【F1ガイド】F2参戦2年目の岩佐歩夢、2024年昇格なるか…F1ドライバーになるための条件「スーパーライセンス」とは?

荒大 Masaru Ara

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Ayumu Iwasa, F2 Driver

F1への登竜門的存在である、FIA-F2選手権(F2)。F1のサポートレースとして行なわれる一方、レースの模様を配信等でみたことのあるモータースポーツファンもいることだろう。昨季は年間5位だった岩佐歩夢(いわさ・あゆむ)が、2023年も引き続き、ホンダとレッドブルの育成ドライバーとしてダムスに所属しF2に参戦している。

F2で好成績を残すことで、F1への道が開かれるのだが、新シーズンにおいて、彼がどのような成績を残すことが必要となるのか。現在の制度(条件)の解説も交えてお伝えする。

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そもそも、F1ドライバーになるためには

F1ドライバーになるためには、レーシングドライバーとしての「ライセンス」が必要になる。F1はほかのモータースポーツ競技と違い、「スーパーライセンス」を持つ者だけがドライビングを許される。かつてはその基準があいまいだった一方、徐々にドライバーの低年齢化が進み、2015年には当時17歳だったマックス・フェルスタッペンがデビューしている。

ヨーロッパの法律上においても「未成年」だったフェルスタッペンのデビューは、さまざまな議論を巻き起こし、2016年以降、スーパーライセンスの規定に対して、

  • 「国際A級ライセンス保持者であること」
  • 「有効な運転免許証を持っていること」
  • 「18歳以上であること」

この3箇条が規定された。また、同時に世界各地で行なわれるレースに参戦し、FIA(国際自動車連盟)が定めた「スーパーライセンスポイント」を3年間に合計40点獲得しなくてはならない、と定められた。このスーパーライセンスポイントについては、このあと詳しく解説する。

また、このほかにも、F1マシンを使って300km以上の距離を走ったことを証明するなど、いくつかのテストが必要になる。そうしたハードルをすべて乗り越えて、初めてF1ドライバーへの門戸が開かれることとなる。

スーパーライセンスポイントとは:角田裕毅、山本尚貴の昇格ケース

スーパーライセンスポイントは、世界各地のレースの上位ドライバーに与えられるポイントで、このポイントを3年間に40点以上獲得できると、スーパーライセンスの発給資格が与えられる。日本人になじみ深いレースを切り取って見てみると、昨季終了の2022年12月時点で以下の通りとなっている。

シリーズ名 1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位 9位 10位
FIA F2選手権 40 40 40 30 20 10 8 6 4 3
FIA F3選手権 30 25 20 15 12 9 7 5 3 2
インディカー・シリーズ 40 30 20 10 8 6 4 3 2 1
フォーミュラE 30 25 20 15 12 9 7 5 3 2
世界耐久選手権・LMP1クラス 30 25 20 10 8 6 4 3 2 1
スーパーフォーミュラ 25 20 15 10 7 5 3 2 1 -
スーパーフォーミュラ・ライツ 15 12 10 7 5 3 2 1 - -
SUPER GT・GT500クラス 20 16 12 10 7 5 3 2 1 -
フォーミュラリージョナル・ジャパニーズシリーズ 18 14 12 10 6 4 3 2 1 -
各国のFIA-F4選手権 12 10 7 5 3 2 1 - - -

なお、2018年までは2つのシリーズのポイントを合算してカウントすることができた。例えば日本のスーパーフォーミュラとSUPER GT・GT500クラスに参戦するドライバーは、その両方のスーパーライセンスポイントを獲得することができたのだが、2019年以降は1つのシリーズのポイントだけを加えることができるとされている。

この制度導入後に、日本人でスーパーライセンスの発給を受けたのはわずかに2人。1人は現在F1にアルファタウリから参戦中の角田裕毅だ。角田は2018年に日本のFIA-F4選手権でチャンピオンとなり、12ポイントを獲得。2019年にヨーロッパへ渡ると、FIA F3選手権でランキング9位に入って2ポイント。そして2020年のF2でランキング3位に入って40ポイントを獲得したことで、3年間の合計が54ポイントに。

さらに2020年のシーズン中にアルファタウリチームと連携してF1のテスト走行も行なったことで、晴れてスーパーライセンスが発給されることとなった。

Yuki Tsunoda
Red Bull Contents Pool

そしてもう1人は、日本のスーパーフォーミュラやSUPER GTで活躍する、山本尚貴だ。彼は2019年のF1日本GPで、当時のトロ・ロッソ(現・アルファタウリ)からエントリーし、フリー走行の1回目を走ったのだが、このときは少々事情が複雑だった。

2016年から2018年までのスーパーフォーミュラとSUPER GTでのランキングをもとに、ライセンスが発給される…と思いきや、2017年の時点ではSUPER GTがポイントの対象ではなかったことから、山本の持ち点がわずかに足りず、スーパーライセンスポイントが39ポイントにとどまっていたのだ。

だが、日本GPの直前に山本へのスーパーライセンスが発給され、エントリーが叶った。というのも、2019年のスーパーフォーミュラで山本はチャンピオン争いを展開しており、たとえ最終戦に出場しなかったとしても、ランキング5位以上になり、スーパーライセンスポイントが7点以上加算されることは確実な状況だったのだ。

ここで与えられるポイントを加えれば、40点を超えるという部分が考慮され、スーパーライセンスが山本に与えられることに。山本は台風が近づき、雨が混じる鈴鹿サーキットをF1マシンで走り抜けたのである。

Naoki Yamamoto with Pierre Gasly
Red Bull Contents Pool

岩佐に課された条件は?

では、来シーズンの岩佐がどのような成績を残せば、スーパーライセンスポイントの規定を満たすことができるか。結論から言えば、F2で「ランキング5位以上」が条件となる。

Ayumu Iwasa
Red Bull Contents Pool

2023年シーズン開幕前の時点での岩佐の持ち点は22。2021年にF3アジアシリーズ(現・フォーミュラリージョナル中東選手権)に参戦した際にランキング8位に入って2点を獲得。そして昨季2022年のFIA F2選手権で年間ランキング5位に入ったことでの20点が認められているかたちだ。

2022年12月時点でのスーパーライセンスポイントの条件によれば、来シーズン、岩佐はF2でランキング5位に入れば、持ち点に20点が加算されて、スーパーライセンスポイントが42点となる。もちろんそれより上の順位でシーズンを終えられるならば、より注目を集めることだろう。

2023年度ののFIA F2選手権には、同じくスーパーライセンスポイントを稼ごうと目論むジャック・ドゥーハン(持ち点35点)、デニス・ハウガー(同33点)、フレデリック・ヴェスティ(同19点)らが今季も参戦するほか、F3からの昇格組として、オリバー・ベアマン(同32点)、アーサー・ルクレール(同20点)なども参戦が決まっている。

とくにルクレールは岩佐と同じダムス所属となる。F1でフェラーリのエースの座に就く、シャルル・ルクレールの3歳下の弟であることも含めて注目の的となるだろう。岩佐によれば、ルクレールはチーム内での情報シェアを拒否したことから、自身も同様の対応をとると発言している。誰もが最高峰入りを目指すステップアップリーグというシビアな環境ゆえに、僚友同士でも気を抜くことはできない。

明日のF1ドライバーを夢見る若手たちがしのぎを削る、という図式のなか、F2での2年目を迎える岩佐がどのような成長を遂げ、戦いを進めていくのか。2023年のF2にも注目だ。

2023年シーズンも随時更新!

スポーティングニュース日本語版では、2023年もレース結果や放送配信予定に加え、英語記事だけでなく、F1人気が高い欧州の空気感を伝える本誌スペイン語記事の翻訳版など随時更新する予定だ。

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荒大 Masaru Ara

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茨城大学卒。福島県内のテレビ局で報道記者を務めたあと、web編集者を務めた2019年からモータースポーツの取材を行う。2020年に独立後、Bリーグの取材を開始し、現在は記事執筆のほか動画コンテンツの編集などで活動中。