできるだけのサポートを与えている。誰よりもきつい思いをしているのはホセ本人だ。ホセは真剣に悩み、心を痛めている。彼は我々の一員であるし、我々は皆がこうしたことがくぐり抜けてきた。だが、このようにスポットライトを浴びる状況ではなかったかもしれない。我々全員は彼が苦しんでいるのを見るのをつらく感じている」

アルトゥーベはアストロズの2塁手として、一貫して安定した守備でチームに貢献してきた。2015年にはゴールド・グラブ賞も受賞している。2020年のレギュラーシーズンにおいてさえ、アルトゥーベは48試合に出場して、エラーを4個しか出していない。ところが、ポストシーズンのたった9試合でそれと同数のエラーを出してしまったのだ。

イップスの原因はけっして明らかになることがない。過去にはスティーブ・サックスやチャック・ノブロックらのようなMLBの2塁手たちもイップスに苦しんだ。それがポストシーズンに起きたこともある。2000年のレギュラーシーズンでは新人らしからぬ活躍をしたセントルイス・カージナルズのリック・アンキール投手が、ナショナル・リーグ・ディビジョン・シリーズで突如乱調に陥り、1試合に5個のワイルドピッチを記録したことがある。アンキールはその後、野手としてメジャーリーグに復帰することになった。ここがイップスの説明できない不思議なところなのだが、アンキールは外野から送球することには何の問題もなかったのだ。

2020年シーズンでは2人の選手がイップスからの復活を果たした。2人とも救援投手である。ダニエル・バード(コロラド・ロッキーズ)は2013年以来初めてメジャーリーグのマウンドに帰ってきた。タイラー・マツェック(アトランタ・ブレーブス)もメジャーリーグの舞台に帰ってきた。

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イップスは野球だけに起きる現象ではない。チャールズ・バークレーはゴルフの腕前でも知られているが、スイングを変えようとしているうちに、トップで立ち往生するようになってしまった。それ以来、そのことについて冗談を飛ばしている。

ベイカー監督はシリーズ第3戦の試合後にアルトゥーベはイップスにかかっていると思うかと尋ねられた。選手がイップスにかかっているかどうかを示す明確な基準は存在しない。ベイカー監督は慎重に「私には分からない」と答えた。しかし、ここのところアルトゥーベの送球がかつてないほど乱れている。イップスと呼ぼうと呼ぶまいと、このことはアストロズをプレーオフ敗退の瀬戸際にまで追い詰めた。

「あれほど偉大な選手であり、偉大な男でもあるホセにこんなことが起きてしまっているのを見るのはつらいことだ。それを何と呼べばいいのかは分からない。だが、打撃にスランプがあるように、守備にだってスランプがあってもおかしくない。そしてそれは身体的なことが精神的な問題にさえなってしまう。我々は何としてもこれを乗り越えなくてはいけない」とベイカー監督は述べた。

(翻訳:角谷剛)

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