ベイブ・ルースと比較される事はとんでもない事だ。
ルースがどれだけ才能に恵まれた選手かという事を忘れてしまいがちだが、彼は間違いなく米国文化の象徴でもある。「彼らは~ のベーブ・ルースだ」というフレーズは、ある分野で頂点を極めた者に対して使われる。ルースは何かで1番になる事の象徴なのだ。
ルースが成し遂げた投手と打者としての成功は、スポーツの歴史上一番偉大なものかもしれない。彼が活躍した時代は、ゲームがもっとシンプルで、投球と打撃に対する科学的な理解が欠けており、有色人種の出場がなく競争が緩やかだった。ただ、ルースのようなプレーを今の選手に期待する事は、その選手に対する最大の賛辞であると同時に、厳しい呪いでもある。
日本でのバッターとピッチャーとしての成功を考えると、大谷にベーブ・ルースを重ねるのは自然な事だ。しかし、今や大谷は言葉や文化も違う国の中、最高水準の舞台でプレーしようとしている。しかも彼は、まだ23歳だ。
さらに彼は厳しい監視の中で挑戦を続けなければならない。良いプレーと悪いプレーの全てが細かく分析され、彼が価値あるプレーヤーなのか、エンゼルスは愚かな挑戦をしているのではないかと評価され続けなければならない。
この状況を考慮すると、大谷の二刀流としての成功はほとんど不可能に思える。
しかし、もし彼が二刀流を成功させたらどうだろう?
異常なまでの注目が落ち着き、大谷が自分のバッティングを確立し、打者達をねじ伏せ、エンゼルスきっての強打者となったらどうだろうか? もし大谷が現代のベーブ・ルースという存在に近づいたらどうだろうか? 大谷がスポーツ界のスーパースターになる事を願ってはどうだろうか?
今、彼の将来を断定するのは時期尚早だ。大事なことはルースが野球というものの定義を変えて以来、今まで誰も挑戦してこなかった事に大谷は挑んでいる。大谷が十分な才能を持っている事と、彼の若さでこの挑戦をする勇気があるという事実は評価されなければならない。大谷が予定よりも早くメジャーに来た事と、それによって彼が大量の金を喪失した事も忘れてはならない。
大谷は不可能と思われる事に挑戦している。彼は昨夜メジャー初ホームランを放った。投手として初勝利を挙げてから2日後の事だ。また、ホームランの他に2本のヒットを放っている。
#大谷翔平 がホーム初出場でメジャー初ホームラン!
— スポーティングニュース・ジャパン (@sportingnewsjp) 2018年4月4日
メジャー流のお祝い「サイレント・トリートメント」も初体験。
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大谷は、ゆっくりではあるが着実に落ち着いてきている。スプリングトレーニングの時に見せていた、大きく足を上げる動作も消え、コンパクトで落ち着いたフォームになっていた。これはメジャーの環境に適応した証拠であるし、この変化でボールがとらえやすくなった事は確かだ。あの大きな足上げ動作で昨年.332/.403/.540を記録した選手にとって、フォームの修正は大変な事だ。
大谷は偉大な事に挑戦している。二刀流を成し遂げる事は成功のしるしであるし、彼がベストプレヤーであるかどうかという議論を呼び込む事になる。もしジェフ・サマージャのレベルのピッチングと、400打席&リーグ平均打率の記録を同時に成し遂げたら、MVP候補になるだろう。
スプリングトレーニングに関する不吉なスカウティング・リポートはもう昔の話だ。
大谷の存在には、二刀流への挑戦という事以上に大きな意味がある。彼が今一番面白いプレーヤーであるという事に疑いの余地はない。彼のプレーは絶対に見逃せない。チームメイトは彼がホームランを打った時、本当に楽しんでいたし、皆応援しない分にはいかない。
我々は皆、空前の、一見見込みが無さそうな彼の挑戦に惹きつけられている。大谷は我々が見てきたどの選手とも異なる。大谷という選手は、既存の枠組みを壊してくれる、我々が夢にまで見たプレーヤーなのだ。現在に至るまで第2のベーブ・ルースは現れなかった。投打の両方でゲームを完全に支配するという意味においては、これからもそうかもしれない。しかし大谷はそれを覆すチャンスを得ている。
近年の野球の歴史で、最もエキサイティングな事が起こっている。大谷が投打においてルースほど優れていなかったとしても、彼がとてつもない才能の持ち主である事には変わりない。
SHOwered and ready for a good night’s sleep. pic.twitter.com/eTap1t0Vm1
— Angels (@Angels) 2018年4月4日
まだ4月4日である。大谷はこの挑戦を成功させる事もできるし、失敗させる事もできる。火曜の夜、大谷は偉大な記録への第一歩を踏み出した。また我々は皆、新たなスーパースターの到来を予期した。
原文:Shohei Ohtani inspires awe as he steps toward greatness
翻訳:TATSUYA SATO