欧州ツアーの措置一時撤回で全英OP前哨戦に混乱の渦、マキロイらはリブゴルフ参加者を非難

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Rory McIlroy - cropped

DPワールドツアー(欧州ツアー)によるリブゴルフ参加者への制裁措置が国際仲裁機関によって棄却、一時撤回されたことで、全英オープンの前哨戦『ジェネシス・スコティッシュ・オープン』(7月7~10日、ルネサンスクラブ)が混乱にさらされようとしている。全英OPを含むメジャー4勝のロリー・マキロイ(北アイルランド)やビリー・ホーシェル(米国)はリブゴルフ参加者たちを非難した。

混乱を呼ぶリブゴルフ参加者制裁措置の一時撤回

スコットランド・イーストロージアン、ノースバーウィックの海岸線も見通せる場所にあるルネサンスクラブ(7293ヤード/パー71)で『ジェネシス・スコティッシュ(スコットランド)・オープン』が7日から開幕する。全英OP(14日開幕)の前哨戦でもある同大会は欧州ツアーが主催してきたが、今季から戦略的提携を結んだ米PGAツアーとの共催大会として行なわれる。

6月24日、欧州ツアーのキース・ペリー会長は、同ツアーの許可を得ずに『リブゴルフ・インビテーショナル・シリーズ』に出場した会員に対し、制裁措置を発表していた。10万ポンド(約1647万円)の罰金と、『スコティッシュOP』のほか、『バーバゾル選手権』(7月7~10日、米ケンタッキー州キーントレースGC)、『バラクーダ選手権』(7月14日~17日、米カリフォルニア州タホマウンテンクラブ)の3大会への出場停止という内容だった。

これに対し、対象となったイアン・ポールター(イングランド)ら16人の欧州ツアー会員が国際仲裁機関に不服申立てを申請していた。4日の審問の結果、欧州ツアーの制裁措置は差し止めの判断がくだり、ポールターのほか、リブゴルフ第2戦覇者のブランデン・グレイス、ジャスティン・ハーディング(いずれも南アフリカ)、アドリアン・オタエギ(スペイン)が新たに『スコティッシュOP』の出場者リストに加わった。

ペリー会長は4日、「聴聞会の結果には失望したが、決定には従う」とし、制裁措置の撤回を認め、『スコティッシュOP』の出場枠をすでに埋まっている156人から拡張して対応するという。ただし、制裁措置に対する選手側の訴えが再び審理されるまでのあくまで「一時的な撤回」であることを強調した。プロ・アマイベント中の混乱を避けるため、さらなる詳細を語ることは控えるとしたペリー会長だが、ポールターらが別の訴えを計画しているという報道もあり、欧州ツアーとしてもさらなる法廷闘争に備えていることを伺わせた。

マキロイ「戻ってくるべきじゃない」

リブゴルフ参加者らの『スコティッシュOP』参加に、ロリー・マキロイは、「リブゴルフ出場者はほかのツアーに出るべきではない」と非難する。ブルックス・ケプカ(米国)のリブゴルフ参戦発覚時には「二枚舌」と痛烈に批判し、嫌悪感をあらわにしていた。マキロイ自身は『スコティッシュOP』には出場しないものの、ポールターらの「いいとこ取り」の言動には我慢ならなかったようだ。

「彼らは大金を得るためにすべての仲間を置き去りにしてあちらに行った。それについては別に構わない。でもそうしたならもうそこから戻るべきじゃないよ」

マキロイは金銭的な理由でリブゴルフ参加を選ぶことには理解を示している。しかし、ブライソン・デシャンボー(米国)のような20代の選手が米PGAツアーの格式と競争力の高いプレイ環境を捨てて金銭的な条件を取ることにはいらだちを隠さなかった。

「私にとって理解し難いのは若い選手たちです。それ(巨額の賞金だけ)が彼らの野心のゴールであるならば確かに正解なんだろう。だけどそれは私がこれまで為してきたこととは異なるんだ」

リブゴルフは、初年度の今年は7つのレギュラー大会と最終戦の全8戦を予定するが、レギュラー大会1大会につき賞金総額は2500万ドル(約34億円)という、メジャー大会以上の金額が争われる。巨額賞金の一方で、予選落ちがなく、カレンダー上のプレイ間隔は緩やかでエキシビション大会のようなツアーであることは否定できない。若い選手にとっては成長の機会を自ら放棄するようなものだというのが、マキロイの考え方だろう。

また、リブゴルフの運営資金はサウジアラビア政府の資本、いわゆるブラッドマネーであるとして国際的な批判を浴びている。ゴルフ界に巨額の投資がされることは歓迎すべきことだが、「正しい方法でされるべき」というのがマキロイの主張だ。混乱を引き起こすのではなく、ゴルフ界のエコシステムを守った上で拡張すべきだとしている。

現実には、ゴルフ界を分断するような状況にあり、今回のように制裁措置を巡って対立が深まり、混乱が収まる様子はない。

ハーシェル「本当にイライラした」

マキロイ以上に怒気を強めていたのが、今季の『ザ・メモリアル・トーナメント』覇者のビリー・ホーシェルだ。ホーシェルはプロ・アマイベント後の会見で、リブゴルフ参加者を「偽善者の嘘つき野郎」と断じたと英『BBC』などが伝えた。

「リブゴルフでプレイしながら、欧州ツアーや米PGAツアーにも出たいなんて言うのは、私の意見としては、愚かな考えとしか言いようがない」

「先週のイベント(リブゴルフ第2戦)で真実を語らず、いくつかのことについて嘘をついている偽善者がたくさんいるので、私は本当にイライラした」

ホーシェルは直接的な言葉で表現し、混乱を呼び込むリブゴルフ参加者に対して「ぼくらに構わないでくれ」と吐き捨てた。

混乱を呼ぶことにも意に介さないポールター

一方、渦中のポールターもプロ・アマ戦後、マキロイとの友人関係はまだ続いているなどと主張し、欧州ツアーの制裁措置一時停止も「正しい判断だった。今週を楽しみにしている」「私は長年スコティッシュOPでプレイしてきたからね。数え切れないくらいにね」と述べた。

ポールターはリブゴルフ参戦以来、ほかの選手ともどもSNS上では激しい批判を浴び続けており、「その点ではかなり苦痛」と認めているが、リブゴルフの法務部が背後に控えていることもあり、あくまで強気だ。結果として『スコティッシュOP』に混乱を呼ぶことになるが、ポールターの口ぶりにはそれを意に介すそぶりはなかった。

全英OPの前哨戦である『スコティッシュOP』には、日本からは松山英樹と欧州ツアーを主戦場にする川村昌弘が出場する。

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著者
神宮泰暁 Yasuaki Shingu Photo

日本編集部所属。ボクシング・格闘技担当編集者。