ブライアン・キャッシュマンは、レースを走る準備が整った車を持っている。
自分で組み立てたのだ。ほとんどのパーツは新品だが、すでに路上テストで実証されている信頼できるパーツもある。走行メーターの数字は大して伸びていない。スピード、パワー、コントロール、持続性、新品のような仕立て、全てを兼ね備えた車だが、キャッシュマンGMはまだパーツを追加している。これ以上に輝かしいモデルを探すのは難しいだろう。
MORE: 今なら無料視聴可。スポーツを見るならDAZN(ダ・ゾーン)に!
そんな車のドライバーを探すにあたって、キャッシュマンGMがこれまで運転経験のない人物を選んだことを懸念する声もある。
その車はもちろん、タレントと期待に溢れる若きニューヨーク・ヤンキースだ。そしてそのドライバーは、キャッシュマンGMが球団の35人目の監督として選んだアーロン・ブーン氏。キャッシュマンGMが、ヘンスリー・ミューレンズ氏、カルロス・ベルトラン氏、ロブ・トムソン氏、クリス・ウッドワード氏、エリック・ウェッジ氏などの候補の中からブーン氏を選んだことが、12月1日(日本時間2日)に報じられた。
それらの候補者はベルトラン氏を除く全員が、リーグでのコーチ経験があるのだ。
ミューレンズ氏はサンフランシスコ・ジャイアンツのベンチコーチ。フィラデルフィア・フィリーズのゲーブ・キャプラー監督のスタッフ入りすることが決まったトムソン氏は、30年近くヤンキースでコーチを務めていた。ウッドワード氏はワールドシリーズに出場したばかりのロサンゼルス・ドジャースで3塁コーチを務めた。ウェッジ氏はクリーブランド・インディアンズとシアトル・マリナーズの監督経験がある。
一方のブーン新監督は、2009年に引退してからESPNでアナリストとして働いていただけだ。
キャッシュマンGMにとって経験を重視しないのは計算だったのかもしれない。今後、彼はブーン監督を自分好みに育て上げることができるのだ。
ヤンキースがジョー・ジラルディ前監督を解雇した際に、キャッシュマンGMとの確執が噂された。それはジラルディ前監督による選手の起用法や、キャッシュマンGMやフロントの分析による指示が増えていたことに起因しているとされている。ジラルディ前監督の激しい、時にロボットのような性格も理由のひとつだったと話す者もいる。
どちらにせよ、キャッシュマンGMが主導権を握っている。そして自分の監督を手にいれた。
決してこれはブーン監督がキャッシュマンGMのイエスマンになり、完全な言いなりになるというわけではない。しかしブーン監督は、自分が運転する車が誰のものかは理解した状態でのヤンキース入りとなるのだ。運転席にいるのはブーン監督かもしれないが、実際に運転しているのはキャッシュマンGMだ。
(後編につづく)