フェルスタッペンが母国で2連覇も、角田裕毅のVSC導入に陰謀論噴出|F1第15戦オランダGP決勝結果・順位

神宮泰暁 Yasuaki Shingu

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現地時間9月4日、FIA(国際自動車連盟)F1世界選手権の第15戦オランダGP決勝がザントフォールト・サーキット(4.259km/72周)で行われ、同国出身のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が2連覇を達成し、今季10勝目をあげた。一方、角田裕毅のアルファタウリ車による2度のバーチャルセイフティーカー導入によってメルセデス勢が不利を被ったことについて、レッドブル系チームによる陰謀論が噴出。前節ベルギーGPの「捨てバイザー騒動」に続いて物議を醸した。

フェルスタッペンが2連覇&4連勝V10も、角田のVSC導入で陰謀論のケチがつく

予報通りサーキット上空は雲に包まれるなか、気温22.7℃、路面温度35℃に満たない、やや低温のコンディションで決勝がスタート。FP1でのギアボックス不良はFP3と予選で完全に払拭しポールシッターとなっていたフェルスタッペンは、シャルル・ルクレール、カルロス・サインツらフェラーリ勢を制しトップを守った。19周目、ソフトからミディアムに履き替えた場面でルイス・ハミルトン(メルセデス)にトップを譲ったものの、そのハミルトンがピットに入った30周目で奪還した。

ルクレールやメルセデス勢を10秒以上後方に置いてトップを走るフェルスタッペンだったが、42周目、ピットアウトしたばかりの角田がタイヤが正確に取り付けられていない可能性があるとしてコース脇に停車、VSCが導入された。アルファタウリ陣営は、デフ(ディファレンシャルギア)の不調を疑う角田の意見を聞かず、リアタイヤを交換しただけでコースに送り出したが、43周目で再び停車し、2年連続のリタイアとなった。このやりとりのなかで角田はシートベルトをしていなかったため、安全義務違反も受けている。

僅かな間の2度目のVSC導入によってレースは大幅停滞を余儀なくされ、ペースを上げてきていたメルセデス勢にとってはチャンスを潰されることになった。かたや第2スティントのミディアムタイヤをすでに30周走らせていたフェルスタッペンは、番手を大きく落とすことなくピットストップを得た。レース後、この連続VSC導入劇について、メルセデス代表トト・ウォルフの「チャンピオンシップを争っていたら徹底調査を要求していた」という発言が英紙『Telegraph』によって伝えられると、レッドブルとアルファタウリのファミリーチームによる陰謀論が巻き起こった。

しかしながら、チームの意向に従ってハードを履いたフェルスタッペンは、VSC導入の低速走行規制によって案の定タイヤに熱が入らず、第3スティントのラップタイムは悪化。残り周回数を踏まえると、次のピットストップは致命傷になる可能性がでてきた。フェルスタッペン自身、(あのまま)ハードでステイアウトは無茶な話だったと後述しており、綱渡り状態にあったことがうかがえる。

レッドブル代表クリスチャン・ホーナーが「何も失うものがない(怖さがある)」と評したメルセデス勢は、揃ってミディアムに履き替えてこのロスを最小限に抑えた。さらに56周目にバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)のパワーユニットトラブルで黄旗が振られたところで戦略を変更。フェルスタッペンがポジションダウン覚悟でソフトに切り替えると、メルセデスはハミルトンをミディアムのままステイアウト、ラッセルにはソフトを履かせ、どちらかでフェルスタッペンを倒すという個別戦略を採った。

だが、フェルスタッペンはタイヤのヘタリでペースが上がらないハミルトンを抜き去り、61周目でトップに復帰するとファステストラップも獲得。2位に浮上したラッセルを4.071秒差でかわしてポールトゥウィンを決め、母国GPの2連覇、4連勝、今季10勝目をあげた。観客席のオレンジアーミー(オランダのファン)たちも本来持ち込みが禁止されているはずの発煙筒で橙色の煙幕を撒き散らし、地元の英雄の勝利を祝った。

結果として、フェラーリ系のアルファロメオのボッタス車による黄旗がなければ、フェルスタッペンの勝利は危うかったことを考えると、陰謀論は行き過ぎた憶測といえるだろう。今回最も割りを食った形となったハミルトンは、僚友ラッセルに抜かれたことに加え、ルクレールにまで後塵を拝することになり、レース中にはステイアウトを指示したチームに無線で激怒していたが、レース後は冷静を取り戻し、チームに謝罪したことを明かした。

第15戦オランダGP決勝リザルト(順位/ドライバー名/走破周/タイム/獲得点)

  1. マックス・フェルスタッペン(レッドブル)72周 / 1:36:42.773 / 26点★
  2. ジョージ・ラッセル(メルセデス)72周 / +4.071s / 18点
  3. シャルル・ルクレール(フェラーリ)72周 / +10.929s / 15点
  4. ルイス・ハミルトン(メルセデス)72周 / +13.016s / 12点
  5. セルジオ・ペレス(レッドブル)72周 / +18.168s / 10点
  6. フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)72周 / +18.754s / 8点
  7. ランド・ノリス(マクラーレン)72周 / +19.306s / 6点
  8. カルロス・サインツ(フェラーリ)72周 / +20.916s / 4点※
  9. エステバン・オコン(アルピーヌ)72周 / +21.117s / 2点
  10. ランス・ストロール(アストンマーチン)72周 / +22.459s / 1点
  11. ピエール・ガスリー(アルファタウリ)72周 / +27.009s / 0点
  12. アレックス・アルボン(ウィリアムズ)72周 / +30.390s / 0点
  13. ミック・シューマッハ(ハース)72周 / +32.995s / 0点
  14. セバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)72周 / +36.007s / 0点※
  15. ケビン・マグヌッセン(ハース)72周 / +36.869s / 0点
  16. 周冠宇(アルファロメオ)72周 / +37.320s / 0点
  17. ダニエル・リカルド(マクラーレン)72周 / +37.764s / 0点
  18. ニコラス・ラティフィ(ウィリアムズ)71周 / +1 lap / 0点
  • リタイア(NC)
    • バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)53周 / DNF / 0点
    • 角田裕毅(アルファタウリ)43周 / DNF / 0点

★:ファステストラップ、1’13.652(62周目)
※:サインツはピットストップ時の安全義務違反、ベッテルは青旗無視により、5秒加算ペナルティ

フェルスタッペン、今季世界王者に向けて独走

オランダGP決勝終了後のドライバーズランキングは、1位のフェルスタッペンが310点に到達し完全独走。ルクレールは2位を取り戻したが、3位ペレスと同点の201点で、ライバルとの差は3桁台の109点に拡大した。ラッセル(188点)が再び4位に浮上し、5位サインツ(175年)、6位ハミルトン(158点)となった。角田は16位(11点)で変わらず。

コンストラクターズ(チーム)ランキングは、レッドブルが511点でさらにほかのチームを引き離した。3位メルセデスは346点で2位フェラーリ(376点)との差をジリジリと縮めている。

次戦は欧州ラウンド最終戦イタリアGP

次戦の第16戦イタリアGPは、フェラーリのホーム「モンツァ・サーキット」で、日本時間9月9日(金)21:00からのFP1で開幕する。予選は同10日(土)23:00、決勝は同11日(日)22:00スタートとなる。

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神宮泰暁 Yasuaki Shingu

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日本編集部所属。ボクシング・格闘技担当編集者。