井上尚弥は次のマニー・パッキャオか? 現在29歳の井上と29歳当時のパックマンを比較

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世界から『モンスター』と恐れられるWBAスーパー・WBC・IBF世界バンタム級統一王者の井上尚弥。12月13日(火)に、WBO王者ポール・バトラーとの4団体統一戦を控えているが、勝利の暁には4階級目のスーパーバンタム級挑戦が見込まれている。

現在29歳の井上だが、若手時代から8階級制覇のレジェンド、マニー・パッキャオと比較されてきた。両者の29歳時点のキャリアを比較し、井上が偉大なるパッキャオに近づける存在となるのか、本誌ダニエル・ヤノフスキー記者が分析する。

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井上尚弥、4団体統一成功後は4階級制覇?

ボクシングには、傑出した才能を持つ人物がその時代ごとに現れる。モハメド・アリ、シュガー・レイ・ロビンソン、カネロ・アルバレス、フロイド・メイウェザー…これらすべてのファイターが複数の階級を制覇している。しかし、そのなかでも8つの階級でベルトを獲得したのはひとりだけだ。

そんなボクシング界を統べるような記録を持つ唯一のファイターが、マニー・パッキャオだ。1995 年に16歳でプロデビューを果たしたパッキャオは、フライ級、スーパーバンタム級、フェザー級、スーパーフェザー級、ライト級、ウェルター級、ライト級、スーパーウェルター級で世界タイトルを獲得した。偉大なる『パックマン』は、生涯戦績62勝をあげており、そのうち39勝はKO勝利。29歳の時点ですでに47勝に到達していた。

パッキャオの伝説に並ぶような記録破りのファイターは今のところ存在しない。しかし、誰かがそこに近づくことはできるのだろうか…? あの『モンスター』ならどうだろうか…?

現在29歳の井上尚弥は、すでに3階級を制覇している。彼はバンタム級で『誰もが認める存在』(4団体統一王者)になることで、自身のキャリアを確固たるものにしようとしている。WBAスーパー・WBC・IBF、そしてThe Ring誌制定王座の王者である井上は、12月13日にWBO王者ポール・バトラーに勝利することで実現できる。それを成し遂げた場合、モンスターの次の目標は、スーパーバンタム級制覇になると見込まれている。

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井上は、次の偉大な複数階級制覇王者になってもおかしくないペースでそのキャリアを歩んでいる。では現在29歳の彼は、パッキャオの29歳当時と比べてどんな状況なのか。

パッキャオと比較されてきた井上尚弥

アジア出身の両ファイターは、それぞれ独自のスタイルを持ち、いずれも各階級で支配的な実力を示してきた。井上は、若いキャリアのいくつかの時点でパッキャオと比較されてきた。

2020年に井上と契約した米大手プロモーター『トップランク』のボブ・アラム代表は、過去にパッキャオと仕事をしたことがある。その彼はある時点で米スポーツメディア『The Athletic』のボクシング記者ランス・パグマイアに、井上について「私が何年も見てきたなかで最高のファイターだ...彼はマニー・パッキャオと同じくらい人気になる能力を持っている」と語っていた。

また、『トップランク』社長であるトッド・デュブーフは、欧州スポーツメディア『Sky Sports』の取材に、「モンスター」への称賛の言葉を並べるしかなかった。「彼(井上)を見ていると言葉を失ってしまうんだよ」とデュブーフは語った。

「私は1993年からこの業界にいるが、彼のようなスピード、両手のパワー、そしてボクシングのIQを目の当たりにしたら、ただただ感動するしかないよ。彼はアジアで生まれた誰よりもエキサイティングなファイターだ。彼はアメリカにおいてマニー・パッキャオ以来(のアジア人ファイターとして)、最もエキサイティングな存在ということだよ」

キャリアのほとんどでホームテリトリーの日本で戦ってきた井上だが、その『モンスター級』の強さは、アメリカのボクシングファンにも轟き始めた。いまや井上は世界一のボクサーになるとさえ議論されている。29歳のパッキャオとの比較は以下の通りだ。

井上尚弥 - マニー・パッキャオの比較

29歳の井上尚弥のキャリア

29歳のパッキャオのキャリア

19歳でプロデビュー

16歳でプロデビュー

23勝0敗 

48勝3分2敗

三階級制覇

五階級制覇

オマール・ナルバエズ、河野公平、ジェイミー・マクドネル、ジェイソン・モロニー、ノニト・ドネアに勝利

マルコ・アントニオ・バレラ、ファン・マヌエル・マルケス、エリック・モラレス、オスカー・デ・ラ・ホーヤに勝利

両者を比較するときに何か差異があるとすれば、それぞれの時代における界隈の競争レベルかもしれない。井上に関しては、コロナ禍がなければもっと早くさらに何かを成し遂げていた可能性もある。しかし、最も重要なのはどんな相手と戦ったかだ。

かつてのウェルター級の猛者ティモシー・ブラッドリーは井上のファンであり、彼はパッキャオよりも正確無比なファイターだと述べている。パッキャオはそのブラッドリーと3度対戦したが、最初の試合はボクシング史上最大の不可解判定だと揶揄された。まさかの敗戦でパッキャオの汚点となったが、その後の2試合では圧勝してみせた。第2戦以降の実力差をみると、フロイド・メイウェザーのような『最大の宿敵』というほど拮抗した関係ではなかったが、パッキャオにとってブラッドリーとの戦いが進化の入口となったのは確かだろう。

少し前にパッキャオのプロモーターである『MPプロモーション』のショーン・ギボンズ社長は、『Sky Sports』の取材に、ドネアとの最初の試合が井上を進化させるのに一役買ったと語ったが、同時に、井上はまだそうした特別な「ライバル」を必要としていると指摘した。

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「マニー・パッキャオ(に代わるファイター)は二度と現れないだろう」と、パックマンの腹心であるギボンズは釘を刺す。だが、こうも話した。

「彼がどこの国の出身かは気にしません。井上は彼自身の力だけでスターになるチャンスがあるかもしれないが、(より確実にするなら)質の高い対戦相手、世間から認められた実力を持つライバルが必要だ。いずれにせよ、一言で言えば、リッキー・ハットンがひとりしかいないように、マニー・パッキャオもひとりだけです。井上はそうした誰の影にも隠れないスターですよ」

井上がバトラーに勝てば、WBC・WBO世界スーパーバンタム級王者である米国人ファイター、スティーブン・フルトンとの戦いに移行することができるだろう。この新たなライバルとの戦いが、さらなるチャンスへの入口となり、彼のキャリアをさらに拡大するものになるはずだ。

しかし、問題は残る。果たして井上は、パッキャオの地位に到達できるだろうか――。

翻訳・編集:スポーティングニュース日本版編集部


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著者
Daniel Yanofsky Photo

Daniel Yanofsky is a combat sports editor at The Sporting News.