「アイゼンハワー元大統領は平均的なアメリカ人と比べると、ゴルフの腕前は抜群だった」とパーマーは話してくれた。「彼が打つボールはよく飛ぶけれど、彼の強みはゴルフに対しての情熱だ。もちろん、ゴルフ以外の趣味はあったけど、ゴルフには勝っていなかったね。一方、リチャード・ニクソン元大統領のゴルフの腕は微妙だったな。ジェラルド・フォード元大統領のハンディキャップは18で、それにふさわしい技量を持っていた。彼はゴルフボールを強く打つので、素晴らしいプレーをするときもあったが、パッティングはひどかったよ」
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パーマーはフォード元大統領のことを「どちらかというとオハイオ州立大学の出身の男性だ」と称した。フォード元大統領はミシガン大学出身だが、パーマーが言いたかったことを理解するのは簡単だった。パーマーの最大のライバル、ジャック・ニクラスはオハイオ州立大学の出身だからだ。
歴代大統領のゴルフの腕前の評論は更に続いた。そして、パーマーは再びスープを一皿飲んでゴルフをプレーしに出かけたので、僕は付き添った。
パーマーは当時、63歳。翌週開催ベイヒル・インビテーショナル(現在はアーノルド・パーマー・インビテーショナル)が開催されるコースで、12番ホールまでは4アンダーでまわる素晴らしいプレーを見せていた。
13番ホールで、アーノルドのティーショットはフェアウェイを外れた。彼のボールがあるところまで200ヤード歩いていく間、私は1カ月前にアメリカの大統領に選ばれた男について尋ねた。
「今朝私たちが話していたことについてですが、ビル・クリントンとゴルフをしたいですか?」
6カ月後、パーマーとクリントンは実際、一緒にゴルフをしている。そしてアーノルドは私にこう話したものだった。「ビル・クリントンはとてもいいゴルフ選手になる可能性を秘めている。ボールをパットするのがうまい。彼は力があるし、ゴルフに非常に興味を持っているんだ。彼のスイングはすごくいいし、いい選手になる判断力を兼ね備えているよ」。
ビル・クリントン大統領とアーノルド・パーマー、1996年プレジデンツカップにて。(Getty Images)
しかしそう語ったのは先のことである。私が質問をしたまさにその日には、アーノルドはこう答えた。「そう思うよ。彼がどんなゲームをするのか見てみたいし、どんな人物なのかにも関心がある。だが、もし私の考えが知りたいなら、ビル・クリントンは一般の人々のことをまったく気に掛けているとは思わない。ビル・クリントンはインチキでしかないと思う。ビル・クリントンは……」
アーノルドはだんだん怒りをあらわにしていった。
それから、彼は次のショットをグリーン手前の池に入れてしまった。
「まずい」と私は思った。「大問題発生だ」。
アーノルドは、険しさと作り笑いが混ざった表情で、私の方を振り向いた。
「なぜこんなふうに、集中力が切れてしまったんだろう」と彼は大げさに尋ねた。
そのホールは1打罰のペナルティもあってダブルボギーを叩いたが、それから持ち直して68の4アンダーでその日のラウンドを終えた。
さて、ここからパーマーとドナルド・トランプの話になる。
私が現在ホワイトハウスに就いている人物について、パーマーならどう考えるかを推測するのは厚かましい。だから私はご存命でアーノルドのことを知るある人に尋ねた。それが彼の上の娘のペグである。彼女は父親が注目を集める前、1950年代の半ばに生まれた。
「父は複雑な人物でした」。先週その質問をしたところ、ペグはそう言った。「父は貧しい家庭で育ち、裕福になりました。ゴールドウォーターを支持する共和党主義者であり、共和党を信じていました。父と私は政治については一緒に議論しないようにしていました。
そもそも私たちは考え方が全く違うので、議論しても無駄だと気付いたのです。政治に対する考え方は別としても、父は自分のこれまでの苦労を私が理解していないと感じていたようです。名声を得るために、大変な思いをしてきたのでしょう。父はプロゴルファーとして成功を収めるだけではなく、多方面でも活躍していました。簡単なことではなかったでしょう」
続けて、ペグはトランプ氏について語った。「父は、長年、チャリティーイベントを開催していました。中には、トランプ氏と一緒にゴルフコースをまわるものもありました。父にとっては良い思い出ですし、コースをまわるトランプ氏のサポートをすることも光栄に思っていました。トランプ氏も私の父に対して尊敬の念を抱いていたようです。おそらく敬意をもって父に接してくださったのでしょう。しかし、選挙運動中、父はトランプ氏に賛同しませんでした」。
「父は、自分が他人より優れているかのようにふるまう人たちを良く思っていませんでした」ペグはさらに続ける。「意地の悪い人や無礼な人、他人を見下すような人を嫌っていました。公の場で人を侮辱したり、人を騙すような行為を許しませんでした。不誠実な人が嫌いだったのです。父は秩序を守る人でした。他人の手本になるような人物でありたいと思っていたのでしょう。だからこそ、父はトランプ氏の礼儀を欠いた行為に驚き、その人格に疑問を感じ始めたようです」。
「印象に残っている出来事があります」ペグは続ける。「私と父はラトローブの自宅にいました。父は9月に亡くなったので、投票前のことでした。テレビで流れるトランプ氏の演説を見て、父は憤慨した様子でした。大統領選の候補者にも関わらず、傲慢で乱暴な振る舞いをすることが、信じ難かったのでしょう。『ここまでとは思わなかった』と父は言い残し、部屋を出ていきました。今のトランプ氏を見たら、父はどのように思うでしょうか。きっとうんざりするはずです」。
(完)
筆者プロフィール
トーマス・ハウザー:2004年、アメリカ合衆国ボクシングライター・アソシエーションより、ボクシングジャーナリズムに貢献したとして、ナット・フライシャー賞を受賞。次作「Protect Yourself at All Times(常に自分自身を守る)」がアーカンソー大学出版局より出版予定。
原文:What would Arnold Palmer think of Donald Trump today?
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
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