全英オープンにリブゴルフ勢24人が参戦、PGA残留のタイガー・ウッズらが公然と批判

神宮泰暁 Yasuaki Shingu

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ゴルフ界で最も歴史と格式のあるトーナメント『全英オープン選手権』が、いよいよ7月14日から開幕する。150回目の節目の今大会には、ゴルフ界を分断するリブゴルフ移籍者たちも参加する。大会前からタイガー・ウッズ(米国)やロリー・マキロイ(北アイルランド)らPGAトップスターから批判が飛び交い、リブゴルフCEOであるグレッグ・ノーマン(オーストラリア)の記念イベント排除など、現地では早くも騒々しい事態となっている。

祝賀会と晩餐会から全英2度制覇のノーマンを排除

全英オープンの開幕前の11日、歴代優勝者を招いた祝賀会(セレブレーション・オブ・チャンピオンズ)が行なわれたが、主催するR&A(ロイヤル・アンド・アンシエント・ゴルフクラブ・オブ・セントアンドリュース)は、その夜の晩餐会(チャンピオンズディナー)を含めて、1986年、1993年の2度の覇者であるグレッグ・ノーマンを招待しないことを9日に発表。とくに150回目の節目であることもあって、リブゴルフのCEOであるノーマンの存在が、聖地セントアンドリュースに混乱を呼ぶことを懸念した格好だ。

R&Aは事前にノーマン本人に連絡を取り、招待しないことを伝えていたことも発表している。「将来、またグレッグの出席を許可できる状況になることを望む」とし、リブゴルフにかかわっている間は今後も排除する意向を暗に示した。

ノーマン側は受け入れざるを得なかったようだが、「ゴルフ界において高い立場にあるR&Aが、そんなことをするとは思ってもいなかった。私は40年以上かけて世界中を渡り歩いてゴルフという競技を成長させてきただけなのに。ささいなことじゃないか」とコメント。ゴルフ界の分断を生んでいる現状を「ささいなこと」と表現し、自らを正当化した。ノーマンの盟友となってリブゴルフの顔役となったフィル・ミケルソン(米国)も、2013年全英覇者でありながら、祝賀会と晩餐会から排除されている。

祝賀会ではエキシビションゲームが行なわれ、前年度覇者コリン・モリカワやタイガー・ウッズ(いずれも米国)、ロリー・マキロイ(北アイルランド)らトップスターと、リー・トレビノ(米国)など往年の歴代優勝者も参加した。

ウッズやR&A最高経営責任者らが改めてリブゴルフ批判

祝賀会に参加したPGAスターたちは、リブゴルフへの批判を口にした。なかでも巨額契約金での引き抜きの誘いを断ったとされるウッズは、これまでリブゴルフに対して否定的な発言に終始してきた。

昨年2月の生死にかかわる自動車事故から聖地セントアンドリュースに戻ってこれたという万感の思いを明かしたウッズは、PGAツアーやメジャー大会のなかで自らがゴルフ界で勝ち取ってきた経験を若い選手が自ら捨てようとしていることを嘆いた。若い選手が厳しくも格式のある競争環境に背を向け、拝金主義に至るような筋道を作ってしまったリブゴルフに対して、「理解できない」と話した。

ウッズはPGAツアーとリブゴルフとレベルの違いに強い疑念を述べている。「ツアープロレベルとクラブプロレベルではそれが大きく異なることは、ジャック・ニクラウスとアーノルド・パーマーが(ゴルフ界の歴史のなかで)何をなしてきたかで理解できるはずです」と力説する。リブゴルフの緩い大会フォーマットにも疑念を口にし、「前もってたくさんのお金が支払われていて、いくつかのイベントで54ホールをプレイする。ゲーム中には激しい音楽が流れていて、何もかも雰囲気が異なる」とし、PGAツアーとは別物であることを指摘した。

「この先、リブゴルフのツアーが世界ランキング(OWGR)の認定を得られず、メジャー大会が参加基準を変更した場合、そうした動きが長期的にポジティブな結果を生むのか、私にはわからない」とも牽制する。

リブゴルフからの正式な世界ランキング認定申請を受け、全英オープン開催中にOWGRの会議が行なわれることになっており、ウッズの発言はそれを踏まえたものだ。

R&Aの最高経営責任者であるマーティン・スランバーズも、選手側の自由な選択の権利に理解を示したものの、ウッズの意見をなぞるように「(リブゴルフの大会を見た限りでは)競技全体の長期的な利益にとって最善とは思えず、完全にお金によって動かされていると感じましたね」と断じた。加えて、リブゴルフが謳う、ゴルフの進化というモットーは信頼に足るものではないとし、「私たちが改善に取り組んでいる競技の認識を傷つけている」とにべもなかった。

また、リブゴルフ勢について「戻ってくるべきじゃない」と確固たる言葉で批判していたのがマキロイだ。

大会1週間前の7日、欧州ツアー(DPワールドツアー)から3つの前哨戦出場停止と罰金処分を受けていたイアン・ポールター(イングランド)、リブゴルフ第2戦覇者のブランデン・グレイス、ジャスティン・ハーディング(いずれも南アフリカ)、アドリアン・オタエギ(スペイン)が、国際仲裁機関に不服申立を申請。その結果、一時的な措置差し止めにより、『スコティッシュ・オープン』に出場することになった。

その際、マキロイは「彼らは大金を得るためにすべての仲間を置き去りにしてあちらに行った。それについては別に構わない。でもそうしたならもうそこから戻るべきじゃない」として痛烈に批判していた。だが、結局のところリブゴルフ参加者の影響で、セントアンドリュースでは開催前からリブゴルフ関連の質問が繰り返されており、ジャスティン・トーマス(米国)は「うんざりだ」と漏らした。

しかし、リブゴルフ参加者は、前哨戦を含め、全英オープンに出場することはあくまで自身たちの権利であるというスタンスだ。

全英オープンにエントリーするリブゴルフ参加者たち

全英オープンの主催者R&Aは、全米オープンの全米ゴルフ協会と同様に、公平性を理由に、リブゴルフ参加者の全英オープン出場資格を認めることを発表していた。

全英オープンにエントリーしている選手の多くにはリブゴルフ第2戦のポートランド大会に参加していたミケルソンやダスティン・ジョンソン、ブライソン・デシャンボー、ブルックス・ケプカ、パトリック・リード(いずれも米国)などの元PGAトップスターが名を連ねるが、開幕戦のロンドン大会参加者のパブロ・ララサバル(スペイン)も含めて総勢24選手となる。

全英オープンにエントリーするリブゴルフ参加者

  1. ダスティン・ジョンソン(米国)
  2. ブルックス・ケプカ(米国)
  3. アブラハム・アンセル(メキシコ)
  4. ルイ・ウーストハイゼン(南アフリカ)
  5. ブライソン・デシャンボー(米国)
  6. ケビン・ナ(米国)
  7. パトリック・リード(米国)
  8. テイラー・グース(米国)
  9. セルヒオ・ガルシア(スペイン)
  10. リチャード・ブランド(イングランド)
  11. ショーン・ノリス(南アフリカ)
  12. サム・ホースフィールド(イングランド)
  13. フィル・ミケルソン(米国)
  14. リー・ウエストウッド(イングランド)
  15. スコット・ビンセント(ジンバブエ)
  16. ブレンド・ワイズバーガー(オーストリア)
  17. イアン・ポールター(イングランド)
  18. ジャスティン・ハーディング(南アフリカ)
  19. サドム・ケーオカンジャナ(タイ)
  20. ローリー・カンター(イングランド)
  21. シャール・シュワーツェル(南アフリカ)
  22. キム・シバン(米国)
  23. ジェダイア・モーガン(オーストラリア)
  24. パブロ・ララサバル(スペイン)

なお、リブゴルフ参加者は、PGAツアーに排除措置に加え、欧州ツアーからも追加措置がくだる可能性が高く、今後リブゴルフツアー自体が世界ランキング対象大会として認められない場合、メジャー大会の主催者が出場資格条件を変更しない限り、来年以降は全英オープンに出場できないとみられている。

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神宮泰暁 Yasuaki Shingu

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日本編集部所属。ボクシング・格闘技担当編集者。