WBA・WBC・IBF・WBO世界主要4団体統一王者リスト:井上尚弥ら比類なき王者たちと候補者たち


神宮泰暁 Yasuaki Shingu

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近年、ボクシング界におけるキャリアの頂点は、複数階級制覇よりも、世界主要4団体WBA・WBC・IBF・WBOの統一王者になることがより価値あるハイライトとして位置づけられるようになった。4団体統一王者は、アンディスピューテッド・チャンピオン(Undisputed Champion)と呼ばれ、日本では「比類なき王者」「議論の余地のない王者」「誰もが認める王者」「絶対王者」とも表現される。

2023年5月現在、男子では9人、女子では8人がその偉業を達成している。日本が誇る『モンスター』井上尚弥も2022年12月にバンタム級4団体統一に成功し、アジア人初の歴史を作った。現時点の達成者と、2023-2024年中にも期待される候補者を紹介する(※本記事は適宜更新されます)。

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2本から3本、3本から4本、主要4団体王座時代への変遷

1920年、NYSAC(米ニューヨーク州アスレチックコミッション)設立からプロボクシングのチャンピオンシップが制定された。さらに翌年のNBA(全米ボクシング協会)の登場で、初めて2本のベルトを持つ「ユニファイドチャンピオンシップ」の定義が生まれ、当時は各階級2本のベルトを持つことイコール「アンディスピューテッドチャンピオン(比類なき王者)」と表現された。それから約100年余の時間が過ぎ、「アンディスピューテッドチャンピオン」の扱いは2本から3本、3本から4本へと変わり続けた。

現在では、NBAを源流にもつWBA(世界ボクシング協会)、NYSACのサポートを受けてWBAから離脱したWBC(世界ボクシング評議会)、WBA米国支部から発展したIBF(国際ボクシング連盟)、WBAから分裂したWBO(世界ボクシング機構)が主要(メジャー)な世界王座認証団体とされ、これをもって「世界主要4団体タイトル」と定義されている。

WBCが誕生した1963年から83年まではWBAとの2団体、その83年からIBFが加わり主要3団体時代が2004年まで続き、それ以降はWBOを含む4団体時代となった。WBOは1988年設立だが、誕生の経緯や管轄下の王者がマイナーなこともあり主要団体として認められるまでに時間を要している。

余談だが、WBOと同年に設立されたIBO(国際ボクシング機構)も、90年代以降、各階級のスターファイターたちが戴冠したことから「世界主要5団体」として定義するメディアもあったが、2023年現在は主要4団体タイトル保持者が持つ「その他のタイトル」といった扱いに留まっており、マイナータイトル(団体)から脱していない。代わりに、近年では名門誌『The Ring』(リングマガジン)認定タイトル第5の世界王座として認知されつつある。

WBA・WBC・IBF・WBO時代における史上初の4団体統一タイトルマッチとなったのが、2004年9月18日のWBA・WBC・IBF世界ミドル級王者バーナード・ホプキンス vs. WBO同級王者オスカー・デラホーヤ戦だ。9回TKOで勝利したホプキンスが、プロボクシング史上初の世界主要4団体統一王者になった。女子では、2014年9月13日にWBA・WBC・WBO女子世界ウェルター級王者セシリア・ブレークフスがIBF同級王者イバナ・ハバジンを3-0判定で下し、女子史上初の主要4団体王座統一に成功した。

2004年の達成第1号となったホプキンス以来、男子では9人、女子では8人が実現している。本来各団体で独立管理されるタイトルマッチを1度に行う統一戦だけに、近年のダイレクトリマッチの慣例化(同カードで3試合セット契約するラバーマッチ化)もあって、なかなか実現してこなかった。

また、4団体統一した王者が、管轄団体側からの指名試合(指名された挑戦者との必須王座戦)を回避するため王座を返上(して階級を変更)するというケースも多く、新たな絶対王者が生まれにくい事情もある。

ただ、女子に関しては特定階級にこだわらずに複数階級をまたいで活動するファイターが多く、男子よりも実現しやすい傾向がある。

以下は、現時点での男女別の4団体統一達成者(元王者含む)と、将来的に達成が期待される候補者についてのリストとなり、軽い階級から列挙する。

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主要4団体統一王者達成者一覧

男子部門(国籍、達成順、現行か元か)

バンタム級

  • 井上尚弥(日本、9人目、元)
    • 2022年12月13日、WBAスーパー・WBC・IBF世界バンタム級王者だった井上尚弥が、WBO同級王者ポール・バトラー(英国)を11回TKOで下し、統一に成功。物議を醸したバトラーの消極的戦法に労しながらも、きっちりダウンを奪っての勝利で、4団体統一では日本人・アジア人初、バンタム級4団体統一は世界初となった。戦前からスーパーバンタム級転向を示唆していた通り、2023年1月13日、同階級の全ベルト返上を発表。男子初の2階級4団体統一王者を目指す。

ライト級

Devin Haney of the United States celebrates winning the World Lightweight Championship bout between George Kambosos Jr.
Getty Images
  • デビン・ヘイニー(米国、8人目、現)
    • 2022年6月5日、WBAスーパー・WBCフランチャイズ・IBF・WBO世界ライト級王者のジョージ・カンボソス・ジュニア(オーストラリア)を3-0判定で破り、自身のWBC同級正規王座と統一。10月16日のダイレクトリマッチにも判定勝ちを収めた。WBCフランチャイズ王座は同団体のダイヤモンド王座やWBAスーパー王座同様、あくまで管轄団体が特定個人を特別に認定して与える「名誉王座(肩書)」だったが、統一戦で勝った側が引き継ぐ(あるいは防衛する)ケースが多い。

スーパーライト級(ライトウェルター/ジュニアウェルター級)

  • テレンス・クロフォード(米国、3人目、元)
    • 2017年8月19日、WBA・IBF世界スーパーライト級王者ジュリアス・インドンゴ(ナミビア)を3回TKOで下し、自身のWBC・WBO同級王座と統一。クロフォードはその後、IBF指名挑戦者セルゲイ・リピネッツ(ロシア)との対戦を拒否しIBF王座を返上。4団体王者としての初防衛戦を行わずにウェルター級へ転向、WBO同級王者として防衛を重ねる。
  • ジョシュ・テイラー(英国、5人目、元)
    • 2021年5月22日、WBC・WBO世界スーパーライト級王者ホセ・カルロス・ラミレス(米国)に3-0判定勝ちを収め、自身のWBA・IBF同級王座と統一。2022年2月にWBO指名挑戦者ジャック・カテラル(英国)を2-1判定で退けたが、同年5月、WBA指名挑戦者アルベルト・プエジョ(ドミニカ)との対戦を拒否、タイトル剥奪により4団体統一王者から陥落した。以降も同様の状況を繰り返し、2022年7月にはWBC王座、同8月にはIBF王座も返上。手元に残るのはWBO王座のみとなった。

スーパーウェルター級(ライトミドル/ジュニアミドル級)

  • ジャーメル・チャーロ(米国、7人目、現)
    • 2022年5月14日、WBO世界スーパーウェルター級王者ブライアン・カルロス・カスターノ(アルゼンチン)を10回KOで勝利し、自身のWBAスーパー・WBC・IBF同級王座と統一。両者による4団体統一戦は2021年7月17日の初戦が引き分けとなっていたため、この第2戦で決着がついた。チャーロは初防衛戦として、2023年1月28日、WBO指名挑戦者ティム・チュー(オーストラリア)を迎え撃つ予定だったが、自身の負傷により延期となった。

ミドル級

  • バーナード・ホプキンス(米国、1人目、元)
    • 2004年9月18日、WBOミドル級王者オスカー・デラホーヤを9回TKOで破り、自身のWBAスーパー・WBC・IBF同級王座と統一。主要4団体時代初の統一王者になった。翌2005年7月3日のジャーメイン・テイラー相手の初防衛戦に1-2判定で敗れて陥落。この試合は疑惑の判定があったとして騒動になり、テイラーが自身への疑惑を晴らす目的で10月にIBF王座を返上。同年12月のダイレクトリマッチはWBA・WBC・WBOの3団体統一戦として行われた。
  • ジャーメイン・テイラー(米国、2人目、元)
    • 前述通り、2005年7月3日の3か月後にIBF王座を返上し、4団体統一王座から陥落。ホプキンスとの再戦に勝利したあとWBAとの金銭トラブルで王座剥奪。WBC・WBO王座も2007年9月、ケリー・パブリク(米国)に敗れて失った。2014年にIBF王座に復帰したものの、精神疾患や薬物依存が明らかになり2015年に剥奪されると、加重暴行などでの投獄を経て破産状態になり、表舞台から消えている。

スーパーミドル級

Matchroom Boxing
  • サウル・アルバレス(メキシコ、6人目、現)
    • 4階級を制覇した『カネロ』は、2021年5月8日にビリー・ジョー・サンダース(英国)を破り、自身の持つWBAスーパー・WBC世界スーパーミドル級王座を防衛、WBO王座を獲得した。そして同年11月6日、IBF王者カレブ・プラント(米国)を11回TKOに沈め、史上6人目となる4団体王座統一に成功。翌2022年5月7日、WBA世界ライトヘビー級スーパー王者ディミトリー・ビボル(ロシア)に惨敗するも、2022年9月17日に宿敵ゲンナジー・ゴロフキンとのトリロジー第3戦に勝利。ライバル関係に終止符を打つと同時に、Sミドル級4団体統一王座防衛に成功した。ビボルとの再戦が叶わず、2023年5月6日にWBO暫定王者ジョン・ライダーを破り、防衛を果たした。

クルーザー級

  • オレクサンドル・ウシク(ウクライナ、4人目、元)
    • 2018年7月21日、『ワールドボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)』クルーザー級トーナメント決勝で、WBA・IBF世界クルーザー級統一王者ムラト・ガシエフ(ロシア)を3-0判定で下し、トーナメント優勝に加えて、自身のWBC・WBO王座と統一した。2018年10月にトニー・ベリュー(英国)に勝利して4団体王者として初防衛を果たすも、WBA休養王者デニス・レベデフ(ロシア)との団体内統一戦が実現せず、ヘビー級に転向。2021年9月、転向3戦目でアンソニー・ジョシュア(英国)を2-1判定で下し、WBAスーパー・IBF・WBO世界ヘビー級王者となり、2022年8月の再戦にも勝利。2023年こそWBC王者タイソン・フューリー(英国)との4団体統一戦の実現を果たし、男子史上初の2階級4団体統一王者一番乗りを目指す。

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女性選手(国籍、達成順、現行か元か)

フェザー級

  • アマンダ・セラノ(プエルトリコ、8人目、現)
    • 2023年2月4日、WBC・WBO・IBF王者セラノがWBA王者クルスを全会一致の判定勝ちで下し、4団体統一戦に成功。女子では8人目の達成者であり、男女合わせてもプエルトリコ人初の4団体王者となった。セラノ自身はフェザー級完全制覇にこだわったが、昨年4月に死闘の末に敗れた2階級上のケイティ・テイラーとの再戦への注目が集中しており、クルス戦直後に5月20日に決定。セラノはこれに勝てば2階級同時4団体統一王者だったが、自身のケガにより試合が消滅した。

    スーパーフェザー級

    • アリシア・バウムガードナー(米国、7人目、現)
      • WBC王者だったバウムガードナーは、2022年10月にIBF・WBO王者ミカエラ・メイヤーを撃破して3団体を統一。残るWBA王座を目指して4団体統一戦に進むはずだったが、当時の王者チェが負傷によって休養王者に移行したことで、WBA正規王座は空位となった。2月4日、セラーノ vs. クルスの前座で、エルヘム・メカレド相手にWBA王座を含めた4団体統一戦が行われ、バウムガードナーが貫禄の判定勝ち。女子7人目の達成者となった。

    ライト級

    • ケイティー・テイラー(アイルランド、2人目、現)
      • 2019年6月1日、WBC女子世界ライト級王者デルフィーヌ・ペルスーン(ベルギー)を2-0判定で破り、自身のWBA・IBF・WBO王座と統一した。アマチュアボクシングでは、ロンドン五輪女子ライト級金メダル獲得。さらにサッカーではアイルランド代表として活躍したという才女だ。2022年4月には7階級制覇者として知られる、WBC・WBO・IBO女子世界フェザー級王者アマンダ・セラーノ(プエルトリコ)を死闘の末に返り討ちにした。同年10月のカレン・カラバハル(アルゼンチン)にも勝利し、4団体統一王者として6度目の防衛に成功している。

    スーパーライト級

    • シャンテル・キャメロン(英国、6人目、現)
      • 2022年11月5日、女子ウェルター級の4団体統一王者であるジェシカ・マッキャスキル(米国)に全会一致の判定勝ちを収め、自身の持つWBC・IBF世界スーパーライト級王座防衛と、空位のWBA・WBO王座も獲得したことで4団体統一に成功した。女子では6人目、英国女性では初の「比類なき王者」となった。18歳でキックボクシングからボクシングに転向し、プロ戦績17戦無敗をキープしている。5月22日にはケイティ・テイラーを2-1の僅差で破り、防衛に成功した。

    ウェルター級

    • セシリア・ブレークフス(ノルウェー、1人目、元)
      • 2014年9月13日、IBF女子世界ウェルター級王者イバナ・ハバジン(クロアチア)を3-0判定で下し、WBA・WBC・WBO同級王者と統一。女子史上初となる主要4団体王座統一王者の第1号になった。その後、6年間4団体統一王者として防衛を重ねたが、2020年8月15日、ジェシカ・マッキャスキル(米国)に0-2判定で敗戦。世界王座最長防衛記録更新(ブレークフスはWBC王座を世界タイの25回防衛)は果たせなかった。
    • ジェシカ・マッキャスキル(米国、3人目、元)
      • 前述通り、2020年8月15日にブレークフスを破り、2階級制覇(スーパーライト級でWBC、WBA王座獲得済)と同時に4団体統一王者となった。翌2021年3月13日のダイレクトリマッチでもブレークフスを退け、初防衛に成功。その後もカンディ・ワイアット(カナダ)、アルマ・イバッラ(メキシコ)を退けてきた。2022年11月5日、2階級4団体統一王者を目指したシャンテル・キャメロン戦は判定負け。さらにIBFの保持階級より下の階級で戦えないという規定に抵触し、IBF王座は剥奪。ウェルター級4団体統一王者から陥落した。

    スーパーウェルター級(ライトミドル級)

    • クラレッサ・シールズ(米国、4人目、元)
      • 順番が逆となるが、2021年3月5日、マリエ・イブ・ディケール(カナダ)の持つIBF女子世界スーパーウェルター級王座と自身の持つWBC・IBF同級王座の統一戦、および空位だったWBA同級スーパー王座決定戦に2-0判定勝ちを収め、男女合わせても史上初となる、2階級主要4団体統一王者になった。ただ、この統一戦が大手放送局のShowtimeで放送されなかったことなどからシールズは激怒。同年中にスーパーウェルター級の各タイトルも手放し、一時、総合格闘技に軸足を移していたが、2022年2月にボクシングに復帰した。シールズは「GWOAT(グレーテスト・ウーマン・オブ・オール・タイム)」と自称しており、女子ボクサーとして地位向上を目指している。

    ミドル級

    • クラレッサ・シールズ(米国、4人目、現/2度目)
      • 2019年4月13日、WBO女子世界ミドル級王者クリスティーナ・ハマー(ドイツ)と自身の持つWBAスーパー・WBC正規・IBF王座統一戦、およびWBCダイヤモンド王座決定戦に判定勝ち。女性として史上4人目の4団体統一王者となった。ロンドン、リオ五輪女子ミドル級金メダリストとして2016年11月にプロデビュー。2017年8月にWBC女子世界スーパーミドル級とIBF同級タイトル獲得し、世界王者の仲間入りを果たすと、ミドル級4団体王者、2020年1月のプロ10戦目でWBCとWBOのスーパーウェルター級タイトルを得て3階級制覇を実現。その後2021年、前述通り同級での4団体統一も達成した。3年試合がなかったミドル級ではWBO王座を手放し、WBAスーパー・WBC・IBFの3団体統一王者になっていたが、2022年9月10日、WBC現王者サバンナ・マーシャルとの統一戦に判定勝ち。2度目のミドル級4団体統一王者に返り咲いた(4団体統一は通算3度目)。別階級の王者などライバルは多数おり、いずれも注目カードになり得る。

    スーパーミドル級

    • フランション・クルーズ・デザーン(米国、5人目、現)
      • 2022年4月30日、WBA・IBF女子世界スーパーミドル級王者エリン・セダルース(スウェーデン)に判定勝ちを収め、自身の持つWBC・WBO同級王座と統一。2020年1月のアレハンドラ・ヒメネス(メキシコ)とのWBC・WBO王座防衛戦で判定負けを喫するも、ヒメネスの違法薬物使用が判明し、無効試合となり、命拾いしていた。クルーズの4団体統一戦は、前述のケイティ・テイラーvsアマンダ・セラーノというビッグマッチの前座として行われため、注目度は低かったが、将来的にシールズとの再対決も期待される(シールズとのプロデビュー戦でデザーンは負けている)。

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    4団体統一王者に近い候補たち

    基本条件として、同一階級において2団体以上の統一王者がいること、近々で2団体以上の統一戦が予定されていること(それに付随して別の単独王者も併載)、4団体統一戦を行う計画があることなどを踏まえリストアップしている。2023年1月現在、タイトルが単体で分散しており、興行的に成立しにくい、1~2年以内に4団体統一が実現する可能性が低い階級はリストから省いた。また、欧州中心のクルーザー級のように人気選手不足によって興行的(王座戦認定ライセンス料が払えないなど)にタイトルマッチ自体が成立しないケースもあり、統一戦実現が難しいケースもある。

    男子部門

    Kenshiro Teraji v Hiroto Kyoguchi 11/01
    時事/JIJI Press

    ライトフライ級(ジュニアフライ級)

    • 寺地拳四朗(WBAスーパー・WBC王者)
    • シベナティ・ノンティンガ(IBF王者)
    • ジョナサン・ゴンサレス(WBO王者)
    • 矢吹正道
      • 2022年11月1日、WBAスーパー王者である京口紘人との日本人対決に快勝した寺地がWBC王座と統一。同日、ひとつ前の試合でゴンサレスが岩田翔吉を下し、WBO王座を防衛した。寺地 vs. ゴンサレスの3団体統一戦は4月8日に決まったものの、ゴンサレスのマイコプラズマ肺炎により中止。寺地は代役のアンソニー・オラスクアガとの激闘を制し、無事防衛を果たした。ノンティンガはレジー・スガノブとの指名王座戦が6月16日に控えている。WBOランク2位の矢吹正道はそのノンティンガへの挑戦を狙っている。タイトル戦の動きは活発だが、年内の4団体統一戦は難しい状況だ。

    バンタム級

    • 井上拓真(WBA王者)
    • ジェイソン・モロニー(WBO王者)
    • エマヌエル・ロドリゲス or メルビン・ロペス(IBF王座決定戦交渉中)
    • ノニト・ドネア or アレハンドロ・サンティアゴ(WBC王座決定戦交渉中)
      • 2022年12月13日に井上が4団体統一成功後、スーパーバンタム級転向のため、年明けの1月13日に全王座返上。まずは井上の弟・拓真が4月8日にリボリオ・ソリスを破り、WBA王者に。5月13日にはモロニーがビンセント・アストロラビオを倒してWBO新王者となった。IBF王座は7月15日にロドリゲス vs. ロペスによる決定戦が確定。残るWBC王座は、ドネア vs. サンティアゴの交渉が決裂したのか続報がない。いずれにせよ英国・中南米・アジアと選手層が厚い階級だけに、次の4団体統一戦はかなり先の話になりそうだ。

    スーパーバンタム級

    • スティーブン・フルトン(WBC・WBO王者)
    • マーロン・タパレス(WBAスーパー・IBF王者)
    • 亀田和毅(WBA指名挑戦者)
    • 井上尚弥
    • ムロジョン・アフマダリエフ(前WBAスーパー・IBF王者)
      • 井上は転級初戦から王座挑戦を目指し、2団体王者フルトンとの5月7日決戦が確定するも、拳の負傷により7月25日に延期となった。もう一方の2団体王者アフマダリエフは、IBF指名挑戦者タパレス相手にまさかの判定負けで状況が一変。タパレスはフルトン vs. 井上戦の勝者との4団体統一戦を狙っており、2023年内実現も視野に入ってきた。WBA指名挑戦者の亀田も井上戦実現にこぎつけることができるのか注目だが、那須川天心も同階級でボクシングデビューしたことで将来的な王座挑戦が期待される。

    スーパーフェザー級(ジュニアライト級)

    • ヘクター・ルイス・ガルシア(WBA)
    • ジョー・コルディナ(IBF)
    • オシャキー・フォスター(WBC)
    • エマヌエル・ナバレッテ(WBO)
      • Sフェザー級戦線は2022年に起きた剥奪処置によって王座が散らばってしまった。WBC・WBO王者シャクール・スティーブンソンが2022年9月の防衛戦で体重超過により両王座剥奪。一方、IBF王者ジョー・コルディナが同年11月のラヒモフとの防衛戦を前に右拳を複雑骨折。王座剥奪となり、ゼルファ・バレットとの決定戦に勝ったラヒモフが新王者に。さらに、2023年2月3日のWBO王座決定戦でナバレッテと戦うはずだったオスカル・バルデスが昨年12月に負傷。ナバレッテは代役リアム・ウィルソンをTKOで撃破して新王者になった。WBC王座はフォスターがレイ・バルガスを下して獲得、IBF王座は4月22日、コルディナが実力で王者に復帰した。各団体の王者は決まったものの、4団体統一戦は2年以内にあるか難しいところだ。

    ライト級

    • デビン・ヘイニー(現4団体統一王者)
    • ジャーボンティ・デイビス(WBA正規)
      • 現4団体統一王者ヘイニーはジョージ・カンボソスJr.とのダイレクトリマッチに勝利したことで、2023年中にWBA正規王者デイビスと団体内統一戦が行われるかと思われていたが、5月20日、ウクライナの英雄のひとりで元WBC・WBO王者ロマチェンコと激突。無事防衛を果たした。デイビスは家庭内暴力で一時勾留されるなどトラブルもあったものの、1月にヘクター・ガルシア、5月にライアン・ガルシアを撃破した。いよいよヘイニー vs. デイビスの統一戦への期待値が高まってきた。

    スーパーライト級(ライトウェルター/ジュニアウェルター級)

    • ジョシュ・テイラー(WBO)
    • アルバート・プエジョ(WBA)
    • レジス・プログレイス(WBC)
    • スブリエル・マティアス(IBF)
      • 元4団体統一王者テイラー自身が各王座を小出しに返上したことにより、スーパーライト級の新たな絶対王者誕生は遠のいている。WBA王座は2022年8月20日にプエジョが獲得。同じくWBC王座は、同年11月末にプログレイスがホセ・ゼペダを破って新王者となった。最後に返上したIBF王座は、2月11日にマティアスがイェレミアス・ポンセを下して獲得した。テイラーの手元に残るのはWBO王座のみ(とThe Ring誌認定王座)だが、指名王座戦拒否からの返上を繰り返した経緯からして、再び統一戦を行う見込みは薄い。テイラーがWBO王座から陥落すれば、再び4団体統一戦の兆候も見えてくるかもしれない。

    ウェルター級

    • エロール・スペンス・ジュニア(WBAスーパー・WBC・IBF)
    • テレンス・クロフォード(WBO)
    • エイマンタス・スタニオニス(WBA正規)
    • バージル・オルティス(スタニオニスに挑戦)
      • 2022年11月にラスベガスでスペンスJr.とクロフォードの4団体統一戦が開催予定とされていたが、一旦消滅後、紆余曲折あって7月29日に正式決定した。スタニオニスはバージル・オルティスとの防衛戦が3月に予定されていたが、盲腸により4月29日に延期。しかし、今度はオルティスの横紋筋融解症が再発し、再び延期となった。

    スーパーウェルター級(ライトミドル/ジュニアミドル級)

    • ジャーメル・チャーロ(現4団体統一王者)
    • ティム・チュー(WBO暫定)※チャーロに挑戦予定だったが延期
    • ブライアン・メンドーサ(WBC暫定)
    • セバスチャン・フンドラ(前WBC暫定王者)
      • 2023年1月28日にWBOグローバル王者で指名挑戦者のチューが4団体王者チャーロと対戦するはずだったが、昨年末、チャーロが右拳を負傷したため延期。チューは3月に元WBC同級王者トニー・ハリソンを破り、WBO暫定王者となった。一方、198cmというスーパーウェルター級では規格外ファイターとして話題のフンドラは、2022年10月にカルロス・オカンポ相手にWBC暫定王座を防衛していたが、4月8日のメンドーサ戦でまさかのKO負けを喫し、チャーロへの挑戦権を失った。

    ミドル級

    • エリスランディ・ララ(WBA)
    • ジャーモール・チャーロ(WBC)
    • ジャニベク・アリムハヌリ(WBO)
    • エスキバ・ファルカオ or マイケル・ゼラファ(IBF王座決定戦見込み)
    • クリス・ユーバンク・ジュニア
      • ゲンナジー・ゴロフキンが2022年9月に長年の宿敵カネロとのトリロジー決着戦に敗戦後、保持王座の団体からそれぞれ指名戦を命じられていたが、チャーロ戦を目指す陣営の方針もあり交渉がまとまらず、IBF王座、さらにWBAスーパー王座を返上。一方、チャーロが対戦を要望していたデメトリアス・アンドラーデは、WBO王座を返上してスーパーミドル級に転向。アリムハヌリが新王者になった。タイムライン的に2023年中にミドル級4団体統一戦実現は難しそうだ。

    スーパーミドル級

    • サウル・アルバレス(現4団体統一王者)
    • ディミトリー・ビボル
    • デイビッド・モレル(WBA正規)
    • デイビッド・ベナビデス(WBC暫定)
      • 2022年9月にゴロフキンとの第3戦を制し、4団体統一王座を防衛したカネロ。2022年5月に黒星を喫した相手であるビボルとの再戦を目論んだが、ライトヘビー級での再戦案はビボルが拒否。ライトヘビー級での4団体統一戦が目先にあるビボルを釣り上げることはできず、5月6日の母国メキシコでの試合では、WBO暫定王者ジョン・ライダーを下して防衛を果たした。次はベナビデスとの統一戦か、ビボルとの再戦か、どちらになるのか。

    ライトヘビー級

    • アルツール・ベテルビエフ(WBC・IBF・WBO王者)
    • ディミトリー・ビボル(WBAスーパー王者)
    • カラム・スミス(WBC指名挑戦者)
      • ベテルビエフは2022年10月末に必須挑戦者アンソニー・ヤードと対戦予定だったものの、怪我により1月28日に延期されたが、無事防衛を果たした。一時は拒否の姿勢を示していたビボル戦も再び俎上にあがってきたが、WBCによるロシア国籍者のランキング排斥問題のため、ビボルに特例措置が必要となっており暗礁に乗り上げている。ベテルビエフは8月19日、スミスとの指名王座戦が決まった。

    ヘビー級

    • オレクサンドル・ウシク(WBAスーパー・IBF・WBO王者)
    • タイソン・フューリー(WBC王者)
    • ダニエル・デュボア(WBA正規王者)
    • チャン・ジーレイ(WBO暫定王者)
    • アンソニー・ジョシュア
    • デオンテイ・ワイルダー
      • 2022年春先、同年末のサウジアラビア・リヤドでウシクとフューリーの4団体統一王座戦プランが浮上も決裂。その間の8月、ウシクはアンソニー・ジョシュアとの再戦に勝利。フューリーは12月にデレック・チゾラとのトリロジー決着戦を制した。お互いに状況がクリアになり、2023年4月29日に内定したが、再戦時のファイトマネー分配率がまとまらず再消滅…。ウシクは8月のデュボア戦が濃厚で、フューリーも今夏、ジョシュアとの英国人頂上対決を模索している。また、4月15日にはチャンがジョー・ジョイスからWBO暫定王座を奪取し、アジア人初のヘビー級王者になるという新たな動きもあったが、4団体統一戦は遠のいた状況だ。

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    女子部門

    Claressa Shields Savannah Marshall boxing 101522
    (Getty Images)

    ミニマム級

    • ヨカスタ・バジェ(IBF・WBO王者)
    • セニエサ・エストラーダ(WBA・WBC王者)
      • 2022年9月にバジェがWBO王者グエン・ティトゥニを下してIBF王座と統一。同年、WBA王者エストラーダは11月にハスミン・ビジャリーニョ相手に防衛、2023年3月にはティナ・ルプレヒトを破り、WBC王座と統一した。バジェとエストラーダもお互いに4団体統一戦を望んでおり、実現性も飛躍的に高まったが、現時点でマッチアップの話は上がっていない。

    ライトフライ級

    • ジェシカ・ネリー・プラタ(WBAスーパー・WBC王者)
    • エブリン・ベルムデス(IBF王者)
    • ヨカスタ・バジェ(WBO王者)
      • IBF王者エベリン・ベルムデスが2022年3月にWBO王座も統一したが、11月、ミニマム級2団体王者バジェに敗れて王座陥落。ただ、その後バジェがIBF王座のみ返上したため、2023年3月にベルムデスがタニア・エンリケスとの決定戦に勝ち、ベルトを取り戻した。WBAスーパー王者プラタは同年1月13日、WBC王者キム・クラベルとの統一戦に勝利し、2団体統一。バジェのWBO返上の流れもあり、4団体統一戦の実現性はやや薄まっている。

    フライ級

    • マーレン・エスパーザ(WBA・WBC王者)
    • アレリー・ムシーニョ(IBF王者)
    • ガブリエラ・セレステ・アラニス(WBO王者)
      • WBA・WBC王者のエスパーザは4団体統一を掲げており、陣営はWBO王者のアラニスとの年内統一戦の交渉を始めていると報道されていたが2022年には実現しなかった。10月にはムシーニョがレオネラ・パオラ・ジュディカからIBF王座を奪取したことで、タイトルピクチャーにも変化があり、2023年内は4団体統一戦はともかく、3人のいずれかの組み合わせの対決は実現しそうだ。

    フェザー級

    • アマンダ・セラノ(WBA・WBC・WBO・IBF王者)
    • サブリナ・マリベル・ペレス(WBC暫定王者)
    • ブレンダ・カラバハル(WBO暫定王者)
    • エリカ・クルス(前WBA王者)
    • サラ・マフフード(前IBF王者)
      • WBC・WBO王者セラノが2022年9月にIBF王者マフフードとの統一戦を制して3団体を統一。2023年2月にはWBA王者クルスに勝利し、4団体統一戦に成功。晴れて、昨年4月に死闘の末に敗れた2階級上のケイティ・テイラーとの歴史的再戦が5月20日に決まったが、セラノの負傷で年末に延期された。再戦はライト級4団体統一戦になるため、セラノ自身のフェザー級4団体王者としての防衛戦は年末以降になりそうだ。

    スーパーフェザー級

    • アリシア・バウムガードナー(WBA・WBC・IBF・WBO王者)
    • クリスティーナ・リナルダトゥ
    • 崔賢美(チェ・ヒュンミ、WBA休養王者)
    • ミカエラ・メイヤー(前WBO・IBF王者)
    • アマンダ・セラーノ(フェザー級4団体統一王者)
    • ケイティ・テイラー(ライト級4団体統一王者)
      • 絶対王者バウムガードナーへの挑戦者候補は、負傷でWBA休養王者となった崔賢美、前WBO・IBF王者ミカエラ・メイヤーが筆頭に挙がっていたが、唯一黒星を許した元WBO世界女子スーパーライト級王者のリナルダトゥを相手に7月15日の対戦が決まった。リナルダトゥは同王座を妊娠で返上しただけで、全16戦中、負けた相手もケイティ・テイラーとデルフィーヌ・ペルスーンのみという強豪だ。

    ライト級

    • ケイティ・テイラー(現4団体統一王者)
    • アマンダ・セラノ(フェザー級4団体統一王者)
    • クリス・サイボーグ ※テイラーの対戦候補として報道
      • 2022年4月30日の4団体統一王座戦で王者テイラーがセラノを判定で下した試合は、女子ボクシング史上最高の内容と興収となった。メガリマッチが期待されたが、セラノはフェザー級に軸足を戻すことになり、一旦お預け。テイラーは同年10月にカレン・カラバハル相手に4団体王座を防衛。2023年2月、セラノのフェザー級4団体統一成功により、5月20日の再戦が決まったが、セラノの負傷で延期された。この試合の結果次第で、女子MMAの鉄人クリス・サイボーグとのマッチアップも現実になるかもしれない。

    スーパーライト級(ライトウェルター/ジュニアウェルター級)

    • シャンテル・キャメロン(現4団体統一王者)
    • ジェシカ・マッキャスキル
    • クリスティーナ・リナルダトゥ(WBO指名挑戦者)
      • WBA・WBO王者のカリ・レイスが健康上の問題とタレント活動のため、王座を返上。WBC・IBF王者キャメロンは、2022年11月、当時ウェルター級の4団体統一王者であるマッキャスキル相手に、自身の2本の王座と、空位となったWBA・WBO王座を懸けて激突。見事勝利し、女子ボクシング史上6人目の4団体統一王者となった。次戦については複数の相手が浮上したが、セラノ戦が延期になったケイティ・テイラーと、5月20日対戦が急遽決定。敵地に乗り込んだキャメロンが自身のSライト級4団体統一王座を死守した。

    ウェルター級

    • ジェシカ・マッキャスキル(WBA・WBC・WBO王者)
    • イバナ・ハバジン(WBCシルバー王者)
    • ケイティ・テイラー
    • クラレッサ・シールズ
    • ナターシャ・ジョナス
      • マッキャスキルは女子ボクシングのスターファイターだが、前述通りスーパーライト級4団体統一王座奪取に失敗し、さらにIBFの規定により、王者である場合、保持階級より下の階級で戦うことを許しておらず、IBF王座を剥奪されるという大きな代償を負った。しかし、IBFランキングでは依然として1位であるため、まずは4団体統一王者への返り咲きが目下の目標となる。

    スーパーウェルター級(ライトミドル/ジュニアミドル級)

    • ナターシャ・ジョナス(WBC・WBO・IBF王者)
    • テリー・ハーパー(WBA王者)
      • 2022年2月にWBC王者となったジョナスは、9月にWBC王者パトリシア・ベルガルトとの統一戦を制し、同11月にはディケールも下してIBF王座も獲得して、わずか10か月で3団体を統一。同年9月末には、ハンナ・ランキンがハーパーに敗れてWBAタイトルが移動している。ジョナスの試合ペースを考えると、年内4団体統一戦もあり得ない話しでもないないが、7月1日に予定される次戦の相手はまだ確定していない。

    ミドル級

    • クラレッサ・シールズ(現4団体統一王者)
    • マリセラ・コルネホ
    • ケイティ・テイラー
    • アマンダ・セラノ
    • ジェシカ・マッキャスキル
    • ナターシャ・ジョナス
    • サバンナ・マーシャル
      • 2022年10月、WBA・WBC・IBF王者だったシールズは、WBO王者マーシャルを下して自身2度目となる女子ミドル級4団体統一を成し遂げた。MMA転向が不調のシールズは、改めてボクシングキャリアに軸足を戻した様に見え、マーシャルとのリマッチのほか、テイラー、セラノ、マッキャスキル、ジョナスなど階級を超えた女子ボクシング界のスター対決が期待された。しかし、6月1日のコルネホ相手の4団体統一王座戦後は、プロレスのWWE進出を示唆する発言をしており、また軸足を変える可能性がある。

    スーパーミドル級

    • フランション・クルーズ・デザーン(現4団体統一王者)
    • サバンナ・マーシャル
    • クラレッサ・シールズ
      • 2022年4月30日の4団体統一戦で下したエリン・セダルースとのダイレクトリマッチが濃厚だったが、2022年には実現せず。現在デザーン自身は、シールズに敗れて無冠となった女傑マーシャルとの対戦を熱望していたが、その希望通り、7月1日、英国マンチェスター、AOアリーナでの対戦が決まった。

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    神宮泰暁 Yasuaki Shingu


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    日本編集部所属。ボクシング・格闘技担当編集者。