アーロン・ジャッジの本塁打数をデータで徹底予測! 歴代強打者たちの記録を破れるか?

Edward Sutelan

アーロン・ジャッジの本塁打数をデータで徹底予測! 歴代強打者たちの記録を破れるか? image

MLB2022年シーズン、アメリカン・リーグMVP候補で本命視されているニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ジャッジ。期待される60本塁打達成が実現すればMVP対抗馬であるロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平を引き離すことになるだろう。歴史的記録の実現性をデータで検証し、ベーブ・ルース、ロジャー・マリス、マーク・マグワイア、サミー・ソーサなど歴代強打者の記録の変遷をエドワード・ステラン(Edward Sutelan)が伝える。

MLBにおけるマイルストーンのひとつ、シーズン60本塁打への挑戦

2022年シーズンここまで、ニューヨーク・ヤンキースの主砲アーロン・ジャッジは歴史的なペースで本塁打を量産している。

ジャッジは2017年のルーキーイヤーで52本の本塁打を放ち、すでにその時点でメジャーリーグ屈指のパワーヒッターと見なされていた。シーズン52本は新人最多本塁打記録でもある。メジャーデビューから671試合目で早くも200本塁打の大台に到達した。これは史上2番目の速さである。

現在、ジャッジはさらに歴史的な記録を追いかけている。これまでのメジャーリーグの歴史で5人しか達成していない、1シーズン60本の本塁打がそれだ。メジャーリーグ記録に追いつくのは難しそうだが、アメリカン・リーグのシーズン最多本塁打であるロジャー・マリスの61本(1961年)は十分に射程距離である。

スポーティングニュースではアーロン・ジャッジの今シーズンここまでの本塁打記録とペースについて掘り下げてみた。

アーロン・ジャッジの2022年シーズン成績

これまでに(現地時間2022年8月21日現在)ジャッジは118試合に出場し、46本の本塁打を打っている。ヤンキースは2022年シーズン終了までにあと40試合を残している(※現地時間8月22日、ニューヨーク・メッツ戦で47号ソロ弾を放った)。

今シーズンのジャッジにはやや好不調の波がある。8月はここまで17試合で4本の本塁打しかないし、4月は20試合で6本だけだった。しかし、5月は12本、6月は11本、7月は13本だった。いったんジャッジが好調になれば、一気に本塁打量産モードに入ることになる。

ジャッジが挙げているほかの打撃成績も素晴らしいものだ。OPSはキャリア最高の1.050 である。その内訳は打率.295、出塁率.393、長打率.657 と、まさに驚異的だ。bWAR数値の7.0 はメジャーリーグ全体で1位である。

アーロン・ジャッジの本塁打ペース

ジャッジの本塁打が最終的に何本になるかを占うにはいくつかの方法がある。最も簡単な方法は本塁打1本にかかる平均試合数から計算するものだ。その方法によると、ジャッジがヤンキースの残り40試合をすべて出場すると仮定して、最終的な本塁打数は62本になる。

しかし、ほかの要素が入り込むことは考えられる。例えば、複数の本塁打を打った試合、好不調の波、などといったことだ。

スポーティングニュースではジャッジの残りシーズンを50000通りの可能性からシミュレートしてみた。ジャッジが残り40試合をすべて出場すると、最終的な本塁打数は何本になるかを確率ごとに示したものだ。

Made with Flourish

最も可能性が高い予想結果は59本塁打で、その確率は11.1%である。そして最低でも59本以上に到達する確率は56.1%になる。

ファンが最も知りたいことは、ジャッジがシーズン60本塁打を達成できるか否かだろう。その疑問に答えるなら、60本以上になる確率は45%であり、60本ちょうどになる確率は10.5%である。ロジャー・マリスが持つ61本の記録に並ぶ確率は34.5%、その記録を破る確率は25.3%だ。

メジャーリーグ歴代最多記録の73本となると、現時点ではその可能性は極めて小さいと述べざるを得ない。バリー・ボンズが持つこの記録に並ぶ確率は0.05%であるし、それを破る74本目に到達する確率は0.02%になってしまうからだ。シミュレーションが出した最高モデルでは、ジャッジの本塁打は75本になるが、その確率は0.01%である。言うまでもないことであるが、実現するとすれば奇跡に近い。

メジャーリーグの長い歴史で、シーズン60本塁打はこれまでに8回しか記録されていない。そのうち2人の選手は複数回それを達成した(マーク・マグワイアが2回、サミー・ソーサが3回)。ジャッジの今シーズンここまでのペースはそうした歴史的な打者たちの何人かを上回る。そのなかにはベーブ・ルースとソーサの1999年シーズンも含まれる。

以下は彼らのチームが経過した試合数ごとの本塁打ペースを示したものだ(データはBaseball Referenceによるもの)。

Made with Flourish

MLBシーズン最多本塁打記録の変遷

シーズン最多本塁打記録は歴史上何回か塗り替えられてきたが、その回数はそれほど多くはない。以下はその記録と達成者を時系列に並べたものだ。

ジョージ・ホール

1876年、ナショナル・リーグが発足1年目のシーズンを迎えた年、フィラデルフィア・アスレチックスに所属していたジョージ・ホールは5本の本塁打を記録した。それより以前の1872年にはボルチモア・カナリーズのリップ・パイクが7本の本塁打を打ったが、その当時はナショナル・アソシエーションという名のリーグだった。1876年にナショナル・リーグがそれにとって代わり、メジャーリーグの組織として現存している。

チャーレイ・ジョーンズ

ジョージ・ホールはイギリス人だったが、そのシーズン最多本塁打記録は1879年にアメリカ人によって破られた。ボストン・レッドストッキングスのチャーレイ・ジョーンズ外野手が9本の本塁打を打ったのだ。この記録はその後4年間続いた。

ハリー・ストービー

アメリカン・アソシエーションが発足した1883年、フィラデルフィア・アスレチックスのハリー・ストービーが14本の本塁打を記録した。シーズン2桁の本塁打数を記録した史上初の選手である。ストービーはその後シーズン10本以上の本塁打記録を5回達成した。最多は1888年の19本である。しかし、その記録は僅かに1年しか続かなかったし、ストービーが本塁打王のタイトルを獲得することは2度となかった。

エド・ウィリアムソン

エドワード・“ネッド”・ウィリアムソンはナショナル・リーグにデビューしてから最初の6シーズンで合計8本の本塁打しか打たなかった。突然ブレイクしたのは1884年だ。シカゴ・ホワイトストッキングスの3塁手だったウィリアムソンはそのシーズンだけで27本の本塁打を放った。この記録は長く続いた。35年後にジョージという名の二刀流選手に破られるまでは。

Babe-Ruth-090115-USNews-Getty-FTR

ベーブ・ルース

ジョージ・ハーマン・“ベーブ”・ルースはボストン・レッドソックスでの最初の5シーズンは抜群の投手としてキャリアを開始した。しかし、第一次大戦によって選手が手薄になった1918年、ルースのパワー溢れる打撃がチーム首脳陣の注目を集め始めた。1919年には投手として登板を続けながら、29本の本塁打を打ち、それまでウィリアムソンが持っていたシーズン最多本塁打記録を更新した。その年を最後に、ルースは本格的な投手として登板することはなくなり、打者に専念することになった。

1920年、ニューヨーク・ヤンキースに移籍した最初のシーズンでルースは54本の本塁打を打った。翌年には59本と記録をさらに伸ばした。そして1927年には、32歳になり、外野を守っていたルースは、前人未到のシーズン60本塁打を達成した。その後も類まれなパワーヒッターをしてキャリアを過ごし、33歳から40歳になるまでの間に合計で298本の本塁打を打った。しかし、シーズン60本に再び到達することはなかった。ルースの記録はその後42年間、もうひとりの「ブロンクス・ボンバー」が現れるまで、破られることはなかった。

ロジャー・マリス

ロジャー・マリスは1960年に最優秀選手賞(MVP)に選出された。39本の本塁打を打ち、打撃成績は打率.283、出塁率.371、長打率.581 という素晴らしいものだった。マリスにとってヤンキースでプレイする最初のシーズンであり、当時のヤンキースはミッキー・マントル外野手が主役のチームだった。翌1961年、マリスとマントルは強力無比の打撃コンビを構成した。マントルはキャリア最高となる54本の本塁打を打った。しかし、マリスの本塁打数はそれを上回る61本だった。ルースがそれまでに持っていたシーズン最多本塁打記録を更新したマリスが2年連続でMVPを獲得した。

マリスはキャリア晩年の7年間では僅か117本しか本塁打を打たなかった。しかし、シーズン61本塁打の記録はその後37年間破られることはなかった。史上2番目に長い記録である。

マーク・マグワイア

1998年のMLBシーズンは野球というスポーツを救ったシーズンのひとつとして長く記憶に残るだろう。1994年のストライキによって失われていた野球に対する国民的な関心を、マーク・マグワイアとサミー・ソーサが繰り広げた本塁打王レースによって取り戻すことになったからだ。9月8日、マグワイアはシーズン62本目の本塁打を放ち、マリスの記録を更新した。

Sosa-McGwire-061120-getty-ftr.

サミー・ソーサ

それで終わりではなかった。9月25日にソーサはホセ・リマ投手から66本目の本塁打をスタンドに叩き込み、その時点でマグワイアを抜き去った。

マーク・マグワイア

ソーサがマグワイアから束の間のリードを奪ったその日、マグワイアはシーズン66本目の本塁打を放ち、再びソーサと並んだ。そしてシーズン最後の2日間に4本の本塁打でソーサを突き放し、シーズン本塁打記録を70本に伸ばした。この記録は3年間続いた。その後マグワイアは1998年シーズン中にステロイドを使用したことを認めた。ソーサはしばしばステロイドに関するスキャンダルに名前が取り沙汰されるが、かつてパフォーマンス増強ドラッグを使用したことを一度も認めていない。

Barry Bonds FTR.jpg.jpg

バリー・ボンズ

歴代最多の通算本塁打記録を樹立する過程で、バリー・ボンズはシーズン最多本塁打記録も達成した。2001年、サンフランシスコ・ジャイアンツで9年目のシーズンを迎えたボンズは、10月5日に73本の本塁打を打ち、マグワイアの記録を更新した。このシーズンから4年連続でMVPも受賞した。ボンズがステロイドの使用を認めたことはない。しかし、バルコ・スキャンダルの聴聞会においてステロイド使用について嘘の証言をしたとして、2007年に司法妨害罪と偽証罪で起訴されている。

原文: Aaron Judge home run pace: Tracking Yankees slugger's MLB HR record chase compared to Roger Maris, Barry Bonds, others
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本版編集部

▶スポーツ観るならDAZNで。スマホやTVでスポーツをいつでも楽しもう

Edward Sutelan

Edward Sutelan Photo

Edward Sutelan joined The Sporting News in 2021 after covering high school sports for PennLive. Edward graduated from The Ohio State University in 2019, where he gained experience covering the baseball, football and basketball teams. Edward also spent time working for The Columbus Dispatch and Cape Cod Times.