【F1ガイド】2023年のF1の変更点を学んでおこう Vol.1:タイヤ・スプリント・新型コロナ対策編

荒大 Masaru Ara

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F1 2022 Japanese Grand Prix

F1の2023年シーズンに向けた動きが、徐々に活発化している。新シーズンはマシンや大会形式のレギュレーション(ルール)のほか、タイヤの仕様などもいくつか変更される予定となっていて、これまでとはまた違ったレース展開となることが考えられる。すでに決定のうえで発表されているものをこの記事で紹介し、新シーズンに向けた「予習」を始めよう。

2本構成の1本目は、レースにまつわる規定についての変更を中心に取り上げていく。Vol.2 車両編(重量・ポーポイズ・安全性・燃料冷却)はこちら

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タイヤを巡る変更点

2022年シーズンから、ホイールサイズがそれまでの13インチから18インチとなるなど、F1はタイヤにおいての大きな変更が相次いだ。2023年シーズンでは、早くもそこにメスが入ることになる。

まずレギュレーション上では、新シーズンの最大2つのグランプリにおいて、タイヤの供給数を減らされることが定められた。F1をはじめ、世界全体のモータースポーツを統括するFIA(国際自動車連盟)は、将来的にすべてのレースでタイヤの使用本数を減らすことを目指しており、2023年シーズンでの変更は、そこに向けたテストの意味合いもあるという。

通常、F1は3日間のスケジュールのなかで、ひとりのドライバーに対し13セットのタイヤが供給されているのだが、これを11セットに減らしたレースが行なわれるとしている。

この11セットで行なわれる大会では、ドライバーへのタイヤの配分も大きく変更される予定で、13セットが供給される場合では、ハードタイヤが2セット、ミディアムタイヤが3セット、ソフトタイヤが8セット配分されるところを、ハードタイヤ3セット、ミディアムタイヤ4セット、ソフトタイヤ4セットの配分となる。

また、この大会においては、予選で使用できるタイヤに制限があり、Q1ではハードタイヤのみ、Q2ではミディアムタイヤのみ、Q3ではソフトタイヤのみの使用が許されるとされている(いずれもドライ路面の場合のみ)。

ソフトタイヤの使用本数が減ることや、予選で使えるタイヤの種類が制限されることも含めて考えると、各チームの作戦の立て方がかなり変わってくるだろう。

Pirelli Tyre
Red Bull Contents Pool

このほか、2022年11月にアブダビで行なわれたテストにおいて、公式タイヤサプライヤーのピレリがドライ用タイヤに新たな仕様のタイヤを追加する予定とのコメントを残している。現在のF1では、C1からC5まで、5つの仕様のタイヤからピレリが3種類を選ぶ、という形式になっている。簡単に説明すると、C1のタイヤがもっとも耐久性がある一方で、タイムを出しづらい。反対にC5はタイムを出すには相性がいいのだが、長い距離の走行はのぞめない。それが段階的に設定されている…と思っていただきたい。

ピレリのコメントによれば、「6種類めのタイヤ」を投入し、さらにピレリによるタイヤ選択の方法も変えたい、という意図がみられる。だが、現時点ではFIA、ピレリともに正式発表には至っていないため、続報が待たれるところだ。

スプリントがさらに増加

2022年シーズンでは、エミリア・ロマーニャGP、オーストリアGP、ブラジル(サンパウロ)GPの3レースで行なわれたスプリント新シーズンはさらに拡大され、6レースで行なわれる予定となっている。

便宜上、中国GPが中止となった分を外してカウントするが、第4戦のアゼルバイジャンGP、第10戦のオーストリアGP、第13戦のベルギーGP、第18戦のカタールGP、第19戦のアメリカGP、そして第21戦のブラジル(サンパウロ)GPでのスプリント開催がアナウンスされている。

スプリントで上位に入ってポイントを稼ぐことが、ランキング争い、チャンピオン争いのうえでも効いてくる。2022年はマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が3戦2勝を挙げたわけだが、今年はいったい誰が「スプリント強者」となるだろうか。

Max Verstappen
Red Bull Contents Pool

スプリントが開催されると、決勝のように多くのマシンがコース上を一斉に走ることで、マシンへのダメージのリスクが増えることが考えられる。2022年までは、スプリントが1レース開催されるごとに、各チームに15万ドルの手当と、ダメージによっては最大10万ドルの手当が支払われていたのだが、この手当の部分についても改変が入った。2023年シーズンはスプリント1回の開催につき、各チームに30万ドルが支払われる予定だ。

一方、F1には「パルクフェルメ」と呼ばれる、不正な改造を防止するためのルールが存在する。通常通りの予選と決勝を行なう場合、土曜日の予選終了から日曜日の決勝終了までがパルクフェルメの期間なのだが、スプリントが行なわれるときには、金曜日に予選を行なったまま、マシンの仕様が決勝を終えるまで大きな変更ができないこととなっている。

つまり、マシンのセッティングを自由に変更できる時間が1日少なくなるということで、チーム側から不満の声があがっていた。F1公式サイトでも「パルクフェルメに対する要望が大幅に増えた」と言及されたほどだ。

2023年シーズンでは、天候の変化などでFIAの技術責任者が必要と判断した場合、パワーユニットやギアボックスなどの冷却に関するセッティングやボディワークの変更が可能になるとしている。これまではブレーキ冷却についてのセッティング変更だけが認められていたが、ここが大きく変えられたかたちだ。

新型コロナウイルス対策の変更も

新型コロナウイルスの感染対策についても、変更が加えられている。F1をはじめとした、さまざまなモータースポーツのレギュレーションを決定する、FIA世界モータースポーツ審議会は、「世界的なパンデミックの状況変化」があるとして、FIAは対策プロトコルを緩和することを決めている。

プロトコルの主な変更点としては、新型コロナウイルス感染症の症状がある、あるいは新型コロナウイルスへの感染が確認された人物は、サーキット内への「高密度区域」(FIAによればパドックやピットなどのエリアが例に挙げられている)への入場が許可されないとしている。

一方で、この高密度地域に立ち入るために、これまで、サーキット入りの6ヶ月から2週間前までに参加者が参加者が新型コロナウイルスに対するワクチン接種を必要としていたのだが、これは今後要求しないこととなった。

さらに、FIAは今後、サーキットや会場で自前の検査施設を開かない一方で、会場の近くで利用可能な検査施設については関係者に通知するとしている。

Yuki Tsunoda in paddock
Red Bull Contents Pool

世界中の様々な人々が行き来するF1だが、こちらも徐々に「アフターコロナ」が見据えられてきた、と言えそうだ。

2023年シーズンも随時更新!

スポーティングニュース日本語版では、2023年もレース結果や放送配信予定に加え、英語記事だけでなく、F1人気が高い欧州の空気感を伝える本誌スペイン語記事の翻訳版など随時更新する予定だ。

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荒大 Masaru Ara

荒大 Masaru Ara Photo

茨城大学卒。福島県内のテレビ局で報道記者を務めたあと、web編集者を務めた2019年からモータースポーツの取材を行う。2020年に独立後、Bリーグの取材を開始し、現在は記事執筆のほか動画コンテンツの編集などで活動中。