ジャンカルロ・スタントンでもアーロン・ジャッジでも、グラウンドの上では隠れることはないが、近くのセントラル・パークからウォルドルフ・アストリア・ホテルの入り口までの“壁”は、野球界のGM年次総会に出席する多くの人たちをも隠すのに十分なほどの高さだ。
だから、デレク・ジーターがホテルのロビーから公園に向かうときも、マイアミ・マーリンズ新経営陣の顔となった彼と話す機会をうかがって集まっていたメディアから見えなかった。ジーターが角を曲がり、多くの人が集まってくると、アメーバのように歩道を動き出した。そして将来殿堂入りする人物が話すことになったのだ。
水のペットボトルを持ち、笑顔を浮かべたジーターは、報道陣が互いを押し合いながら自分の周りに集まると立ち止まった。かつてのニューヨーク・ヤンキースの顔は、すべての視線が自分に集まるときの感情をよく知っている。彼は笑った。
「誰が最初かな?」
数秒間、誰も何も言わなかった。
ジーターは「OK」とクスリと笑って「来てくれてありがとう!」と続ける。
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質問が始まった。最初は新オーナーについて。2003年からポストシーズンを戦えていない球団を買収した挑戦について。彼のチームが直面している財政状況について。インタビューが始まって5分、最後は、このオフシーズンの最大のトピックであるスラッガーの未来についての質問だ。
「スタントンと話しましたか?」
そしてインタビューは終わった。ジーターは合計で約20分話したが、その大半がスタントンに関するものだった。ことし59本のホームランを打ち、2億9500万ドルという契約を残しているスラッガーのトレードという挑戦は、ここで伝えたように、難しいものだ。
物語をつくるのではなく、みなさんにはジーターのコメントを読み、ご自身で判断していただきたい。いくつかの記者の質問は書き換えているが、それは主にマイクがなかったり、一部の記者が私のiPhoneの届かないところにいたからだ。
記者: スタントンと話しましたか?
ジーター(以下J): まだだよ。
記者: 話すおつもりは?
J: 理由があればね。みんな我々が何をするのかとか、それについてのそれぞれの考えを言っていると思う。ここにはマイケル・ヒルがいるし、どの球団にもそれぞれ改善策を目指している担当者たちがいる。それはマイナーリーグを通じた改善かもしれないし、トレードかもしれない。自分たち自身を成長させることかもしれない。だが、我々は話し合いにオープンだ。みんなと同じようにね。連絡をする理由があるなら、私は連絡する。だが現時点で、連絡をする理由はない。
記者: ベストの選手たちをグラウンドに立たせて競っていくのが目標であれば、開幕戦でスタントンは右翼でプレーするということですか?
J: 分からない。
記者: ですが、今の彼はチームのベストプレーヤーですよね?
J: 今はそうだ。彼は我々のチームにいる。みんながこういう会話をしているね。ジャンカルロは素晴らしいシーズンを過ごした。彼にはトレード拒否条項がある。こうやっていろいろ始まったのは、彼が表立って再建の一員になりたくないと明らかにしたときだと思う。そこからこれらの噂がすべて出回るようになったんじゃないか。未来について言うことはできない。だが、ジャンカルロにはトレード拒否条項がある。
記者: 周囲がそのことを考えたのは、チームを追っていく一部として、長期的に取り組まなければならない財政的な関係があると感じているからです。そして彼は多くの金を手にする。あなた方が財政を整えなければならず、それは大幅なサラリーカットを意味するというのは間違った考えでしょうか?
J: 財政面で整えなければいけないことはある。それは最低限だ。この球団はかなり長いこと金を失ってきた。だから我々はそれを変えなければいけない。その方法は明確ではないよ。みんなが彼を見ているのは、彼が最も金を稼ぐからだ。だが、それは必ずしも移籍するという意味ではない。
(後編につづく)