アルバート・プホルスが最後の700本塁打達成者に? しばらく次の候補が現れなさそうな理由を数字で解説

Edward Sutelan

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2022年9月23日、セントルイス・カージナルスのアルバート・プホルスが史上4人目となる700本塁打を達成した。記録樹立には長いキャリアが必要になる偉業だけに、この先10年は5人目が生まれないという。その理由について、エドワード・ステラン(Edward Sutelan)記者が数字を紐解きながら解説する。

達成には時間がかかる700本塁打

アルバート・プホルスが通算700本塁打の偉業を達成した。今後しばらくは出ないかもしれない大記録だ。

9月23日(日本時間24日)、ロサンゼルスで行われたドジャース戦でプホルスは2打席連続の本塁打を放ち、MLB史上4人目の700本塁打へ到達した。ほかの3人とはバリー・ボンズ(762本)、ハンク・アーロン(755本)、そしてベーブ・ルース(714本)である。

言うまでもなく、700本塁打とはスポーツ界全体を見渡しても、最も偉大な記録のひとつである。野球の長い歴史を考えると尚更だ。野球の百科事典ウェブサイト『Baseball Almanac』によると、これまでに20258人のメジャーリーガーが現れ、そのうちの0.0197%しか達成していないのである。

ボンズ、アーロン、ルース、そしてプホルスに近づく選手は、少なくともこれからしばらくの間は出てこない。スポーティングニュースでは700本塁打に到達するための道のりを探り、その大台へ到達する可能性がある選手をピックアップしてみた。

700本塁打到達のカギ

700本塁打を達成した選手は史上4人しかいない。従って、彼らのキャリアから共通点を見出すことはさほど難しくはない。

第一にキャリアの長さがあげられる。当然のように思えるだろうが、言うは易く行うは難しなのである。700本塁打を達成した4人は全員が22年以上のMLBシーズンを送った。アーロンは23年である。出場試合数が最も少ないのはルースの2503試合だ。プホルスとアーロンはどちらも3000試合以上に出場し、ボンズは2986試合だった。

それだけの長いキャリアを持つには、若いうちにデビューすることが必要とされる。アーロンのキャリアは20歳で始まり、プホルスとボンズは21歳だった。3人とも早い段階からレギュラーとして活躍した。

ルースが打者に専念するようになったのは24歳のときだ。しかし、その後にシーズン50本以上の本塁打を4回も記録し、その遅れを挽回した。ルース以外の3人を合わせても、シーズン50本以上は1回しかない。ボンズが2001年に達成した73本のメジャー記録である。

次にカギとなるのは安定性である。最低でも10年以上は一定数の本塁打を打ち続けることが必要とされる。ルースは1920年から1932年にかけて、シーズン平均本塁打数が46本だった。アーロンの安定性はさらに驚異的で、1957年から1973年にかけてのシーズン平均本塁打数は39本である。ボンズは1995年から2004年までの間をシーズン平均で44本塁打を記録した。プホルスはキャリア最初の11シーズンで平均40本塁打だった。

そして彼らはキャリアを通して、その高いペースを維持した。野球データ解析ウェブサイト『Baseball Reference』によると、プホルスとアーロンは162試合で37本ペース、ボンズは41本、ルースは46本である。もちろん、ルースは1シーズンで162試合に出場したことは一度もない。その頃のアメリカン・リーグは試合数が現在より少なく、162試合制に移行したのはリーグか拡張された1961年のことだ。

次に700本塁打を達成する選手は誰か

次に700本塁打へ到達できる選手を予測することは容易ではない。

現役選手でプホルスの次に来るのは、デトロイト・タイガースのミゲル・カブレラで506本だ。しかし、カブレラは39歳であり、あと残りのキャリアで194本の本塁打を打つとは考えにくい。その次はワシントン・ナショナルズのネルソン・クルーズで459本だ。41歳を過ぎてから241本の本塁打を打つとしたら、野球界のトム・ブレイディと呼ばれるだろう。

下は現役選手の通算本塁打数ランキングと年齢である。

選手名  年齢 通算本塁打数
アルバート・プホルス 42 700
ミゲル・カブレラ 39 506
ネルソン・クルーズ 41 459
ジャンカルロ・スタントン 32 375
マイク・トラウト 30 346
ジョーイ・ボット 38 342
ロビンソン・カノ 39 335
エバン・ロンゴリア 36 329
ジャスティン・アップトン 34 325
ポール・ゴールドシュミット 34 315

全員が最低でも30歳以上である。30歳の時点でアーロンの通算本塁打数は366本だった。ボンズは292本、ルースは309本、そしてプホルスは408本だった。

ジャンカルロ・スタントンは注目するべき存在だ。32歳で、ここまで162試合平均43本の本塁打を打っている。しかし、あまりにも故障が多いことが問題だ。直近の4年間で、僅か282試合にしか出場していない。今シーズンここまでは28本で、昨シーズンは35本だった。もしシーズン平均35本をこれから続けるとすれば、700本塁打へはあと9.3 年で到達する。そのときには41歳になっている。プホルスが33歳から41歳になるまでのシーズン平均本塁打数は23本だった。

スタントンと同じように、マイク・トラウトもまた故障が多い。2016年以降、140試合以上に出場したシーズンは1回しかない。それでも本塁打を量産していることには驚くしかない。今シーズンここまでは108試合に出場して36本の本塁打を打っている。2012年から2019年までのシーズン平均は35本である。その35本ペースを維持すると、700本塁打へはあと10.1 年で到達する。そのときのトラウトも41歳になっている。やはり、故障の多さが問題になるだろう。

ブライス・ハーパーとマニー・マチャドは、あるいは最も興味深い選手かもしれない。2人とも19歳でデビューし、現在は29歳である。30歳未満で通算280本以上の本塁打を打っている現役選手はこの2人だけだ(9月23日時点で、ハーパーは284本、マチャドは281本)。他に30歳未満で通算220本以上の選手はいない。ハーパーがプホルスと同じ42歳で700本塁打に到達するには、あと13シーズンに必要とされる平均本塁打数は32本となる。マチャドの場合は32.2本だ。

ハーパーとマチャド以外には、少なくともここしばらくの間は可能性がありそうな選手は見当たらない。大谷翔平はどうなのだと尋ねる人もいるだろう。ロサンゼルス・エンゼルスの二刀流スーパースターは28歳だが、ここまでの通算本塁打数は127本でしかない。700本塁打へ到達するための573本をこれからの13シーズンで打つには、シーズン平均でおよそ44本が計算上必要になる。

あるいは25歳以下の若い選手を見るべきなのかもしれない。以下は可能性があると思われる選手だ。

選手名 デビュー年齢 現在の年齢 通算本塁打数 シーズン平均
ラファエル・デバース 20 25 139 23
フアン・ソト 19 23 123 25
ロナルド・アクーニャ・ジュニア 20 24 118 24
ブラディミール・ゲレーロ・ジュニア 20 23 102 26
フェルナンド・タティス・ジュニア 20 23 81 27

このリスト内ではブラディミール・ゲレーロ・ジュニアが最も大台達成に近いと思われる。最初の2シーズンは平均で24本塁打だったが、直近2年間は78本、シーズン平均39本である。カブレラとよく比較されるパワーヒッターだ。

フアン・ソトは選球眼の良さで知られているが、2019年にはわずか20歳で34本塁打を記録した。昨シーズンは29本だ。もう少しパワーが必要になるだろう。

フェルナンド・タティス・ジュニアは昨シーズン42本の本塁打を打った。しかし、2022年シーズンを故障欠場し、さらに禁止薬物による出場停止処分まで受けた。ラファエル・デバースは2021年に38本の本塁打を打ち、2019年から2022年まで平均32.3本だ(新型コロナウイルスの影響で短縮された2020年シーズンを除く)。

60戦に短縮された2020年シーズンは、このリストにあるすべての選手のシーズン平均本塁打数を押し下げてしまった。ロナルド・アクーニャ・ジュニア は2019年に41本塁打を記録したが、直近の2年間はそのレベルではなく、192試合で37本に留まっている。

プホルス、ボンズ、アーロン、そしてルースに肩を並べられる選手は出るのだろうか。可能性はもちろんある。MLBがこれからも長く続けば、いつかはそんな選手が現れるだろう。しかし、現地点では近くまで来ている選手はいない。

原文:Who will be the next member of the 700-HR club? Why Albert Pujols might not have company for a long time (if ever)
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本版編集部

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Edward Sutelan

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Edward Sutelan joined The Sporting News in 2021 after covering high school sports for PennLive. Edward graduated from The Ohio State University in 2019, where he gained experience covering the baseball, football and basketball teams. Edward also spent time working for The Columbus Dispatch and Cape Cod Times.