北京五輪見据えた今季GPシリーズは初戦から波乱…ネーサン・チェンがまさかの3位、宇野昌磨は2位

神宮泰暁 Yasuaki Shingu

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現地時間10月23日、フィギュアスケートの今季グランプリ(GP)シリーズの第1戦スケートアメリカの男子フリースケーティングが行われ、世界選手権3連覇のネーサン・チェン(米国)が3位に終わった。1位は伏兵のビンセント・ジョウ、2位は日本の宇野昌磨だった。北京五輪シーズン開幕から波乱の展開となった。

羽生結弦の近年の最大のライバルとして大きく成長し、世界選手権3連覇、国内外で連勝中だった"絶対王者"が地元で敗れた。前日のショートプログラム(SP)から旗色が悪かった。ジャンプの複数回ミスが響き82.89点の4位でフリーを迎えることになった。以前もSPで出遅れることはあったが、フリーで盛り返してきた。

だが、2017年ジュニア世界選手権王者であるジョウがSPを97.3点で首位発進を決めると、フリーでも4回転ルッツなど大技をそつなく決めてフリー198.13点、合計295.56点で初優勝を遂げた。

大会前、ISU世界ランキング45位の伏兵だった。ジュニア時代からチェンに次ぐ米国男子スケーターの2番手として注目されたジョウは、2018-19シーズンはGPシリーズで4位と5位、米国選手権で2位、4大陸選手権で銅メダル、世界選手権で銅メダルと確かな実力を示していた。大学進学とコロナ禍が重なり低迷する現状を打ち破るべく「去年の1月頃から失うものは何もない、もう3位や2位に甘んじることはないんだというマインドセットでトレーニングを始めた」という。

危うかった北京五輪出場権米国第3枠も9月末のネーベンホルン杯優勝で確保しており、その好調の波に乗って出場したスケートアメリカで優勝をつかんだのも意識改革の賜物だったのだろう。

2位はSP2位(89.07点)の宇野昌磨で、フリー181.61点、合計270.68。宇野が競技を終えた時点で合計269.37点のチェンの優勝は消えていた。

試合後の会見でチェンは「誰かが私の連勝を止めるとしたら、それが彼(ジョウ)であったことがうれしい」と話し、ジョウの優勝を称えたと米メディア『NBC』は伝えた。自身の結果についても「今回、私はもっと反省する必要があると思う。次に進むしかない」とも述べた。

4回転ジャンプを多数詰め込んだ野心的な構成は絶対王者にとってもリスキーだった。北京五輪に向けて修正を施していく。

一方、昨季は不調の波にあった宇野は復調のキッカケを掴んだ感があったが、「この大会でのミスや欠けていたものを見つめ直したい」と殊勝に語り、「ただ一生懸命に、NHK杯に向けて練習したい(11月12〜14日開催)」と述べたとNBCは伝えた。

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神宮泰暁 Yasuaki Shingu

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日本編集部所属。ボクシング・格闘技担当編集者。