ドジャースのエース、クレイトン・カーショウの去就はどうなる? 球団からのクオリファイング・オファーはなし

Edward Sutelan

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現在、クレイトン・カーショウほどロサンゼルス・ドジャースの代名詞のように語られる選手は他にいないだろう。

カーショウは将来の野球殿堂入りが確実視されている。これまでにサイヤング賞を3回、最優秀選手賞(MVP)を1回、そしてオールスターに8回選出された選手だ。現役選手の中ではもっとも長くドジャースに在籍し、毎年のようにワールドシリーズを狙うまでに成長したチームの中核を担ってきた。

だが、ドジャースは何人かの主力選手がフリーエージェントになり、動きの激しいオフシーズンを迎えようとしている。そのさなか、球団はカーショウにクオリファイング・オファーを申請しないことを選択した。それを受け、33歳になるカーショウは、自動的にフリーエージェントになった。クオリファイング・オファーとは1年契約で、その提示金額はMLBの年俸上位125選手の平均と決められている。今年の金額は1850万ドル(約21億1000万円)である。クオリファイング・オファーの提示を受けた選手が残留を拒否して他球団に移籍した場合、元の球団は補償を受けることができる。

フリーエージェントになったカーショウはドジャースに戻るための保証された契約を失い、来年以降の去就が不透明になった。このスター左腕に次は何が待っているのか?

 

なぜドジャースはカーショウにクオリファイング・オファーを申請しなかったのか?

ドジャースの本当の意図は推測することしかできないが、表面的にはそれほどおかしな決断であるとは言えない。

カーショウの昨シーズンの防御率はルーキーシーズンだった2008年以来最悪の3.55だった。WARの値も、新型コロナウイルスの影響で短縮された2020年シーズンを除き、ワーストタイの3.4に留まった。

シーズン合計投球回数はわずか121回2/3であり、この数字も2020年を除き、故障で苦しんだ2008年以来の少なさだった。7月には上腕部に炎症を起こし、7月3日の先発登板を最後に故障者リスト入りした。復帰したのは9月13日である。

カーショウはさらにシーズン終盤を腕と肘の故障を理由に欠場したまま終えた。「以前から悩まされているのと同じ故障」とカーショウ自身は説明した。

MRI検査では肘の靱帯に損傷は見つからず、カーショウは自らの血液から抽出した多血小板血漿を注射する「PRP療法」を受けることを選択した。ドジャース専門ウェブサイト『Dodger Blue』によれば、カーショウには手術を避ける意図があった。

手術を避けられたことはカーショウにとって大きな意味を持つが、それでも危機を脱したというわけではない。大谷翔平は2018年に肘靱帯を痛め、PRP療法を受けたが、最終的にはトミージョン手術を受けることを余儀なくされた。同じように、ジャスティン・バーランダーもトミージョン手術を回避するためにPRP療法を受けようとしたが、結局は手術が必要になった。

カーショウにトミージョン手術が必要だと主張しているわけではない。だが、カーショウが完全に回復したという保証からはほど遠いということだ。33歳という年齢を考えると、カーショウの腕がこれからどれだけの間持つかはまったく分からない。

こうした故障のリスクと、クオリファイング・オファーを必要とするか、再契約を視野に入れた、他の多くの選手事情を組み合わせて考えてみよう。ドジャースはコーリー・シーガー遊撃手とユーティリティー打者のクリス・テイラーにクオリファイング・オファーを申請した。マックス・シャーザーはトレード期限で加入したので、その申請を受ける資格はない。

ドジャースはすでにメジャーリーグ全体でも最高の年俸総額を支払っている球団の1つだ。そしてシャーザー、クローザーのケンリー・ジャンセン、テイラーの3人とは、なんとしても再契約を結ぼうとするだろう。トレイ・ターナーの存在によって、シーガーとの再契約は優先度が下がっている。

ドジャースはカーショウにクオリファイング・オファーを申請し、カーショウがそれを受け入れると、1850万ドル(約21億1000万円)が年俸総額に加算されることになる。シーズンを長期離脱するか、あるいは別の故障が発生するリスクを取るだけの価値はあるだろうか? どうやらドジャースはそう考えなかったようだ。

 

カーショウとドジャースの次の動きは?

カーショウはフリーエージェントになった。サンディー・コーファックス(投手三冠を史上最多の3度獲得など60年代のレジェンド投手)にようにドジャースの伝説となることを望んでいるかもしれないが、別の球団に移籍する可能性は大いにある。

カーショウ獲得に動くかもしれないチームの1つはテキサス・レンジャーズだ。カーショウは地元ダラスの出身であるし、スポーツ専門サイト『Spotrac』によれば、レンジャーズは2022年に"ぜいたく税(サラリーキャップ等)"が発生するまでのラインにもっとも遠いからである。そして地元紙『The Dallas Morning News』によれば、レンジャーズは先発投手陣の大幅な補強を目論んでおり、カーショウに目をつけることは大いに考えられる。

故障リスクはあっても、カーショウに興味を持つ球団は他にも多くあるだろう。経験豊富な投手であるし、球界全体を見渡しても、マウンド上で屈指の安定性を誇っている。

そして、ドジャースと再契約を結ぶ可能性もまだ消えたわけではない。ドジャースはカーショウを留めて、それ以外の先発投手陣をどうするかを考えるかもしれない。そもそも、シャーザーが戻ってくるという保証はどこにもないのだ。ドジャースの先発ローテーションは依然として苦しい状況にある。

トレバー・バウアーは2021年までで、チームで最大のフリーエージェント契約を結んだが、2022年はオプションを行使し、チームに残留することになった。だが性的暴行の疑いで捜査を受けている最中であり、このチームでの将来についてはまったく分からない。ダスティン・メイはトミージョン手術を終えたばかりで、シーズン中盤までは投球をすることができないだろう。そうなってとしても、すぐに先発ローテーション入りはしないかもしれない。

現時点で先発ローテーション入りが確実だと思われる投手はウォーカー・ビューラーとフリオ・ウリアスしかいない。もし大きな補強がない場合は、トニー・ゴンソリンが先発ローテーション入りの候補になるようだ。

カーショウのドジャース残留はまだ確実視はできない。もしチャベス・ラヴィン(ドジャー・スタジアムがあるロサンゼルス市内の峡谷)でドジャースのユニフォームを着たカーショウを2度と見ることがなくなったとしても、それは驚くには値しない。

(翻訳:角田剛)

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Edward Sutelan

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Edward Sutelan joined The Sporting News in 2021 after covering high school sports for PennLive. Edward graduated from The Ohio State University in 2019, where he gained experience covering the baseball, football and basketball teams. Edward also spent time working for The Columbus Dispatch and Cape Cod Times.