セバスチャン・ベッテルがF1からの引退を表明:4年連続で世界チャンピオンを獲得したレジェンドの生涯記録と自身が語った引退の理由

Nathan Evans

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2007年のF1デビュー翌年、当時のF1史上最年少ポールポジション、最年少優勝・最年少表彰台および最年少ポールトゥウィンを記録し、2010年から4年連続で世界王者となったセバスチャン・ベッテルが今シーズン限りでのF1引退を表明した。35歳の元世界王者自身が語った引退理由について、Nathan Evans記者がリポートする。

ハンガリーGP直前にセバスチャン・ベッテル自身が引退表明

世界チャンピオンに4度輝いたセバスチャン・ベッテルが2022年シーズン限りでF1から引退することを表明した。

レッドブル在籍時の2010年から2013年まで4年連続でタイトルを獲得したベッテルは、ドイツが誇る英雄ドライバーだ。自身の公式インスタグラムで初めて公表した現役引退はファンとメディアにひとしく衝撃を与えた。

そのソーシャルメディアのページはハンガリー・グランプリ直前の7月28日付で開設された(セバスチャン・ベッテル公式インスタグラム)。8月2日現在、フォロワーの数はすでに200万人を越えている。そのなかでベッテル当人は、なぜ今が引退をするに相応しいタイミングと信じるかについていくつかの理由をあげた。そしていかに自分がこのスポーツを愛し、思い出す限りの長い期間、人生の中心であったかについても語った。

スポーティングニュースはベッテルが今シーズン限りでの引退を決断した理由を探り、またベッテルがF1に残した記録を辿ってみた。

セバスチャン・ベッテルがF1から引退する理由

ベッテルは現在35歳であるが、F1コミュニティに属する多くの人々はこの引退発表を予期してはいなかった。

アストンマーチンとの契約は2022年シーズンで終了する。ベッテルはその後、ほかのチームへ移籍するという噂が飛び交っていた。実際、2022年のオフシーズンにマクラーレンへ移籍することが決まったという憶測報道が注目を集めたのはわずか数週間前のことだ。

インスタグラムに投稿した動画の冒頭で、ベッテルは現役生活を「2022年シーズン末をもって」終了すると明言した。

ベッテルは続けてこう話した。「私はこのスポーツを愛しています。覚えている限り、これこそがずっと私の人生の中心にありました。しかしサーキットのなかに人生があるように、サーキットの外にも私の人生は存在します。レースドライバーであることは私という人間のすべてではありません」

「私たちの存在意義は、自分が何をするかではなく、自分が誰であるか、そして他人に何をできるかによって決まります。私はそのことを強く信じています」

「私とは誰なのでしょうか。私の名はセバスチャンです。3人の子を持つ父親であり、素晴らしい女性の夫でもあります。私は好奇心が強く、熱情的であるか才能に恵まれた人にすぐ惹かれます。完璧主義者でもあります。私は寛容的であり、すべての人は生きるための平等な権利を持つと思っています。その人がどのような外見でも、どこから来ても、また誰を愛していようが、そのことは変わりません」

「私は自然のなかにいることを好みます。頑固で、せっかちかもしれません。冗談がスベることも多いですが、人を笑わせるのは好きです。チョコレートが好物で、焼き立てのパンの匂いをかぐのも好きです。好きな色は青です」

「私は変化と進歩を信じます。小さなことが積み重なって、何かを成し遂げるのです。私は楽天主義者です。皆が良い人だと信じているのです」

「レースのほかに、私は家族を持っています、彼らのそばにいることが大好きなのです。F1の外にも興味があるものが増えました。レースとF1は私が家族と過ごす多くの時間を奪い、そして多くのエネルギーも奪っていきます」

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「私がこれまで正しいと思っていたほどの熱意をレースに注ぐことは、良き父親と夫でありたいとする願いとは相反するものです。チームと一緒に戦うため、そして完璧を目指すためには、膨大なエネルギーと時間を要求されます。私の目標はレースに勝つことやチャンピオンになることから、別のものに変わったのです。子どもたちの成長を見守り、彼らに私の価値観を伝え、彼らが失敗したときには手を差し伸べ、彼らが私を必要とするときには彼らの話に耳を傾け、さよならを言わなくてもいいように。そして一番大切なことは、彼らから学べるような自分でいたいのです」

「子供たちは私たちの未来です。これから、私は人生と自分自身について多くのことを知り、そして学ぶでしょう」

ベッテルはかつて気候変動がF1を続けることに疑問を生じさせていると認め、こう言ったことがある。

「車から降りたとき、もちろんこんな風にも考えます。『これは私たちがするべきことだろうか。世界中を回って、天然資源を浪費することが』」

インスタグラムでの発表のなかで、ベッテルはこのスポーツ(F1)には問題とされるべき、好ましくない要素があることに気がついたと述べている。

「私たちはとても重要な決断を迫られた時代に生きていると感じています。今後数年間で私たちがどのような行動をとるかで、私たちの人生は大きく変わるでしょう」

「私が熱意を傾けていたことの一部に、私が今では好ましくないと思うことが含まれています、それらは将来的には解決するかもしれません。しかし、もっと大きな変化を起こすための強い意志を持ち、今すぐに行動を起こすことが必要なのです」

「言葉だけでは何も解決しません。待っている時間はないのです。それ以外に選択肢はありません。レースは続いています。私の最高のレースはどれだったでしょうか。それはこれからです。私はこれからも前に進みます。時間は逆戻りしません。前を向くのみです。過去を振り返っても、何も得るものはありません」

「私は未知のサーキットに挑み、新たな挑戦をします。サーキットに残した私の軌跡は、しばらくはそこに残るでしょうが、そのうちに雨が流し去るでしょう。そして、新しい軌跡が刻まれます。明日は今日努力している人のためにあります。次のコーナーにはもう新しい世代が台頭してきています」

「私にはまだレースに勝つチャンスがあると信じています。さようなら。サーキットで一緒の時間を過ごしたすべての人々にお礼を申し上げます。私はそのすべてを愛していました」

セバスチャン・ベッテル公式インスタグラム

セバスチャン・ベッテルのF1キャリア:タイトル、勝利、記録

ベッテルは世界チャンピオンに4回輝いた。F1史上最も偉大なドライバーのひとりだ。

しかもその栄誉は2010年から2013年までの4年連続で獲得したものだ。ベッテルが当時在籍していたレッドブルは2010年代前半のF1界をまさに席巻していたチームだった。

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4度の世界チャンピオン獲得はアラン・プロストと並び、F1歴代第4位の記録である。ルイス・ハミルトンとミハエル・シューマッハがそれぞれ7回、そして1950年代に活躍したファン・マヌエル・ファンジオが5回の記録を持っている。

ベッテルは表彰台に上がった回数でも歴代第3位の記録を持っている。ベッテルの記録は122回、ハミルトンが187回、そしてシューマッハが155回だ。

レース勝利数では、これまでに53勝を挙げたベッテルは、F1歴代第3位である。初優勝はスクーデリア・トロ・ロッソ在籍時の2008年イタリア・グランプリだった。

ベッテルがこのまま今シーズンの残りレースを完了すると、キャリア通算のグランプリ出走数は299回となる。これはF1歴代第7位の記録だ。

関連記事:セナ、プロスト、シューマッハ、ハミルトン…F1史上最も多くレースを制したのは誰か:歴代トップ10ドライバーの紹介

2010年、ベッテルは23年134日の年齢で、F1史上最年少の世界チャンピオンになった。それまでこの記録を保持していたハミルトンは2008年に初めて戴冠している。

ルイス・ハミルトンのツイート: セバスチャン、君をライバルと呼べることは僕の名誉だけど、それよりもっと大きな名誉は君を友達と呼べることだよ。このスポーツを卒業して、新たな道を見つけることは、いつだって僕らの目標だ。君の将来がエキサイティングで、有意義で、そして幸運に恵まれることを祈る。友よ、愛しているよ。

2011年と2012年を連覇したベッテルは、ワールドチャンピオン2回と3回を達成した最年少ドライバーにもなった。

ドイツ人のベッテルは同国人のミハイル・シューマッハと2つの記録で並んでいる。2011年にあげたシーズン優勝13回と表彰台17回である。

2013年はベッテルが最も成功したシーズンだっただろう。13回のレース優勝、そのなかには9連勝も含まれている。これもまたF1史上最高記録である。そして今でも、F1史上最年少のポールシッター(訳者注:ポールポジションでグランプリに出場したドライバー)でもある。

原文:Why is Sebastian Vettel retiring from F1? Race wins, career record and retirement announcement in full from four-time world champion
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本版編集部

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A Sports Journalism Masters graduate, Nathan Evans joined The Sporting News in 2022 after working at Opta/Stats Perform for six years. He's an avid fan of Bradford City, FC Köln and the Pittsburgh Penguins.