どっちが正しくてどっちが悪い? マクレガー vs. マリナッジ論争

Steven Muehlhausen

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UFCパフォーマンス・インスティチュートの中で何が起こったのか。コナー・マクレガーとポール・マリナッジだけが、真実を知っている。

予想は十分についていたはずの急展開。2階級制覇を達成したボクシングの元世界チャンピオンで、現在は米国ケーブルテレビ局『ショウタイム』のボクシング・アナリスト、マリナッジが、8月3日(木)、参加していたマクレガーのトレーニング・キャンプから離脱。マクレガーとフロイド・メイウェザーとの対戦まで、残り3週間ちょっと、という時のことだった。

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マリナッジはインスタグラムを通じ、なぜ自分がラスベガスの同キャンプを後にしてニューヨークに戻るかを説明した。水曜夜に行われた12ラウンドのスパーリング・セッションで、UFCライト級王者のマクレガーがマリナッジを倒したかのように見える写真が、翌木曜日に公になったのだ。

以下、マリナッジのインスタグラムより。

「オレはただ、はっきりさせたい。今日、マクレガーのトレーニング・キャンプから離脱する。オレはただ、誠意でここにやってきたし、サポートするつもりでいた。これほど大規模なイベントの一部に参加できるチャンスということに、興奮してもいた。コナーとオレは、リング上ではお互いにリスペクトしていると信じているし、2回のスパーリング・セッションを良い感じでやることができて、お互いから学ぶことができたと思う。リング以外のところで起きたこと、それからトレーニング・キャンプ内でいくつか、同意できないようなことがあって、今日の決断に至った。オレ自身のトレーニングキャンプではないわけだから、オレはあれこれ条件を決められる立場にはいない。だが、参加したいかどうかは、オレが決めることだ。コナーとやった2回のスパーリング・セッションの中で見た、戦略的なことについては、オレは何も暴露したりするつもりはない。あまり意味のないことかもしれないが、約束しよう。オレが不快に思ったことに関しては、今後、話していこうと思う。今後の調整の中、マクレガーのチームの健闘を祈りつつ、『ショウタイム』での仕事のため、ベガスに戻るのを楽しみにしている」
 

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こうしてマリナッジ側からの発言は既に見聞したものの、この問題についてマクレガー側からはなんの声明も出されておらず、おそらく、今後も出されることはないだろう。誰が正しくて誰が間違っているか、ということに関して、双方の「論点」を、ここで考察してみよう。

今回のトレーニング・キャンプ参加が決定する以前、マリナッジはマクレガーについて「ボクシングで対戦することなしに、メイウェザーと闘いたがっている」と批判しており、マクレガーはトレーニングの中でマリナッジに仕返しをしようとしていた……と考えると、この2人のパートナーシップが、メイウェザーとマクレガーによるプロモーションのための世界ツアーに先立って公表された時点で、あまり賢明なプランではないことは目に見えていた。

ただし、アマチュアとしてもプロとしても、ボクシングの試合経験のないマクレガーにとっては、今回のパートナーシップはまったく最もらしい話ではあった。マリナッジのような経験を持つ人物を連れてきて、スキルを習得し、過去のメイウェザーの試合の実況をしたことのある人物の頭脳を借りて、現代のベストボクサーたるべき要件の一部始終を学ぶことができる。

またマリナッジにとっては、ジムに戻って鈍った体を鍛えなおし、自分にはチャンスがなかった「打倒メイウェザー」の功績を達成しようと目指す人物の手助けをし、かつ『ショウタイム』のPPV(特定の番組ごとに支払う有料放送)でその試合を実況する時には、世界中の誰よりも深い洞察力を持ってして、解説することができる。

マリナッジがどうして気分を害したのか、その理由は分かりやすい。かつてのUFCの経営者、そして現在はその一部を所有するロレンゾ・フェティータ、UFC代表のダナ・ホワイト、そしてマクレガーの取り巻きたちが2人のスパーリング・セッションを見守る中、マリナッジは奇襲攻撃を受けたような気分だった、という。

マリナッジは現地時間8月3日の夜、スポーツ専門チャンネルの『 ESPN 』に対し、こう話している。

「オレはこのイベントに参加したいとは思ったが、話のタネになりたくはない。そして今回、オレは話のタネになってしまった。マクレガーのゲームプランとか、何を練習しているかとかについては、情報を漏らすつもりはない。オレはそんなことをするような人間ではない。でも今回のことは、大きな失態だった。馬鹿げた見世物になってしまった」

「そして、オレはあのスパーリングのビデオを公開したい。UFCパフォーマンス・インスティチュートは絶対にそのビデオを持っているはずだ。今は公開できないのは承知している。だが、コナー、もしアンタがホントに男なら、本当は何が起きたのかを見せるべきだ」

マリナッジは、マクレガー側から見たら、コトをいくらか大げさに取りすぎ、という感もある。マクレガーはUFCといまだ契約中にあって、彼ら側に所属する人物でもあるわけで、フェティータとホワイトはあの場所にいる当然の権利があった。フェティータとホワイトにしてみれば、ボクシングには全く経験のないマクレガーを、現存する世界一のボクサーと対戦させることで大きなリスクを負っており、マリナッジほどの専門的な技術を持つ人物とスパーリングする様子を見てみたいと思ったのは当然のことだったろう。

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マリナッジが気分を害する権利があるのは、あの一連の写真がマリナッジにとってはベストの位置ではなかったことだ。特に、床に倒れているマリナッジとその向こうに立つマクレガーが写った一枚、それから左手がマリナッジの顔に当たっている1枚などが、それだ。写真の公開に先立って、2人のいずれも、あまり悪い感じには見えないようにするため、事前に何らかの同意を得ている必要があったはずだ。

またマクレガーは、マリナッジが『ESPN』のようなメディアからのインタビューを受け、今回のトレーニングセッションについて話をしていることについて、怒りを表明することもできるし、そうするべきでもある。だがそれ以前に、マクレガーはすべてをリング上だけのことに収め、周囲にも写真を漏洩したりしないように、伝えるべきだった。

UFCパフォーマンス・インスティチュートの中で何が起こったのか。マクレガーとマリナッジだけが、真実を知っている。そしてこの2人のごく短期間の関係は、我々が思っていた通りの様相で、終焉した。

やれやれ。8月26日(日本時間27日)は、まだ来ないのか?

Steven Muehlhausen

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Steven Muehlhausen is a contributing writer for DAZN News. He writes features and news stories, and provides analysis relating to the world of boxing. Over the past five years, he has interviewed some of the biggest names in combat sports, including Conor McGregor, Daniel Cormier, Terence Crawford, Vasiliy Lomachenko and Bill Goldberg.