パドレスのダルビッシュ有獲得を米国人記者が高く評価、一方カブスは…

Joe Rivera

パドレスのダルビッシュ有獲得を米国人記者が高く評価、一方カブスは… image

■関連コンテンツ

新しい年、新しいパドレス?

サンディエゴに本拠地を置くこのチームはつい数日前にタンパベイ・レイズの先発投手ブレイク・スネルをトレードで獲得してメディアを驚かせたばかりだ。マイク・クレビンジャーがトミー・ジョン手術を受けてリハビリのために2021年シーズンを全休することになって生じた穴を埋めて余りある、充実した先発ローテーションを作り上げたはずだった。

▶プロ野球を観るならDAZNで。1ヶ月間無料トライアルを今すぐ始めよう

ところがパドレスの補強はまだ終わっていなかった。12月28日、シカゴ・カブスから先発投手のダルビッシュ有を女房役のビクター・カラティニ捕手とともに、7選手が絡む電撃的なトレードで獲得したのだ。カブスは見返りにザック・デイビーズ投手と4人の有望株選手をパドレスから獲得する。

パドレスは優勝を狙うチームがするべきことを完璧に行っている。それは窓をただ開くだけではなく、枠組みから取り外して、常に開放した状態にして、素早い補強を行うことである。

トレードの詳細は以下の通りだ:

パドレス:A評価

有望株選手を残しておくことは冬にはチームを温めてくれる。だが、彼らは10月になってもチームを熱くしてくれるだろうか?

パドレスは充実したファーム層を持つチームが取るべき戦略をまさに行っている。宝くじを取引に使って、実力が保証された確実な則戦力になる野球選手たちと交換することである。パドレスはブレイク・スネルをトレードで獲得し、さらにまたダルビッシュ有も12月28日に獲得した。

2019年のシーズン後半から、ダルビッシュの価値は揺るぎがない。前年と2019年前半に苦しんだ四球の多さを克服し、2019年後半の成績は88回を投げて、防御率は2.95 だった。短縮されたシーズンではあるが、2020年は3.0 fWARの活躍で、サイヤング賞投票で2位に入った。高齢にも関わらず、この活躍は素晴らしい。

▶プロ野球を観るならDAZNで。1ヶ月間無料トライアルを今すぐ始めよう

パドレスは力強い球団経営を行っている。ワールドシリーズ制覇を狙うために十分な実績を持つメジャーリーガーたちを揃え、さらに先発ローテーションの補強を休むことなく行っている。クレビンジャーがトミー・ジョン手術のために抜けた後でも、ただ両手を広げて「何てことだ!」と嘆いていただけではなかったのだ。ダルビッシュだけではなく、ダルビッシュ専門のキャッチャーであるビクター・カラティニまで一緒に獲得するという念の入れようだ。今はパドレスのファンでいるには素晴らしい時期だ。

何にもまして、これこそが良いチームを作る方法なのだ。優勝するためのすべてを本気で行わず、安上がりのファームシステムから有望株選手が出現することをたた祈っているだけの組織が野球界には多すぎる。それはハムスターが車輪を回しながら走って、どこにも行けないようなもので、残念ながらその方法が成功することはない。

レイズやトロント・ブルージェイズのように、若い才能を良い選手に育成することに長けた組織がある。そしてパドレスやかつてのニューヨーク・ヤンキースのように、その才能をさらに成長させることに長けた組織もある。現在のパドレスはその両方の分野で頂点にある。さらに、このトレードでも、パドレスは傘下の有望株トップ10リストから1人の選手も失っていない。何人かは以前そのリストに入っていたが、MLBパイプラインのトップ100人に入ったことがある選手は1人もいない。

2020年のパドレスはワールドシリーズのチャンピオンチームを作り上げるための最高のオーケストラを演奏している。後はそれを2021年に実行に移せるかどうかに注目したい。

カブス:C+評価

シカゴ・カブスがワールドシリーズを制覇したのは2016年のことなのだが、まるで35年前のことのように感じる人は多いだろう。一体、このチームはどうしたのだろう。

カブスがついにビリー・ゴートの呪いを打ち破り、アディソン通り(訳者注:カブスの本拠地リグレー・フィールドがある通り)を人々が踊り狂っていたのは、まるで遠い昔のことのようだ。ダルビッシュを失った今、その思いはさらに強くなった。ダルビッシュはその優勝時のメンバーではなかったにもかかわらずだ。チームの最高の投手を放出し、ジョン・レスターを引き留めず、カイル・シュワーバーとも再契約を結ばず、それ以外にもカブスが行っていることは彼らが近い将来にタイトルを争う気がないことを示している。

もう少し詳しく説明しよう。

カブスは経費削減に動いている。それはシカゴという大都市にあるプロスポーツ組織には相応しいことではないし、カブスという名門チームにとってはなおさらだ。彼らは今オフシーズンで既にいくつかの経費削減を行っており、今後もそれは続くとの噂もある。それはチャンピオンシップの勝利チームを作り上げるか、あるいはチャンピオンであり続けるための道ではない。カブスのその方針はあらゆる方面からの批判を甘んじて受けるべきである。そのことに議論の余地はない。それが低評価の理由だ。

▶プロ野球を観るならDAZNで。1ヶ月間無料トライアルを今すぐ始めよう

だが、もしカブスの動きを正当化しようとするならば、ダルビッシュが来年8月には35歳になること、多額の契約が残っていること(あと3年で約61億円)、ファームとドラフトによる将来のための育成が成功を収めつつあること、などを挙げることができるだろう。その意味ではダルビッシュを放出したことは、あるいは最善の道だったかもしれない。

さらに言えば、カブスがトレードで獲得した有望株選手にはいくつかの見るべきところがあるのも事実だ。

  • レジナルド・プレシアド遊撃手はまだ17歳の若さで、守備と打撃の両面で期待できる選手だ。MLBパイプラインはプレシアドをパドレスの有望株選手30人中11位としている。
  • オーウェン・ケイシー外野手はパワー打者に育ちそうであるが、まだ18歳という年齢を考慮すると、もうしばらくはマイナーリーグで成長する時間が必要になるだろう。
  • MLBパイプラインはスカウティング・レポートでイスマエル・メナをグレゴリー・ポランコに例えている。良い選手のようだ。
  • もう一人の遊撃手であるイェソン・サンタナはレギュラーを狙える逸材だと見られている。

クリスマスには誰もがキャンディーとナッツを欲しがるように、「もしも」と「しかし」はついて回る。だが、4人の20歳以下の有望株選手を育成に定評がある組織に迎え入れることは、将来にいくらかの望みをシカゴに与えてくれる。

ザック・デイビーズを獲得したことも忘れてはならない。デイビーズは安定した先発ローテーションの一角を担える投手だ。短縮されたシーズンではあったが、昨シーズンはキャリア最高の成績を挙げているし、27歳という年齢はまだ成長も期待できる。

▶プロ野球を観るならDAZNで。1ヶ月間無料トライアルを今すぐ始めよう

もっとも、物事はすべて上手くいくとは限らない。選手は故障することがある。思い通りに成長しないこともある。メジャーリーグに昇格しても、そのレベルでは活躍できないこともある。組織が将来のためにマイナー選手の育成に力を注ぐべきではないと言っているのではないが、それと並行してメジャーリーグのレベルで勝利を得るための十分な努力が払われるべきなのである。そのどちらか一方に偏った例を我々はあまりにも多く目にしている。カブスはまだメジャーリーグのレベルに相応しい選手層を持ってはいるが、数年前に優勝して以来、その選手層をさらに厚くすることを怠ってきた。

カブスはより良い有望株選手を獲得することができたのか? ダルビッシュが残していた契約額よりはるかに安上がりであることを考えると、あるいはそうかもしれない。カブスはこのトレードで若い有望株投手を獲得しなかったが、すでに傘下組織にそうした若い有望株投手を数多く擁している。その代わり、期待値の高い4人の有望株選手と即戦力になれる安定した先発投手を手に入れた。カブスのここ数年の球団経営はあまり褒められたものではないが、キャリアの晩年を迎えた投手の代わりとしては最善に近い選択であったかもしれない。

繰り返しになるが、カブスが来シーズンの優勝を狙わないことは非難されるべきだ。特に2020年はナショナルリーグの中地区を制しているのだから。だが将来を見据えた取引だったとすれば、一定の評価に値する。

▶プロ野球を観るならDAZNで。1ヶ月間無料トライアルを今すぐ始めよう

長文補足:

ある意味ではカブスは激怒の対象になるかもしれない。ワールドシリーズ制覇の可能性を早々と消滅させてしまったのだから、それもやむを得ない。カブスはさほど悪くはないラインアップを今でも擁している。カイル・ヘンドリックスとザック・デイビーズが先発投手1番手と2番手にいることは、球界全体を見渡しても、けっして最悪だと呼べるものではない。ダルビッシュを放出したことはカブスにとってすぐに良い効果を生み出すか。おそらくそれはないだろう。ダルビッシュを高く売りつけることはできたか。多分それもなかっただろう。だがもし宝くじが当たるようなことがあれば、カブスにとっては良い結果になるかもしれない。ただそれはすぐに起こりはしないが。

パドレスがここ数シーズンで行ってきたことをいくら褒めても褒め過ぎることにはならない。マニー・マチャドと契約したことを非難した人々もいたが、それ以来のパドレスはチームを良くするための努力を続けてきた。現在のパドレスはワールドシリーズ・チャンピオンの有力候補に相応しいし、さらにその戦力を補充しつつある。

(翻訳:角谷剛)

Joe Rivera