現在はスパンのいとこが通っている彼の母校、タンパ・カトリック高校も、彼の帰郷の恩恵を受けている。同校野球部のコーチ、タイ・グリフィンは、スパンを指導したことはないが、レイズの一員となったスパンを見て興奮している人物の一人でもある。
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「レイズが彼を獲得する可能性があると知ったときは、まだ正式発表の前だったけど大勢の人が沸き立っていたよ」。1988年のオリンピック金メダリストでもあるグリフィンはそう話した。「これまでにも何回か、レイズと対戦する彼をスタジアムに見に行ったことはあった。でも、今は地元のユニフォームを着ている姿を見ることができる。こっちのほうが良いね」。
ドワイト・グッデンや、ゲイリー・シェフィールドと共にタンパ・プレイング・リトルリーグで育ったグリフィンは、スパンが同校の卒業生であると知ったのはコーチに就任してからだという。スパンは現在も時々母校で練習したり、野球部がチャリティイベントで寄付金を募ると、頻繁に支援の手を差し伸べたりしているそうだ。
グリフィンと彼の教え子数名は、レイズでプレーするスパンの姿を一目見るため、すでに本拠地トロピカーナ・フィールドに足を運んだという。
「タンパ・カトリック高校全体にとっても絶対に有益なことだ。大リーグで活躍する卒業生が帰郷して生まれ育った町でプレーするなんて。私の教え子たちは、自分たちが普段使うグラウンドでかつてプレーしていた選手の試合を見に行くことができるんだ」
球団再建を進めるレイズで、数少ないベテラン選手の一人であるスパンは、チームにとっても貴重な追加選手であった。彼は昔ほど驚異的なセンターではなくなってしまったものの、メジャー11年目となった現在でも、スピードと力強いバッティングと強固な守備を見せている。また、これまでの経験を活かしたリーダーシップも発揮している。
「彼は熟練の選手だ。試合の中で多くの成功を経験している」。レイズの外野手ケビン・キアマイアーはスポーティングニュースにそう語った。「このチームには、彼のように指導してくれる経験豊富な選手が必要なんだ」。
レイズへの移籍前、ジャイアンツでスパンと共にプレーした経験を持つリリーフ投手のセルジオ・ロモは、スパンについて「“言葉づかいの穏やかな人物”だが“彼と会話する人は、聞き役に徹することになる”」と冗談交じりに話していた。特にタンパ地区のおいしい店についての話をするときはそんな調子だという。
スパンの帰郷が、あらゆる面で成功を収めているのは明らかだ。
しかし、それも長くは続かないだろう。今シーズン、早くも最低レベルの成績を記録しているレイズにとって、スパンは選手として活躍するよりも、トレード要員としてチームに貢献することになるだろう。最近のレイズにはベテラン選手が長く在籍しないのもそのためだ。
「彼がどれだけ長くチームに在籍するかは分からないね。それがこの帰郷の残念な部分だ」グリフィンはそれまでの興奮を抑えて、そう話した。「彼がいまだにヒットを打てて、チームを優勝に導けるような存在なら、地元に長くはとどまれないだろうね」
彼の母親ワンダも、概ね同意見のようだ。彼女は常日頃から、息子にタンパベイの地でキャリアを終えてほしいと望んでいた。
「こんなに早くとは予想していなかったけれどね」
今後の新たなトレードの可能性について聞かれた彼女は、「それならそれで仕方がないわね」と話した。
今のところ、スパンにとっては理想的な環境だ。トレード当初は確信が持てなかった彼も、最近ではメジャーリーグでのホームランを夢見る10代の少年のように、自身の出場した試合を思い返している。
「まるで夢がかなったようだ。地元の景色を目の前にプレーできて、毎日家から球場まで橋を渡って30分ドライブできるなんて最高だ。ただただ、最高だよ。こんなことが現実になるとは思いもしなかった」
原文:Tampa native Denard Span at home in Rays uniform — and mom is thrilled
翻訳:日本映像翻訳アカデミー