アトランタ・ブレーブスのワールドシリーズ制覇があまりにも予想外だった21個の理由

Ryan Fagan

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ブレーブスが敵地ヒューストンでワールドシリーズ制覇を決めた。球団創設以来4回目の戴冠であり、1966年に本拠地をアトランタに移してからは2度目である。

今年の優勝はその4回の中でもっとも予想外の出来事だった。ある意味ではもっとも特別な優勝になるかもしれない。ブレーブスのファンにとっては一生忘れることのない記憶として留まるだろう。

11月3日(日本時間4日)、2021年ワールドシリーズ第6試合でブレーブスは7対0で勝利し、シリーズ優勝を決めた。そのことがあまりにも予想外な出来事であったかを示す21個の理由は以下の通りだ。

 

1. プレーオフ進出チーム内で最少勝利数

最初に客観的で比較可能な事実から始める。ブレーブスはレギュラーシーズンで88勝しかしていない。プレーオフに進出した他のすべてのチームは最低でも90勝以上している。そのチームがワールドシリーズを制覇することは不可能ではなくても、予想外であったことは分かるだろう。

 

2. ロナルド・アクーニャ・ジュニアの不在

ブレーブスが才能ある選手たちを組織内に数多く抱えていることは間違いない。だが、その中でも最大の才能と言えばロナルド・アクーニャ・ジュニアであることに異論の余地はないだろう。これからのキャリアで、最優秀選手賞(MVP)を何回でも獲得しても不思議ではない選手だ。7月にアクーニャが前十字靭帯断裂で戦列を離れたとき、誰もがブレーブスのワールドシリーズ制覇の夢は断たれたと思ったに違いない。強敵のいないナショナル・リーグ東地区を制することは可能かもしれないが、チーム最高の選手を欠いてしまっては、10月のプレーオフを勝ち進むことは不可能に見えたからだ。

 

3. 勝―負―勝―負―勝―負―, etc …

ブレーブスは勝率5割ライン付近をずっとウロウロしていた。前半戦の最終試合に負け、後半戦の第1試合に負け、その後はなんと18試合も連続で勝ちと負けを交互に繰り返した(中止になった試合がシーズン後半に振り替えられたことで、記録としては途絶えた)。借金2から借金3になり、また借金2に戻り、すぐに借金3になる。そのようなことを繰り返した。

この連続記録が終わりに近づいた頃、「波に乗るのは本当に難しかった。これで調子が上向きになったかと思うと、翌日はまた負けてしまう。そんなことの繰り返しだった」とダンズビー・スワンソン遊撃手がスポーティングニュースに語っている。

もちろん、最終的にはチームは上昇した。

 

4. 長かった借金生活

ブレーブスは8月6日に本拠地でワシントン・ナショナルズに8-4で勝利するまで勝率5割を越えることがなかった。セントルイス・カージナルスにシリーズ3連勝した直後だった。シーズン開幕から4か月たったその日までずっと負け越しという不名誉な戦績だったチームは、ブレーブス以外にはテキサス・レンジャーズ(シーズン102敗)とマイアミ・マーリンズ(シーズン95敗)だけだった。

 

5. 戦力不足の救援投手陣とわずかな補強

ブレーブスが行った外野手たちの補強については後に語るが、救援投手陣の改善についてはこれまでにあまり語られることがなかった。

野球殿堂入りも果たしているトム・グラビン元投手は現在『バリー・スポーツ』の解説者を務めている。そのグラビン氏は先週末にスポーティングニュースとの電話インタビューに応じ、「シーズン前半、ブレーブスの救援投手陣はとても不安定だった。チームが負けた試合はいつも救援投手が悪かった。その逆もあったけどね」と言った。

シーズン前半、救援投手陣全体の防御率は4.58だった。シーズン後半はそれを3.24まで改善した。外野のテコ入れと異なり、この改善はトレード期限ぎりぎりに行った補強の結果ではない。唯一、リチャード・ロドリゲスだけがトレード移籍して救援投手陣に加わったが、ポストシーズンにはベンチ入りすらしなかった。

「毎日試合に出ているうちに自信をつけていったのだろう。そのうちに結果も安定してきたしね」とグラビン氏は言った。

 

6. 強敵相手の低い勝率

レギュラーシーズンにおいて、ブレーブスはロサンゼルス・ドジャースに2勝4敗、ボストン・レッドソックスに1勝3敗、タンパベイ・レイズに1勝2敗、そしてサンフランシスコ・ジャイアンツとは3勝3敗だった。さらには、トロント・ブルージェイズには0勝6敗だった。ブルージェイズはシーズン91勝を挙げたが、プレーオフには進めなかった。プレーオフ進出を果たした全チームのうち、ブレーブスが勝ち越したのはカージナルスだけだ。そしてその勝利はすべてカージナルスが驚異的な連勝記録を始める前のことである。

 

7. マーセル・オズナの不在

どのシーズンであっても、前年度のMVP投票で6位に入った選手を失うことは大きな痛手だ。だが今シーズンのオズナは不調にあえぎ、次いで故障を負い、ついには家庭内暴力で逮捕されて、シーズンを棒に振った。ブレーブスはすぐにオズナを諦めるしかなかった。

 

8. ホルヘ・ソレアがカンザスシティ・ロイヤルズに在籍していたときの成績

ソレアが第6試合で場外に放った特大の本塁打は誰もが忘れないだろう。だが、ロイヤルズのファンだけは忘れたがるかもしれない。

ロイヤルズに在籍していた94試合で、ソレアの成績は打率.192、出塁率.288、本塁打13本、bWARrは-1.4、OPS+ 76、だった。ソレアがトレード市場にいることは周知の事実ではあったが、ブレーブスは他チームと競合する必要はなかった。移籍後のソレアは生き返り、55試合で14本の本塁打を打ち、bWARrは1.0、OPS+ 128の成績を挙げた。

 

9. エディ・ロザリオがクリーブランド・インディアンスに在籍していたときの成績

ロザリオはミネソタ・ツインズでは数シーズンで良い成績を残したが、今年のオフシーズンにクリーブランド・インディアンスと1年契約を結んでからはまったく振るわなかった。ブレーブスがインディアンスにパブロ・サンドバルをトレードしたとき、インディアンスは代わりにロザリオを放出することをためらわなかった。ロザリオのシーズン残りの年俸はブレーブスが肩代わりした。移籍後の33試合でロザリオが放った7本の本塁打はインディアンス在籍時78試合で打った数と同数である。ソレア同様、OPS+の数値も急上昇した(86から131)。

ロザリオについては後にまた触れる。

 

10. ジョク・ピーダーソンがシカゴ・カブスに在籍していたときの成績

ここまで見てきた通り、ブレーブスは楽天的なのだと言えるだろう。賢明であることも疑いようがない。低リスク、高リターンの選手たちを集め、彼らが新天地で心機一転することを期待したのだから。

メジャーリーグに昇格してからの5シーズン(2015-20)、ピーダーソンは平均して25本の本塁打、出塁率は.339、OPS+は119の成績を残した。そして今年のオフシーズンにはカブスと1年契約を結んだ。ブレーブスに移籍するまでの成績は出塁率.300、OPS+は91だった。移籍後も成績はぱっとしなかった(OPS+ 96)が、ブレーブスはピーダーソンの強打を抜きにしてはプレーオフの最初の2シリーズを勝ち進むことはできなかっただろう。胸にぶら下げた真珠のネックレスはチーム躍進のシンボルにもなった。

 

11. 過去のワールドシリーズで喫した本拠地5連敗

もちろん、これは2021年ワールドシリーズには無関係であるが、ブレーブスはそれ以前のワールドシリーズで本拠地5連敗を喫していた。1999年の第1,2試合と1996年の第3,4,5試合である。どちらの相手もニューヨーク・ヤンキースだった。

 

12. チャーリー・モートンの腓骨骨折

ブレーブスのエースはマックス・フリードかもしれないが、投手陣のリーダー格はチャーリー・モートンだ。そのモートンは腓骨を骨折するまでに、たったの2回1/3しか投げられなかった。ブレーブスはワールドシリーズに先発投手3人で臨み、第1戦の3回でその数は2人に減ってしまった。

 

13. タイラー・マツェックの4年間に及ぶメジャーリーグ不在

ブレーブスの最高の救援投手であるマツェックは2016年から2019年までの4シーズン全期間でメジャーリーグにいなかった。

 

14. ディラン・リーの先発登板

驚くべきごとに、第4試合で先発投手を務め、ブレーブスに勝利をもたらしたリーはそれまでにメジャーリーグで2イニングしか登板経験がなかった。キャリア通算で、ある。

 

15. カイル・ライトの救援登板

そしてさらに驚くべきことに、リーの後にマウンドへ登ったライトは2021年シーズンで6回1/3しかメジャーリーグで投げていなかった。このような継投策は9月にプレーオフ進出を諦めたチームには通用するかもしれないが、ワールドシリーズの舞台ではあり得ないはずである。

 

16. タッカー・デービッドソンの先発登板

第5試合でブレーブスが先発のマウンドに送ったのは新人のデービッドソンだった。これまでにメジャーリーグでは5試合しか先発経験がなかった。2020年に1試合、そして今シーズンは4試合である。ワールドシリーズ第4、5試合に経験の浅い投手を起用したブレーブスの戦略は特筆されるべきである。

 

17. ワスカル・イノアの故障

ナショナル・リーグ・チャンピオンシップ・シリーズ(以下、NLCS)の第4戦まで、ブレーブスのブルペン事情は比較的平穏だった。その試合はイノアがオープナーとして登板する予定だったからである。今シーズンは故障が多かったが、それでも91回を投げ(17試合に先発、1試合に救援)、ブレーブスの投手陣を支える存在だった。ところが、第4試合が始まる数時間前に、ブレーブスはイノアが故障のためにベンチから外れることを発表した。それはワールドシリーズにも出場できないことを意味した。

 

18. クローザーのウィル・スミス

ウィル・スミスは2021年シーズンをブレーブスのクローザーとして十分な活躍をした。セーブ数は37個、防御率は3.44である。だが、ブレーブスのファンが若干の不安を抱いたことを責められまい。短縮された2020年シーズンのFIPは7.38であったし、ドジャースを相手にしたNLCSの第4、5戦で炎上してしまったからである。2021年のレギュラーシーズンもスミスは被本塁打の多さが目立った(11本)。しかし、プレーオフに入ると一変し、信じがたい成績を挙げた。11回を投げ、6セーブを挙げ、防御率は0.00である。

 

19. エディ・ロザリオ、パート2

ロザリオがNLCSで見せた活躍はかつてのマーク・レムキーがポストシーズンで見せた活躍を彷彿させるものだった。ブレーブスのファンはそれを鮮明に覚えていた。ロザリオは第2試合で4本の安打と1打点を挙げ、第3試合でも1打点、そして第4試合で2本の本塁打と4打点を挙げた。ドジャースの警戒が強まる中、ロザリオはさらに第5試合で2本の安打、そして第6試合ではブレーブスが4回に4-1で勝ち越すことになったスリーランを含む2本の本塁打を放った。

ロザリオはツインズ在籍時にポストシーズンで6試合に出場したことがある。その成績は打率.217、出塁率.250というもので、ツインズはそのすべての試合で敗北した。

 

20. マックス・フリードの足首

第6試合の初回で1塁カバーに入ったフリードがマイケル・ブラントリーに足首を踏まれた再生シーンはブレーブスのファンを脅かした。この大事な場面で、第1戦に起きたモートンの腓骨骨折と同じ悲劇が起きたのではないかと思われたからだ。

だが、フリードの足首は大事には至らなかった。それどころか、圧倒的だった。6回を投げ、ヒューストン・アストロズの打撃陣にわずか3本のシングルヒットを許し(そのうちの2人はダブルプレーで消え去った)、5個の三振を奪った。

 

21. アトランタのスポーツ史が物語るその勝負弱さ

28ー3.

ブレーブスは1996年のワールドシリーズでヤンキースと対戦し、敵地で行われた第1、2戦に連勝したが、その後に4連敗を喫した。その中には本拠地アトランタでの3連敗も含まれる。あとは"28ー3(※編集部注)"といえばわかるだろう。

※2017年2月5日の第51回NFLスーパーボウルにおいて、アトランタ・ファルコンズが第3クォーター半分時点で"28-3"とリードを広げ、勝利は確実に見えたが、そこからニューイングランド・ペイトリオッツの猛反撃を浴び、28ー34で大逆転負けした。当のブレーブスもまた1966年のアトランタ移転以降、5度の地区優勝がありながら、ワールドシリーズ制覇は2021年以前、1995年の1度のみだった。勝負弱さでは定評があるアトランタのスポーツ史にとっても、2021年は予想外な年だったといえよう。

(翻訳:角谷剛)

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Ryan Fagan

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Ryan Fagan, the national MLB writer for The Sporting News, has been a Baseball Hall of Fame voter since 2016. He also dabbles in college hoops and other sports. And, yeah, he has way too many junk wax baseball cards.