“シューレス” ジョー・ジャクソン氏の稀少なサインがオークションで2万ドル超え

Sporting News Japan Staff

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野球に関して言えば、数あるお宝の中でも、“シューレス” ジョー・ジャクソン氏のサインは極めて稀少価値が高いもののリストの上位に入る。約1世紀前に活躍したこのスター選手は全く読み書きができなかったのだ。

ジャクソン氏は一度も学校に通ったことがなかった。代わりに幼いころから故郷であるサウス・カロライナ州グリーンビルのブランドン織物工場で父親と一緒に働いたからだ。野球選手への道を歩き始めたのはティーンになるかならない頃だ。

ジャクソン氏はクリーブランド・ナップスに在籍していた1911年シーズンには打率.408の成績を残した。だが、1919年に起きたブラックソックス事件に関与した疑いで野球界から追放された。ジャクソン氏が本当に事件に関わっていたかどうかについての議論は尽きない。ジャクソン氏はその生涯においていくつかの重要な書類にサインをしている。そのうちの稀少な1つが現在LeLands社のオークションにかけられている。入札は金曜(12月6日)まで行われるが、ジャクソン氏がサインした不動産関連の書類は現在までに$20,886(約227万円)の値段に達している。

出品物の公式説明の一部は以下の通り。

「この稀少な書類はシカゴ・ホワイトソックスが用意した不動産関連の支払いバウチャーにジョー・ジャクソン氏がサインしたものです。書類の日付は1916年2月28日、場所はジョージア州サバンナとあり、サバンナの不動産投資会社(the Savannah Realty Investment Corporation)に対して支払われたものです。ホワイトソックスの職員だったハリー・グラビナー氏の口座が入出金に使われました。これは野球の歴史において大変珍しい宝です。状態は非常に良く、2つの縦に折り曲げた線と右端に小さな破れがあります。PSA/DNA社によって認証され、保存されています」。

私は数か月前にジャクソン氏の故郷であるグリーンビルを訪れ、シューレス・ジョー博物館の管理責任者マイケル・ウォラック氏と会話を交わした。グリーンビルでは地域の最も有名な人物であるジャクソン氏はまだ愛されていて、ウォラック氏との会話はジャクソン氏のサインだけではなく、他のもっと多くのことにまで及んだ。博物館はジャクソン氏の遺言書を所有しており、その拡大写真も壁に飾られている(実物は安全な場所に保管されている)。

ウォラック氏が私に語ったところによれば、本物だと証明されたジャクソン氏のサインは6つだけしかないということだが、氏自身は他にもたくさんあるのではないかと考えている。


「もっとたくさんのサインがあるはずだと私が思うわけは、こんな光景が想像できるからだ。誰かがジャクソン氏にむかって、“ジョー、できるだけ上手く書いてくれ”と頼むところがね」。

もっともジャクソン氏は大抵の場合において別のやり方をとったようだ。

「ジャクソン氏は自分の名前を書くことができなかったので、その頃に字を書くことができない多くの人がそうしたように、ただ“X”と書いたようだ」とウォラック氏は言った。「そして、その隣に座った誰かが、“このXはジャクソン氏の正式な署名であることを証言する”と言うわけだ」。

私はLelands社のオークションにかけられている品物についてウォラック氏に尋ねてみた。

ウォラック氏はあの書類は本物であるようだと言った。ウォラック氏によれば、ジャクソン氏のサインを認定するにあたって最も困難なことは、ジャクソン氏は字が書けなかったため、絵を描くときのように名前をなぞったので、毎回のようにその出来栄えが異なることだそうだ。

ジャクソン氏は1950年に遺言書にサインし、その翌年に死去している。

「ジャクソン氏は遺言書にきちんと自分の名前でサインしたかった」とウォラック氏は言った。「ジャクソン氏は妻のケイティさんと練習をしていたらしい。彼らは弁護士事務所に約束の20分前にやってきた。弁護士は彼らに大型の封筒を手渡して、それにサインの練習をするように言った。だから彼らは20分かけてジャクソン氏の名前を書く練習をした。そしてその封筒を捨ててしまったのさ。もしその封筒がここにあれば、一体どれだけの値段がつくか想像できるかい?私はスポーツ界においてその封筒ほど価値があるものは考えつかないよ」

もっとも、ジャクソン氏のサインには“シューレス”の文字はない。ジャクソン氏はそのあだ名を嫌っていたからだ。1908年のサウス・カロライナ州アンダーソンで行われた試合において、ジャクソン氏は足に合わない靴を脱ぎ棄てて、それがこのあだ名の由来になった。

オークションにかけられている書類であるが、ジャクソン氏がサインした唯一の不動産関連の書類というわけではなさそうだ。ジャクソン夫妻は当時グリーンビルの不動産市場で活発に売買を行っていたからだ。

「家をとっかえひっかえしたのはケイティさんのせいだろうね」とウォラック氏は言った。「彼らは多分20ぐらいの家をグリーンビル周辺で買っている。ずっと長くグリーンビルに住んでいたけど、1つの家に1年も住まなかったこともある。ケイティさんがなぜそんなに家を変えたかったのかはよくわからない。あるいはジャクソン氏がいつも遠征で家にいなかったからかもしれない。ジャクソン氏は両親や家族のためにも家を売ったり買ったりしていたらしいけど、ケイティさんがその中心だったと思うよ」。

(翻訳:角谷剛)

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日本を拠点に国内外の様々なスポーツの最新ニュースや役に立つ情報を発信しているスポーティングニュース日本版のスタッフアカウント。本家であるスポーティングニュース米国版の姉妹版のひとつとして2017年8月に創刊された日本版の編集部員が取材・執筆しています。