ベンチコーチの役割は過去30年間、メジャーリーグにおいて日に日に重要性を増してきたが、ベンチコーチが実際のところ何をしているのか、あまり公には知られていない。実際のところベンチコーチは、ベンチで選手たちをコーチするよりも遥かに多くのことをしている。
クリーブランド・インディアンスのベンチコーチであるブラッド・ミルズは、かつてモントリオール・エクスポズとボストン・レッドソックスでもベンチコーチを務めていた。アリゾナ大学時代のチームメイトであるテリー・フランコーナともう40年以上に渡り付き合いのあるミルズは、インディアンスのベンチコーチとして適任者であった。
スポーティングニュースはこの度、ミルズにインタビューを敢行。表には見えにくいベンチコーチの仕事について、話を聞いた。
スポーティングニュース(SN):ベンチコーチの役割は近年、大幅に拡大しています。あなたが1980年に選手としてメジャーリーグに足を踏み入れたとき、多くのチームにはベンチコーチがいませんでした。今日の野球において、ベンチコーチはどれくらい重要ですか?
ブラッド・ミルズ(BM):第一に、ベンチコーチの役割は監督によって変わります。打撃コーチや内野守備コーチが持っているような定められた役割を、ベンチコーチは持っていないことが一般的です。ベンチコーチは監督を助けるため、あらゆる必要なことをするのが仕事です。
ベンチコーチは、監督から心配の種を取り除くことが仕事です。その中には、スケジュールの作成からバスの時間を把握することに至るまで、日中の仕事を支援することが含まれます。その中には組織的な仕事もあり、優れたコンピュータスキルを持つことも助けになります。ベンチコーチは、多くの人々と関わり合います。グラウンドキーパーから旅程を管理する秘書に至るまで、多くの人たちと一緒に仕事をします。早出の練習ができるかどうか、フィールドに確認しに行くこともあります。
監督によっては、スプリングトレーニングの運営をベンチコーチに任せる人もいます。私の監督であるテリーがまさにそうです。冬の間に、約45日間に渡るスプリングトレーニングのスケジュールをまとめます。繰り返しますが、ベンチコーチに求められる役割は監督次第なのです。
SN:あなたはフランコーナと大学で共にプレーし、エクスポズでも一緒にプレーし、フィラデルフィア・フィリーズで一塁コーチとしてフランコーナを指導し、レッドソックスでフランコーナのベンチコーチを務め、そして彼と共にインディアンスに来ました。フランコーナとの親密な関係は、インディアンスのベンチコーチとしての役割にどのような影響を与えていますか?
BM:テリー(フランコーナ)との関係があるおかげで、全てがスムーズに進みます。私は長年、彼と共にいました。私は何より、彼がこのチームをどのようにしたいのかを理解しています。
彼は選手たちにどのようなメッセージを伝えるかを気にかけていて、たとえば彼が報道陣と話をしなければならないときなど、私に選手と話をするよう伝えます。たとえテリーが直接そこにいることができなくても、私が選手に伝えるメッセージがまさに彼が伝えたであろうものであることを、彼は知っているのです。
その後、テリーは私にこう言います。「(選手との会話は)どうたったか?」と。私は彼に説明し、場合によっては議論します。それはつまり、いつも完璧にいくわけではないということです。ときどき、テリーは私に「さて、もう少しばかり引き締めないといけないな」などと言います。選手との会話において、いくつか懸念点があるときです。私は毎日、球場に着くとダグアウトに座って、その夜のラインナップについてテリーと話し合い、その日のスケジュールを整理します。試合の前に、私はラインナップを印刷したり、その他諸々のことをします。私が疑問を持っているときは彼に話をするということを、彼は知っています。
SN:試合中、あなたとフランコーナはどのようなやり取りをするのですか? また、具体的な采配について意見が分かれたときはどうしますか?
BM:試合中、監督とベンチコーチの関係はとても重要です。テリーと私の関係は、私が何かを口にしたとき、彼はその背景、理由まで含めて理解してくれる、そんな関係です。私は何度も、テリーとは試合中に3時間のお喋りをしているんだ、とコメントしました。
一方で、テリーに最終決定権があることも私は理解しています。最終的には、全ての決断は彼の決断になるのです。私たちの話は行ったり来たりしますし、私が同意できないからと言って彼を責めることもないことを、彼は理解しています。
それは本当に、お喋りなんです。私たちは試合について、選手たちについて話し、明日の予定について話します。私たちは、相手投手が前回の対戦で私たちに対してどのような投球をしたかについて、そして今日はどのような調子かについて話します。私は試合中ずっとテリーの隣に立ち、ずっと話しているのです。場合によっては「あの選手にベンチで準備をさせてくれ」とか、あるいはイニングを終えて選手たちが戻ってきたときに、ある選手の足の調子を確認するために「彼と話をしてくれ」といった指示が出ることもあります。それは本当に他愛もない会話で、もしあなたが聞いていたとしても、これといった話を掘り出すことはほとんどないでしょう。それが実に3時間続くのです。
相手がバントをする時、ランナーの走塁を食い止めるため、ファーストとサードの守備に関してかなり多くのことが行われています。野手のポジショニングについて、守備コーチと話すこともあります。打者のスイングについて、投手のピッチングについて、あるいは特定の打者に対する特定の投手のピッチングにいついても話します。前日の夜と同じ話題かもしれませんが、状況は全く異なります。テリーが常に前もって考えていることを、私は知っています。なので私がある状況について彼に尋ねるとき、彼は既にそれについて一通り考えていることを前提に話します。
原文:What does an MLB bench coach do? Indians' Brad Mills explains his role
翻訳:Muneharu Uchino